政策系コンサルティングファーム&PRエージェンシーの一般社団法人オール・ニッポン・レノベーション。公式サイトには、『人に、未来に、続く力を。社会問題が蓄積し、不確実性が高まる時代。企業、組織、地域、商品、サービスの「価値」を高め、持続可能な「コト」創り。私たちは「社会が持続可能になるには、企業や地域、サービスが持続可能でなくてはならない。」と考えています。』と掲げられています。

同社団の代表理事を務める富樫泰良氏は、12歳の頃に中高生主体の国際ボランティアネットワークを発足したソーシャルチェンジャー。富樫氏は、どのようにセルフブランディングを行い、さまざまなプロジェクトを推し進めてきたのでしょうか。

本稿では、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、そんな富樫氏と対談を行いました。

  • セルフブランディングで最も重要なのは「一貫性」【前編】

富樫泰良氏プロフィール
1996年10月生まれ、若者と政治の世界のパイオニア。1300人の会員を抱える中高生主体の国際ボランティアネットワーククラブワールドピースジャパンを12歳の時に発足。史上初、現役学生でNHK「日曜討論」に出演。著書に、自民党・公明党・維新の党・大阪維新の会・共産党の国会議員と出版した「ボクらのキボウ、政治のリアル」。2016年参議院議員選挙において公明党重点政策「若者担当大臣・これに変わる部局の設置等」「若者議会の推進」の提案者。一般財団法人五倫文庫理事。NGO野毛坂グローカル理事、日本若者協議会初代代表理事。オール・ニッポン・レノベーションでは企画・政策立案のディレクション担当。慶應SFC学会2020学術交流大会ファイナリスト。レジリエンスジャパン推進協議会全産業参加型サプライチェーン強靭化DX戦略会議専門委員、新しい企業版ふるさと納税モデル構築戦略会議専門委員。

社会課題の解決にフォーカスし、社会を変える

井上一生氏(以下、井上):富樫さんの活動や経歴にとても興味があるのですが、オール・ニッポン・レノベーションはどのような活動をされているのでしょうか?

富樫泰良氏(以下、富樫):パブリックリレーションズがオール・ニッポン・レノベーションの主な活動内容です。政策系コンサルティングファーム・PRエージェンシーとして、パブリックとの関係構築をサポートさせていただいています。国民・住民はもちろん、国家・政府、企業、投資家、社会との関係構築です。例えば、スタートアップベンチャー企業が新しいサービスを社会に提供したいと考えたとき、法規制を曖昧なままにスタートすると、やがては事業を続けられなくなってしまいます。政府への提言やスピーディーな政策反映をサポートしたり、企業が上手に社会や世界にメッセージ・サービスを伝えられるようにサポートすることが私たちのミッションです。

スタートアップベンチャー企業だけでなく、NGOや公益財団のパブリックリレーションズ(PR)もサポートさせていただいています。

企業などが自社のビジネス環境を把握し、より良い環境にすべくステークホルダーとの対話をしていく活動は「パブリックアフェアーズ」と呼ばれていますが、私たちは世論と政策の両面をカバーしています。世論では、メディア・インフルエンサーリレーションズ。政策では、ガバメントリレーションズです。

井上:なるほど。スタートアップベンチャー企業はもちろんですが、他の企業や組織にも必要な支援ですね。事業は持続できないといけませんからね。富樫さんが企業を支援するとき、どのような観点で企業を見ているのでしょうか?

富樫:「社会課題の解決」にフォーカスしています。どのような課題意識を持ち、どのようなサービス・商品で課題を解決していく企業なのかを見ています。国民も行政も納得できる形にする必要がありますから、経済的合理性だけで仕事をお請けすることはありません。

社団のメンバーは、コンサルファームやNGO、官公庁の出身者たちで構成されています。官公庁出身者は政策提言をしていたメンバーなので、スピーディーな政策反映が可能です。場合によっては政府を動かすわけですから、理念やポリシーが合致しないとサポートすることはできません。そこはブレてはいけないところだと思っています。社団のメンバーは全員が「私たちはソーシャルチェンジャーである」と意識を持って活動しています。

事業で社会貢献できれば、ボランティアはいらない

井上:富樫さんの理念や社会への問題意識は、どのようなことが原体験になっているのでしょうか?

富樫:12歳のときに読んだイラク戦争の本の影響が大きいですね。なぜ戦争が起こるのか、疑問に感じました。ほどなくして友達とボランティアグループを立ち上げました。東日本大震災が起きたときは、学生ボランティア希望者の受け皿がなかったので、立ち上げたボランティアグループが受け皿になり、ボランティア活動をしていました。

ボランティアは一度きりでは意味がないと思って、継続的なお手伝いを続けました。ヒッチハイクや夜行バスで東北ボランティアに行き、友人宅や銭湯に泊まっていたんです。3年続けたことで、地元の人たちと仲良くなれました。

当時ボランティア活動をしていて、コストセクターとしてのボランティアに疑問を覚えました。最近では「ゼブラ企業」という言葉が定着しつつあり、企業利益と社会貢献の両立、プロフィットとノンプロフィットの両立について語られていますが、「事業そのものが社会貢献できればボランティアはいらない」と考えるようになりました。

井上:「サスティナビリティ」という言葉が広まっていますが、会社や事業は持続することが重要ですよね。持続するためには、会計の観点では財務会計や管理会計という「未来会計」が重要になる。経営者の伴走者である私たち会計事務所は、過去会計の税務会計だけでなく未来会計もできないと本質的価値はないと考えています。

富樫:仰るとおりですね。NGOがサスティナビリティじゃないこともあります。資源配分をうまくやることで、持続可能性を高めることができると思います。企業が社会的責任を全うすることで、企業利益と社会貢献の両立は可能になります。

例えば、ピルを販売する製薬会社があるとして、これまではNGOなどが性教育の市民講座をしていたわけですが、製薬会社が性教育の啓蒙をしても良いと思います。企業利益と社会貢献の両立は、決して不可能なことではありません。

(次回に続く…)