画竜点睛とは、「最後の肝心な仕上げ」を指します。肝心な部分が抜けているさまを「画竜点睛を欠く」と表現することがありますよね。

本記事では画竜点睛という言葉の意味や、由来となった故事、間違いやすい読み方などを解説します。さらに、正しい使い方や例文のほか、類語・対義語、英語表現についても触れていますので、理解して画竜点睛を正しく使えるようにしましう。

  • 「画竜点睛」の意味・読み方

    「画竜点睛」について解説します

「画竜点睛」の意味・読み方

画竜点睛は、「物事を完成させるための最後の仕上げ」という意味の言葉です。わずかに手を加えることで全体を効果的に見せる、ということの例えで使われます。

画竜点睛の「睛」は「晴」ではありません。似ていますが、「睛」はひとみという意味を持つ漢字。間違えないよう気を付けましょう。

また画竜点睛の「点睛」は、これだけで熟語として使うこともできます。瞳を描き入れることを指し、「最後に加える重要な点を加えること」を指します。

読み方は「がりょうてんせい」

「画竜点睛」は、読み方を間違えやすいことで有名。大学入試問題などでもよく出題される四字熟語のひとつです。

誤って「がりゅうてんせい」と呼んでしまいがちですが、「画竜点睛」の正しい読み方は「がりょうてんせい」。一度間違って覚えてしまうと、なかなか癖が抜けないので、注意しましょう。

由来は中国の故事

画竜点睛という言葉は、中国に古くから伝わる故事から生まれた故事成語です。ここでは『歴代名画記』に記された、画竜点睛にまつわる故事を紹介しましょう。

昔、張という名前の画家が、仕えていた武帝から「安楽寺の壁に竜を描くように」と命じられます。完成した竜の絵は大変すばらしい出来栄えでしたが、張はなかなか目を描き入れようとしません。

ある人が理由を尋ねると彼はこう答えます。「瞳を描くと私の竜が飛び去ってしまう」。しかしその言葉を信じない人々が瞳を描いてほしいと懇願し、とうとう張が目を描いたとたん、たちまち竜は動き出して天に昇って行ってしまったという話です。

画竜点睛はこの故事が由来となり、「最後に加える肝心な仕上げ」を指す言葉となりました。

「画竜点睛」の使い方・例文

画竜点睛は、例えば報告書やスピーチで、一番言いたいことを残しておき最後にしっかりとまとめ上げるようなことを言います。「報告書の最後の部分は画竜点睛だね」などと表現することができます。また「画竜点睛にこだわる」とは、結果を残すために最後の仕上げまでこだわってやり抜く人を指します。

画竜点睛を欠く

画竜点睛という言葉が使われるのは、「画竜点睛を欠く」という表現の場合がほとんどです。

一見よくできているように見えても、肝心な部分が欠けており完全とは言えない状態のことを指します。詰めが甘いという意味もあります。ここでも「欠く」を「描く」や「書く」としてしまわないよう注意しましょう。

<例文>

  • 彼の作品にしては珍しく画竜点睛を欠いていた
  • 意見のすり合わせを行わないままプロジェクトを進めても画竜点睛を欠くことになるだろう
  • 「画竜点睛」の使い方・例文

    画竜点睛とは、物事を完成させるために重要な最後の仕上げのこと

「画竜点睛」の類語

画竜点睛という言葉の意味と由来について紹介しました。次に類語について見ていきましょう。

点睛開眼

「点睛開眼(てんせいかいがん)」も、画竜点睛と同じ意味で使われる四字熟語です。物事の最も肝心な部分、さらに最後の仕上げとして足す大事な部分という意味です。

由来についても画竜点睛と同じく、『歴代名画記』に記された前述の故事だとされています。

「肝(きも)」は物事の重要な部分、盛り上がる部分を指します。画竜点睛のような「仕上げ」という意味はなく、単純に強調されるところ、重要なポイントを指します。

有終の美

「有終の美」は、最後までやり通して立派な結果を残すことという意味です。この言葉にも「仕上げ」という意味はありませんが、最後に成果を残すという点で画竜点睛と共通しています。多くの場合、「有終の美を飾る」という表現で、引退や卒業といった節目に使われます。

関連記事: 「有終の美を飾る」の意味とは? 由来や使い方、類語・英語表現を例文で紹介

  • 「画竜点睛」の類語

    画竜点睛の類語は点睛開眼です

「画竜点睛」の対義語

画竜点睛の類語を確認したところで、次に対義語について紹介しましょう。

蛇足

「蛇足(だそく)」とは、必要のないもの、なくてよいものを指します。最後の仕上げで効果的に見せる画竜点睛とは、まったく逆の意味です。

蛇足という言葉も、画竜点睛と同じく中国の故事から生まれた故事成語だとされています。『戦国策』という書物に記されており、昔、蛇の絵を早く描くという競争が行われた際、最初に描き上げた者がつい蛇に足を付け加えてしまい、勝負に敗れたというお話です。

プレゼンなどで発表する時などに、謙そんの気持ちを込めて「蛇足ですが」とひと言だけ挨拶を添えることもあります。

余計

「余計」という言葉も画竜点睛の対義語と言えるでしょう。余計は、必要な範囲を超えて無駄であることを指します。

  • 「画竜点睛」の対義語

    画竜点睛を欠くとは、最後の仕上げが不十分であることです

「画竜点睛」の英語表現

画竜点睛という四字熟語に近い言葉に、「finishing touch」があります。「最後の一筆、最後の仕上げ」を意味しますが、画竜点睛が意味する「最後に加える肝心となる部分」という意味はありません。

なお、「画竜点睛を欠く」の例文は以下のとおりです。

  • It lacks the finishing touches.(それは画竜点睛を欠いている)

「画竜点睛」は最後の仕上げを表す言葉

画竜点睛の意味、理解できましたでしょうか。物事の完成を前に、肝心の部分を加えること、最後に重要な仕上げを施すことを指しています。

由来は中国の故事で、最後に目を描き入れたことで竜が天へ飛び立ってしまったという逸話が残っています。成り立ちが分かればより言葉の理解も深まりますね。

画竜点睛は、大学入試レベルでよく出題される四字熟語のひとつ。「がりょうてんせい」という読み方や、「点睛」を正しく書くなど、この機会にしっかりとおぼえましょう。