NHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか)で、清原果耶演じるヒロインのモネこと永浦百音を気象予報士の世界へと導いた気象キャスター・朝岡覚役を好演している西島秀俊。朝ドラ出演は『純情きらり』(06)、『とと姉ちゃん』(16)に続く3作目となったが、本作では数々の名台詞を口にし、視聴者の心を揺さぶっている。19日からの第10週で始まる東京編ではモネの上司となり、より重要な役どころを担う西島を直撃した。
これまでのモネは、宮城県・登米の森林組合の一員として奮闘してきた。朝岡はモネのピンチを救ったり、東日本大震災での心の傷を抱えたモネにさりげなく寄り添った言葉をかけたりと、絶妙な立ち位置で存在感を発揮してきた。
朝岡がモネに放った名台詞のなかで、個人的に心に刺さったのは「何もできなかったと思っているのは、あなただけではありません」「何もできなかったと思う人は、次はきっと何かできるようになりたいと強く思うでしょう。その思いが私たちを動かすエンジンです」というものだ。
西島が発する穏やかで深みのある言葉の響きには、人間力を感じさせる。西島は朝岡について「まだ表には出ていないのですが、朝岡自身もやはり心の傷を負っていて、人の心の傷に対してすごく敏感に感じ取る能力を持っているから、人に寄り添えるんだろうなと思います」と捉えている。
第10週では、気象予報士の道を目指して上京したモネが、朝岡が所属する東京の気象情報会社“ウェザーエキスパーツ”を訪れる。そこでプチ事件が起きるも、新しい仲間を得て、またモネは一皮むけて成長していく、という流れだ。
西島は東京編からの朝岡について「若い子たちがいろいろ出てきますけど、朝岡はそこでも、それぞれの後輩たちの良いところを見抜いて伸ばしていくし、その人たちのいろんな辛い思いや傷みたいなものも汲み取って寄り添い、伸ばしていくんだろうなと」と、朝岡の温かい人柄について語る。
脚本を手掛けているのが、西島主演の人気ドラマで映画化も決定した『きのう何食べた?』シリーズなどで知られる安達奈緒子氏だけに、絶対的な信頼感を抱いている。「安達さんの脚本で描かれる世界は決して平和ではなく厳しい。でも、そこには完全な悪意を持った人物はいなくて、それぞれが善意を持って生きているのに、うまくいかなかったり、すれ違ったり、ぶつかったりすることがある。でも、コミュニケーションを取っていくことで前進して、厳しい世界で自分たちの温かい世界を守り続けていくというような本だと思います。だから言葉が繊細ですごく優しいです」
西島はその繊細さゆえに、気をつけている点があると言う。「不用意に台詞を変えると、あとでつじつまが合わなくなるんです。時々、現場で台詞を変えようかとなるのですが、実はその言葉があとの出来事とつながる肝になっている場合が多いので、これは変えちゃダメなんだなと思うこともあります。本当によく考えられた台詞で、特に今回みたいな朝の連続ドラマだと、ずいぶん経ってから、あの時のあの会話がここにつながっていたのか!と演じる僕たちも気づくことがたくさんあります。安達さんは丁寧で深い脚本を書かれる方なので、非常に信頼しています」