仮面ライダーの誕生50周年とスーパー戦隊シリーズ45作品を祝う、ダブルアニバーサリー映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』が全国劇場にて公開されている。

アスモデウス(演:谷田歩)により、世界を揺るがす危険な禁書が解放され、仮面ライダーセイバー/神山飛羽真(演:内藤秀一郎)はスーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界に、そしてゼンカイザー/五色田介人(演:駒木根葵汰)は仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーセイバー』の世界に飛ばされてしまった。「現実」と「物語」の境界があいまいになり、混ざり合った世界。やがてスーパーヒーローの存在そのものをおびやかす、アスモデウスの恐るべき目的が明かされる。

  • 白倉伸一郎(しらくら・しんいちろう)。1965年、東京都出身。東映株式会社取締役テレビ第二営業部長兼ハイテク大使館担当。1990年に東映入社後、『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)よりプロデューサー補として作品制作に携わる。以後、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)や『超光戦士シャンゼリオン』(1996年)、『仮面ライダーアギト』(2001年)、『美少女戦士セーラームーン』(2003年)、『仮面ライダージオウ』(2018年)といった数々の話題作、人気作を手がけた。現在は『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021年)のチーフプロデューサーを務める。撮影:宮田浩史

映画の公開を記念して、マイナビニュースではチーフプロデューサー・白倉伸一郎氏に単独インタビューを敢行。「ヒーロー一筋、半世紀!」のキャッチコピーが示すように、長年にわたって愛され続けた人気特撮ヒーローシリーズ、仮面ライダーとスーパー戦隊が大きな節目を迎えたいま、数多くの“お祭り”映画をこれまでにも手がけてきた白倉氏は、いったいどのようなダブルアニバーサリー作品を作り上げようとしたのか。企画の狙いからストーリーの中核を担うキャラクターの魅力について。そして『仮面ライダー』原作者・石ノ森章太郎氏に代表される「仮面ライダーを作った者たち」への強い称賛と尊敬の念のほどを、力を込めて語ってもらった。

――映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』の企画意図を教えてください。

ご存じのとおり、今年(2021年)は『仮面ライダー』生誕50周年という記念イヤーです。第1話の放映日である4月3日の19:30より、50周年記念企画の発表会を行い、そこで『シン・仮面ライダー』や『仮面ライダーBLACK SUN』『風都探偵』の製作を大々的に発表したのですが、これらの大型企画が来年以降、続々とリリースされていきます。それらに先んじて、仮面ライダー50周年イヤーのスタートを飾る「打ち上げ花火」のような企画は、絶対に必要だろうと。そこで、同じく45作品目を迎えたスーパー戦隊の力を借りて、大きな「お祭り」映画を作ろう……と考えて、この映画を作りました。ですから「仮面ライダー50年」がどちらかというとメインで、「スーパー戦隊45作」はお付き合いで来てもらった感覚です。

――『仮面ライダーセイバー』と『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界が混ざり合って、それぞれのキャラクターが相手の世界に入り込み、混乱するようすがコミカルに描かれました。

お話を組み立てる際、『仮面ライダーセイバー』を『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界に引っ張り込むことだけは禁じ手とさせていただきました。『機界戦隊ゼンカイジャー』には並行世界という設定があり、当然『仮面ライダーセイバー』の世界にも飛び込んでいけてしまいます。そのシチュエーションは映画公開記念の「合体スペシャル」でやっているんですけど、映画ではあくまでもライダーを主軸にするために、『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界観は封印しました。基本的に『仮面ライダーセイバー』で始まり『仮面ライダーセイバー』の世界観の上で成立させています。

――『機界戦隊ゼンカイジャー』のメンバーは劇中でも「どんな状況でも登場人物が苦しんだりしない」と言われていますし、おっしゃるとおり濃いキャラでどんなところでも前に出てしまいますね。

『機界戦隊ゼンカイジャー』らしさを意識的に外してバランスを取りました。難しかったのは、『仮面ライダーセイバー』の登場人物たちが「自分たち以外の仮面ライダーが存在する」みたいな認識が全然ないところ。彼らの物語の「外」にある、現実の「アニバーサリー」という要素を、どうしたら劇中の物語の中に持ちこむことができるか。たまたまですけれど『仮面ライダーセイバー』では飛羽真という小説家が「物語」を作る立場にありますので、このメタ要素を用いれば突破口が開けるのではないかと思って、固めていきました。

――映画では『仮面ライダー』と『秘密戦隊ゴレンジャー』の原作者・石ノ森章太郎先生による「ヒーロー創造秘話」がひとつのテーマとして描かれていますが、石ノ森先生をフィーチャーされた意図とは?

今回のアニバーサリー映画は、これまで「仮面ライダー」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズの製作に携わって来られたたくさんの方々のことを語り継ぎたい、という思いがありました。石ノ森章太郎先生は原作者として仮面ライダーやゴレンジャーのキャラクターを創造し、2大ヒーローの骨子を築かれた方。数多くの製作スタッフのみなさんの思いを石ノ森先生お一人に集約して、ご登場願ったところがあります。

また、「仮面ライダー50周年」というと聞こえはいいですが、それは第1作『仮面ライダー』から『仮面ライダーV3』、『仮面ライダーX』……とひとつひとつの作品を“本棚に並べる”行為でもあります。作品を過去のものとして、カタログ化して片づけてしまう作業です。

昔『仮面ライダー』を作っていた人たちは、これがのちに何10作も続いていく長寿シリーズの1作目だと思って作ってはいなかった。あの当時、一番面白いヒーロー番組を作ろうとしていただけであって、それらをシリーズ順にきれいに並べ、本棚を飾るだけの存在にするのは、作り手の方々のそのころの思いを無にする行為なんじゃないか……。

この映画の中でもやっていることではありますが、歴代仮面ライダーが大集合するビジュアルは、こういったお祭り作品には必要ですし、盛り上がりますよね。でもそういうことをやれば、かつて番組の看板を背負って活躍したそれぞれの主役たちが「大集団の中のひとり」になり、埋没する。

今回は逆に、「仮面ライダー50年」を今の視点から振り返るのではなく「これからヒーローたちの50年、45作の歴史がスタートする」という視点で描けないだろうか……と考えました。そんな経緯もあって、ヒーローの創造主である石ノ森先生を前面に出させていただいたんです。