多くの人が聞いたことがある「インフレーション」という言葉。もともとの意味は「膨張」を意味する「inflation」です。「インフレ」と略し、主に経済用語として使われています。ニュースで耳にする機会も多いでしょう。

本記事では経済用語としてのインフレーションの意味やその影響、デフレについて解説。それ以外の意味や語源、英語での表現もまとめました。

  • インフレーションの基本的な意味を知ろう

    経済界で「インフレーション」は「インフレ」という略されます

インフレーションの基本的な意味を知ろう

インフレーション(inflation)にはもともと、「膨張、膨らんだ状態」という意味があります。これに基づき、大きく3つの分野で使われています。

  • 経済界における「インフレ」
  • 宇宙物理学における「インフレーション」
  • 製造業における「インフレーション」

詳しく見ていきましょう。

語源である英語の「inflation」の意味

まず、英語のインフレーション(inflation)の意味を押さえます。

inflation

―1. 膨張
―2. 慢心、得意、誇張
―3.【経済】 インフレ(ーション)、 通貨膨張
――研究社『新英和中辞典』

inflationという言葉は、「空気やガスなどで膨らませる、膨張させる」という意味の動詞「inflate」が元になっています。inflateの意味はほかにも「誇りや満足感で得意がらせる、慢心させる」や、「通貨を膨張させる」などがあります。

経済界におけるインフレーション

経済用語してのインフレーションは、一般的に「インフレ」と略されます。物の値段や景気の動向、給与など私たちの生活に深く結びついていることから、新聞の社説にも多く登場する言葉です。「インフレ対策」「インフレ抑制」などの言葉も聞いたことがあるでしょう。

インフレの意味は「物価が持続的に上昇すること」ですが、詳しくはこの後解説します。

宇宙物理学におけるインフレーション

宇宙物理学においては、「インフレーション理論」と呼ばれるものがあります。宇宙創世期に急激な膨張があったという説で、宇宙物理学者のアラン・グースらによって提唱されました。

「急激に膨張する」という状況を分かりやすく表すため、なじみの経済用語「インフレーション」を用いたとされています。

プラスチック製造におけるインフレーション

プラスチックの加工技術において、「インフレーション成形」と呼ばれるものがあります。プラスチック(合成樹脂)の熱によってやわらかくなるという特質を生かし、加熱したプラスチックを型の中で膨らませるという製法です。

膨らませたあとを巻き取って製品にしますが、身近なところでは食品ラップやポリ袋などが挙げられます。

  • インフレーションの基本的な意味を知ろう

    インフレーションの本来の意味は「気体で膨らませる」

インフレーションとデフレーションを知ろう

ビジネスでインフレーションは「インフレ」、デフレーションは「デフレ」と訳されます。ここからは仕組みを詳しく見ていきましょう。

インフレとデフレの意味

インフレとデフレの違いは何でしょうか。

  • インフレ…物やサービスの価格が上がり続ける状況
  • デフレ…物やサービスの価格が下がり続ける状況

この違いだけを見ると「物やサービスの価格は下がったほうがいいのではないか」と捉えがちですが、実際はそうとは言えません。次に、私たちの生活にどのように影響するかを見ていきます。

インフレとデフレは、経済や私たちの生活にどのような影響を与えるのか

インフレは需要が供給を上回っている状態で起こるとされます。具体的には物やサービスの価格が上がる→企業の利益が上がる→賃金が上がる→さらなる購買意欲をわかせるという流れです。出回る通貨の量が増え、好景気と捉えることができます。

一方デフレは、企業の生産力や投資力が落ちる→物やサービスの価格が下がる→企業の利益が減る→賃金が下がる→買い控えが起こるという流れで起こります。出回る通貨の量は減り、景気悪化や不況と捉えられます。

一般的にはインフレの状況がゆるやかに続く状態が、経済成長のためには望ましいとされています。

インフレとデフレには消費者の心理が大きく関わっています。将来に対する不安があると、人はお金を使わず貯金に回すため、物が売れず経済が停滞してしまうからです。日本は長らくの間デフレの状況が続いており、デフレ脱却を目指し政府によるさまざまな金融政策がとられています。

ハイパー・インフレーションは弊害を招く

ゆるやかなインフレが望ましいとされる一方で、短期間で物やサービスの価格が数倍にもなる急激なインフレは「ハイパー・インフレーション」と呼び、大きな弊害が伴います。

例えば毎月50%を超えるインフレに見舞われたとしましょう。1000円だったものが来月には1500円に、その翌月には2250円となり、2カ月で価格は倍以上に跳ね上がります。私たちの生活をひっ迫させることは言うまでもありません。

ハイパー・インフレーションは多くの場合、戦争や内紛などで政府が巨額の費用を調達するため、国債などを膨大に発行することなどに起因されます。第一次世界大戦後のドイツで起こった事例も有名です。

生活を破壊しかねないハイパー・インフレーションですが、現代では政府から独立した中央銀行が金融政策を行うため、起こりにくいとされています。

  • インフレーションとデフレーションを知ろう

    ハイパー・インフレは第一次世界大戦後のドイツでも起こりました

ゲームの世界でも使われる「インフレ」

なおコミックなどで登場人物の力が急激に強くなることを「パワーインフレ」と呼びます。

特に少年マンガでは主人公が成長と共に強くなり、ストーリー展開に合わせて敵もさらに強くなります。これがくり返され、当初の設定からとんでもなく強くなることを「パワーインフレ」と呼びます。コミックやロールプレーイングゲームなどでも使われる表現です。

  • 「インフレーション」「インフレ」という言葉の使い方

    「インフレ」という言葉はコミックやゲームでも使われます

インフレーションに関連する英語表現を知ろう

ここで、インフレーションの英語表現を見ていきましょう。ビジネスパーソンとしてぜひ知っておきたいところですね。

inflation

【例文】

  • Inflation is generally controlled by the Central Bank.
    インフレは中央銀行によって抑制されつつある。

moderate inflation(ゆるやかなインフレ)

好ましい景気状況として使われる言葉に「ゆるやかなインフレ」があります。英語では「穏やかな」「ゆるやかな」という意味のmoderateを使います。一方「急激に」はprogressiveを使います。

【例文】

  • The government aims for moderate inflation instead of deflation.
    政府はデフレに代わり、ゆるやかなインフレを目指している。
  • Fuel prices on progressive inflation affected the economy.
    燃料価格の急激なインフレは経済に影響を与えた。
  • インフレーションに関連する英語表現を知ろう

    inflationやdeflationは英字新聞の見出しでよく見ます

身近な言葉「インフレーション」「インフレ」の理解を深めよう

インフレーションは、「気体を入れて膨らませる」という意味のinflathinが元になっていると紹介しました。このインフレーションという言葉、宇宙物理学やプラスチック加工技術にも使われていることは初めて知った方もいるでしょう。

経済界においては「持続的に物やサービスの価格が上がること」を指し、ゆるやかなインフレは経済成長につながるため理想だとされています。ビジネスパーソンとして、仕組みをしっかりと理解しておきましょう。