和久井健氏による人気漫画『東京卍リベンジャーズ』の実写映画『東京リベンジャーズ』が9日より公開されている。どん底人生真っ只中の負け犬フリーター・花垣武道(北村匠海)が10年前にタイムスリップし、人生唯一の彼女・橘ヒナタを助けるために過去と未来を行き来しながら関東最凶不良軍団・東京卍曾に挑んでいく同作は、アニメ化・舞台化と展開を広げ、今最も注目を集めている作品と言っても過言ではない。

実写映画では、英勉監督の下、主演の北村に加え山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮と旬の俳優陣がアベンジャーズのように集結。公開3日で興行収入約7億円と、ロケットスタートを切っている。

今回は、主役のタケミチを演じた北村と、タケミチの親友・アッくんを演じた磯村にインタビュー。今作には「自分たちの世代の作品を世に出したかった」という熱い思いが詰まっていたという。

  • 映画『東京リベンジャーズ』に出演する北村匠海、磯村勇斗

    映画『東京リベンジャーズ』に出演する北村匠海、磯村勇斗

■互いの信頼感が作品に表れた

——今回親友役のお二人ですが、一緒にサウナの番組を(WOWOW『サウナーーーズ2 ~磯村勇斗と北村匠海~』)されたりしていて、元々仲は良かったんですか?

北村:もう、関係は長いんだよね。

磯村:ね。

北村:やっぱり、いっそん(磯村)でよかったなって思う瞬間ばかりでした。リアルにある関係値がそのままこうアッくんとタケミチになった感じがすごいあって。役者としてもそうだし、人としての信頼も置いてます。バスケ映画(『春待つ僕ら』)で熱い時間を過ごしてますから。そこで出会って苦楽を共にし、サウナでさらに仲良くなって。実際にタケミチとアッくんみたいな関係性なので、良かったと思いました。

磯村:僕も今回『東京リベンジャーズ』のオファーをいただいた時に、最初に匠海がタケミチをやると聞いて。匠海がタケミチじゃなかったら、僕は出演していなかったかもしれない、というくらい信頼している俳優です。1回共演して、匠海の醸し出す空気感や、役として存在している時の姿が好きだったので、もう1回共演したいという思いもありました。プライベートでもサウナに行ったり、一緒にゲームしたり、日常的に居心地がいいんです。だから、画面を通してそのまま2人の作るいい空気が出ているんじゃないかなと思います。

——今あだ名が出てきましたが、北村さんは磯村さんのことを何て呼んでるんですか?

北村:”いっそん”です。なんか、いくらでも「勇斗」と呼ぶタイミングはあったと思うんですけど……(笑)。 でも、当時その映画に出演していた稲葉友くん、杉野遥亮、小関裕太、みんなあだ名です。友くんは友くんだけど、いっそん、遥ちゃん、こせっきー。僕はそのまま「匠海」と呼ばれてました。

——「いっそん」「匠海」と呼び合ってる感じが、作中の「アッくん」「タケミチ」と呼び合ってる感じとも似てますね。

北村:たしかに。

磯村:アッくんタケミチ、いっそん匠海……フリースタイルバトル(ポーズを決める)

北村:(笑)

磯村:なんか、よくわかんないですけど(笑)

北村:あの、こういう人なんですよ。世間の人がどれだけわかっているかわかんないけど、我々2人はしょうもない男なんですよ(笑)

磯村:申し訳ないですね(笑)。脱線しないようにまとめています(笑)

■原作の人気もさらに熱く

——今回実写の公開に向かって原作の人気もどんどん上がっているのを感じていて、すごく良いタイミングですよね。原作に対してはどのような思いがありますか?

北村:オファーをいただく前から好きな漫画で。僕らも古き良きヤンキー漫画から1つ世代が新しくなった、スタイリッシュなヤンキー漫画が流行った世代で、そこからさらに大人になり「今のヤンキー漫画はこれだな」と思ってた作品でした。ストレートな言葉にすごく泣かされるんです。

磯村:僕は漫画にうといのでオファーを受けてから知ったんですけど、周りで「面白い漫画があるんだよ」と聞いていた作品が、実はまさに『東京卍リベンジャーズ』でした。読んでみたら本当に止まらなかったです。タイムリープ×不良という組み合わせがものすごく面白い。もともとタイムリープ系が好きだし、男が好きな戦いもあって、ますますいろんな人が「面白い」と言っているのを感じます。実写映画も公開したらたくさんの方が見てくれると嬉しいです。

——実写でも熱い闘いが繰り広げられてました。

北村:僕、もうやられてばっかりで……。

磯村:そうだね(笑)

北村:本当に痛いし、苦しいし、砂とか食べまくってますから(笑)。口がジャリジャリでリアルに擦り傷もあったり。でも僕は、マイキーとかドラケンがかっこいい裏でぼこぼこにされながら、タケミチとして「痛い」と思いたかったんです。今回はアクションもカッコ良さというよりも生々しいものが多いし、リアルに痛々しく見えるからこそ良いというアクションになっています。

磯村:僕はね、全然戦ってない人なんで……。

北村:実はね(笑)

磯村:精神的に追いやられていくっていうタイプだったので、また戦い方が違いますけど、キヨマサとタケミチの戦いも、すごく現実味を持たせてくれたりする描き方してるので、よりリアルに感じてもらえて楽しめるんじゃないかなと思います。

■「匠海がやるなら」「亮くんがやるなら」

——やっぱり、みなさんヤンキーものへの憧れは大きいですか?

