「雌伏」は日常会話の中であまり使われる言葉ではありませんが、語彙力を高めるためにも正しい意味や使い方を知っておきましょう。

本記事では、「雌伏」の意味や類語、英語表現などについてくわしく紹介します。

  • 雌伏の意味

    「雌伏」の意味や語源、類語などについて紹介します

雌伏(しふく)の意味

雌伏の読み方は「しふく」です。雌伏には以下の2つの意味があります。

1.人に服従すること
雌鳥が雄鳥に従う様子から「人に屈伏して従うこと」を表します。

2.実力を養い、活躍できるチャンスを待つこと
「今は満足できない地位でも、実力を養いながらじっと活躍できる機会を伺う」という意味で使います。「下積み時代」と同じようなニュアンスと考えればわかりやすいでしょう。

雌伏の語源

雌伏の語源は、「後漢書」の「張温伝(ちょうおんでん)」という章にあるとされています。

後漢時代、群守の補佐役をしていた「張温」は、自分の役職に満足できず、次のように嘆きます。

「大丈夫当に雄飛すべし、安んぞ能く雌伏せんや」
(男だったら、大きな志を持ってはばたかなければならない。どうして低い地位に甘んじることができようか。いや、できない。)

昇進欲があった彼は最終的にその職を退きます。このことが、「雌伏」という言葉の由来とされています。

雌伏の差別的な意味合いに注意

雌伏は「雌が伏せる」と書くため、性差別を意識した表現だともいわれています。 人によっては嫌悪感を抱くので、使用する際は注意しましょう。

先に述べた通り、雌伏には「服従しながら、活躍できるチャンスを待つ」という前向きな意味もありますが、差別的要素が強い言葉であることに変わりはありません。受け手が異なった解釈をすれば、不本意に相手を傷つけたり、不快な思いをさせたりする可能性もあります。できれば「雌伏」ではなく、同義語やニュアンスが似ている類語を使いたいところです。

  • 雌伏の意味

    「雌伏」には2つの意味があります。正しく使えるように、それぞれの意味を確認しておきましょう

雌伏の使い方と例文

雌伏は会話の中でどのように使うのか、例文をみてみましょう。

「雌伏の時を経て、我が社は世界的な企業になった」

この例文では、「他の企業に従っていた下積みのような期間を経て、世界に通用する企業になった」という意味合いで「雌伏の時」が使われています。

「辛いだろうが、今が雌伏の時だ。いずれ実力を発揮して成功するに違いない」

「起業してから雌伏の時期が続いたが、今は多くの従業員を抱える企業に成長した」

雌伏は「雌伏の時」や「雌伏の時期」といった使い方をするのが一般的です。なお、発音が同じ「至福の時」は「この上ない幸せを感じているとき」という意味の言葉なので、誤用や誤字に注意しましょう。

「入社してから雌伏すること10年。やっと課長の座に就いた」

この例文のように「雌伏する」という動詞で使うケースもあります。

  • 雌伏の使い方と例文

    「雌伏」は主に「雌伏の時」や「雌伏の期間」といった使い方をします

雌伏の類語

雌伏を「力を養いながら、活躍できる機会をじっと待つ」の意味で使うときの類語には、「頃合いをみる」や「下積み生活を送る」などがあります。

「手ぐすね引いて待つ」や「虎視眈々」も類語として使えるでしょう。

「勉学に励みながら自分が活躍できる日を手ぐすね引いて待っていたが、ついにその日が来た」

手ぐすねの「くすね(薬煉)」とは、松脂を油で煮て練りまぜたもののことです。粘着力が強いため、弓の弦などに塗って補強します。

「彼は虎視眈々と部長の座を狙っている」

「虎視」は虎が獲物を観察すること、「眈眈」は睨む・見下ろすなどの意味があるので、「虎が獲物をじっと睨みながら狙っている」というイメージです。

雌伏の対義語

雌伏の対義語は「雄飛」です。読み方は「ゆうひ」で、「勇ましく大いに活躍すること」という意味があります。「雄飛」も差別的な表現として捉えられることがあるので、使う際には注意が必要です。

なお、「雌伏」と「雄飛」は「雌が伏し、雄が飛ぶ」という対比関係にあることから「雌伏雄飛(しふくゆうひ)」という四字熟語としても使われます。意味は「いずれは活躍できることを期待しながら人に従い、やがては大いに活躍すること」です。

「雌伏雄飛を期待して、5年間必死に努力してきた」

  • 雌伏の対義語

    「雌伏」の類語と対義語も覚えておきましょう

雌伏の英語表現

雌伏の英語表現は「swallow my pride」で、「プライドを抑え我慢する」といった意味合いをもちます。

  • This is the moment to swallow my pride.(今が雌伏の時だ)

また、「bend my neck(首をもたげる=屈服する)」も、雌伏の英語表現として使えるでしょう。

  • I have finally been promoted after 5 years of bending my neck.(5年間の雌伏の期間を経て、やっと昇進した)

雌伏はシーンを選んで使いましょう

雌伏は、「人に服従すること」や「力を養い活躍できる機会をじっと待つ」という意味の言葉です。語源は「後漢書」の「張温伝」とされています。近年では性差別につながる言葉として捉えられることがあるので、使う際には注意しましょう。