――今回演じられる乙女ゲームを手がけるベンチャー企業の社長・泉美は、恋愛ゲームの二次元のキャラクターが理想の“推し”という役柄ですが、この部分で共感はありますか?

それがないんです(笑)。昔から何か“推し”と言えるものがないんですよ。ドライなのかなあ(笑)、わりと現実主義なんですよね。もちろん、『NANA』とか『花ざかりの君たちへ』とか、最近では『鬼滅の刃』もハマりましたけど、キャラに恋したり、現実でもアイドルに恋してファンクラブに入ったりということがなかったので、今回はそういう要素を泉美から少しでももらおうと思ってます。

「好きなものがない人生も全然否定しないけど、あったらあったで人生がより楽しくなって輝くよ」というセリフがあるんですけど、自分で言っておきながら自分が言われてるみたいな感覚になって、「へぇ~」って思ってるんです(笑)。意外とすごくハマるかもしれないなと可能性は感じているので、今は撮影でいっぱいいっぱいですけど、終わった後にいろんなオタク友達に聞いてみようかなと思います(笑)

――泉美にとって、恋愛ゲームは人生を変えてくれたものですが、比嘉さんの女優人生においてそうした作品は何だったのでしょうか?

18歳のときに地元の沖縄で撮った『ニライカナイからの手紙』(05年)という映画で、主人公の友人役を演じたのが、女優を本格的に目指したきっかけですね。高校卒業間際だったんですが、当時はときめくものもなく、普通に何かの仕事に就いて結婚して出産して…っていう感じなのかなって、本当に未来予想がぼやっとしてたんですよ。でも、映画に出たときに、何回もNGを出して全然できなかった悔しさがあったんです。子供ながらに社会人として初めて仕事をして、その責任も感じて、「こんなにも自分はできないんだ!」と悔しくて、またチャレンジしたいって燃えたんですよ。そこからスイッチが入って、いまだにそれが燃え続けて、日に日に強くなっている感じですね。

――特に今回のような状況での作品というのは、さらに燃える気持ちがあるのではないでしょうか。

ありますあります、何が何でも最後まで走り切るぞって燃えてます。だから、あの作品に出会わなかったら、こんな自分にも出会わなかったんですよ。平凡な人生も否定はしないんですけど、たまに「今も沖縄にいたらどうなっていたのだろう」って思っても、この人生は決して後悔していないですし、これからもっとどうやって進化していくのか、ワクワクしていますね。

■キャストのみんなが“推し”に

――今回の相手役である渡邊圭祐さんは大抜てきだと思うのですが、印象はいかがですか?

本当に王子様ですよ! 見たときに「何等身!?」「リアルケント様(=劇中の乙女ゲームのキャラクター)だ!」と思いましたから(笑)。デビューが遅かったと本人も言ってたんですけど、その分一般的な感覚をしっかり持っている人なので、今の芸能界にはなかなかいない逸材じゃないかと思いますね。

――自然とプロデューサー目線に(笑)

育てる側の目線で見ちゃいますね(笑)。でも、見た目や声など、要素はパーフェクトなんですよ。芸能人になるべくして生まれてきた人っていると思うんですけど、そのスター性を持っている中で強みとなるのは、みんながたどってきた人生じゃないところでの経験だと思うんです。彼が今27歳でこの役をやるというのも、またすごいめぐり合わせで引き寄せられたんじゃないかなって。

それからリアクションも面白くて(笑)。私がダメンズへの教育として教えたことをキョトンと聞いてるときの顔が何とも言えない表情で、愛おしく見えます。絶妙なものを持っているので、きっと世の女性たちの母性をかき立ててくれるんじゃないですかね。

――今回のような原作のないオリジナルドラマの面白さというのも感じますか?

そうですね。今回はファンタジーな部分もあるので、遊び心を持ってできるというのも魅力だと思います。出てくるキャラクター、役者さんたちがすごくチャーミングで、常に笑い声が絶えなくて、現場が愛おしくてキラキラしてるんですよ。私はわりとセリフ量も出番も多いので、「あー大変」って思うときもあるんですけど、現場のみんなに救われている感じです。現場が楽しいから立てていられる。それこそ、キャストのみんなが“推し”ですね。

――“推し”を見つけましたね(笑)

本当にその手応えを感じ始めているので、これをしっかり形にして、視聴者の皆さんにも同じような気持ちを感じてもらえるような作品にしたいですね。せっかくオリジナルなので、硬くならず柔軟に、こんな時代だからこそ、エンタテインメントを楽しいと思ってもらえるようにしたいなと思っています。