北村:僕らの世代って、どこかでその『クローズ』の影響を受けてるところがあると思います。オファーをいただいたのが、吉沢亮くんと一緒に映画を撮っている時で、亮くんが「匠海がタケミチならやる」と言ってくれて、僕は「マイキーは亮くんしかいない」と思っていたから、「亮くんがやってくれるんだったら、タケミチを引き受ける」と2人でホテルの部屋で語り合ったのを覚えています。それは僕らの上の小栗さん達の世代が『クローズ』で大集結して、後輩が憧れる代表作を作り上げたことの影響も大きくて、「僕らの世代が打ち出す熱い映画はこれだ」というのを作りたいね、という話だったんです。プロデューサーさんも世代が近いし、みんなが同じ目線で熱いものを作ろうという思いがありました。もちろん、ふだんは世代にこだわらず作品に関わっていますが、ひとつ「僕らはこうだ」みたいな、世代間のつながりから生まれる作品を世に出せたらと思っていました。

——磯村さんも吉沢さんも「匠海がやるなら」という気持ちだったんですね。

北村:僕みたいに「亮くんがやるなら」と思う人も多いだろうし、亮くんもいっそんも遥ちゃんも「匠海がやるなら」と言ってくれたりして、改めてすごく嬉しくて。自分が先頭というよりも、横に並んでいるイメージなんですけど、「匠海だから」と言ってくれる仲間が、こんなにいるんだというつながりを改めて感じました。

磯村:僕もやっぱり先輩たちが集まって熱く殴り合って芝居して、という姿を見て「かっこいいな」と憧れていたし、自分たちも同世代で集まって熱い作品ができたらと思っていたので、今回のタイミングで『東京リベンジャーズ』として実現できたことは嬉しかったです。あとはやっぱり、みんながついていきたい、一緒にやりたいと思う匠海のカリスマ性が大きい。匠海も言ってたけど、トップに立つわけではなくて、横並びで一緒に歩んでいくという考え方が人を魅了するところで、主演だけど、共演するみんなを立ててくれる力がある俳優だと思うんです。そういうところがわかるから、僕だけじゃなくみんなも一緒にやりたいと言うんだろうし。時代もきっと変わってきて、僕らの世代は誰かが引っ張っていくことについて行くというよりも「一緒に盛り上げていこうよ」というマインドを持っている人が多い気はします。

北村:うん、バトンだと思ってる。小栗さんたちもきっとバトンなのか、何かに対する強い思いからなのか、そういう気持ちがあって作り上げていったんだろうな、と思うし。僕らは本当に上の世代から色々なバトンをもらっているので、ここで1つ、さらに後ろに渡せるものを残したいという思いはありました。それも僕ひとりの力では無理だし、いっそんも言ってたように、僕らの世代はみんなが肩を組んでいる感覚があります。今はやっぱりコロナの影響もあって、映画が映画館で見られなくなってしまったことがあったり、日本映画がダメージを受けてしまうのではないかという危機感は、役者である我々がひしひしと感じているもので。映画賞の授賞式でも、みんなマイクの前に立つと、「映画を盛り上げたい」と言うことが多いと思うんです。そういう中で、「僕らの世代はこう」というのを作りたかった。その思いが詰まっている作品になっています。

※映画『東京リベンジャーズ』特集はこちら!

■北村匠海
1997年11月3日生まれ、東京都出身。2011年にダンスロックバンド「DISH//」を結成。メインボーカルとギターを担当し、13年にメジャーデビュー。俳優としては『君の膵臓をたべたい』(17年)で第41 回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作に『OVER DRIVE』『春待つ僕ら』(18年)、『十二人の死にたい子どもたち』(19年)、『君は月夜に光り輝く』(19年)など。2020年は『思い、思われ、ふり、ふられ』『とんかつDJアゲ太郎』『さくら』『アンダードッグ』が公開された。

■磯村勇斗
1992年9月11日生まれ、静岡県出身。2015年、ドラマ『仮面ライダーゴースト』にアラン役で出演し人気を博す。17年にはNHK 連続テレビ小説『ひよっこ』に出演し、幅広い層からの支持を得る。映画出演作は『覆面系ノイズ』(17年)、『恋は雨上がりのように』『ういらぶ。』『春待つ僕ら』(18年)、福田雄一監督作『今日から俺は!! 劇場版』『新解釈・三國志』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)など。また、2021年は大河ドラマ『青天を衝け』に出演。公開待機作は『劇場版「きのう何食べた?」』『彼女の好きなものは』(21年)。