京急電鉄は5月6日から、平日朝の「モーニング・ウィング3号」に1000形新造車両(1890番台)を導入している。すでに活躍中の1800番台に近い顔立ちでありながら、車内に自動回転式シート(L/C腰掛)やトイレを設置しており、同社の既存車両と比べて大きく印象が変わり、話題になった。横浜市在住の筆者も、5月の平日を使って「モーニング・ウィング3号」に乗車。1000形新造車両の走りと車内設備を体感した。

  • 1000形新造車両を使用する「モーニング・ウィング3号」。金沢文庫駅まで4両編成で運転される(筆者撮影)

「モーニング・ウィング3号」は三浦海岸駅を6時9分に発車し、終点の品川駅に7時28分に到着する。この日は横須賀中央駅から「モーニング・ウィング3号」に乗車した。

■金沢文庫駅まで短い4両編成で運転

横須賀中央駅から「モーニング・ウィング3号」を利用する場合、乗車位置はホーム浦賀寄りにある。1号車と2・3・4号車で列が分かれ、さらに窓側座席(A・D席)と通路側座席(B・C席)で整列位置が分かれており、駅員にウィングチケットを見せた上で整列する。

ウィングチケットは「ウィング号」の各停車駅にて、同列車の乗車位置付近にある券売機で当日分・前売分ともに購入できるが、ホーム上の券売機だと座席を選ぶことができない。希望する席を選んで座りたい場合は、京急電鉄公式サイト内「KQuick」(決済はクレジットカードのみ)を利用して予約すると良いだろう。

横須賀中央駅で「モーニング・ウィング3号」を待っていると、到着時刻が近づくにつれ、待機列に並ぶ乗客も増えてきた。6時26分頃、1000形新造車両の「モーニング・ウィング3号」が横須賀中央駅に到着。それぞれ窓側に着席する人の列から順に車内へ入り、筆者も続いて乗車する。6時27分、定刻に横須賀中央駅を発車した。

  • 「モーニング・ウィング3号」に使用される1000形新造車両(4月24日の報道撮影会にて、筆者撮影)

  • 横須賀中央駅からは乗車のみ可(筆者撮影)

筆者は2号車の6C(4両編成の後ろから2両目、品川方面に向かって左手の通路側)に着席した。車内を見ると、空席は残りわずかだった様子。筆者の前後左右の席も埋まっている。大半が都内への通勤客と見受けられたが、鉄道ファンと思われる乗客も数名見かけた。

1000形新造車両の座席はロングシート・クロスシートの切替えが可能で、「モーニング・ウィング3号」ではクロスシートとなる。2100形のクロスシートと比べて座席幅が10mm広く(1000形新造車両の座席幅は460mm)、ゆったりと腰掛けられる。前席の背面にフックとドリンクホルダーが取り付けられ、飲み物や軽い荷物を置くときに便利。足もとに電源コンセント(AC100V)もあり、スマートフォン・パソコン等の充電に役立つ。デュアルシートなのでリクライニングはできないが、それでも品川駅までの座席指定列車としては十分な設備だろう。

  • 1000形新造車両のクロスシート時の車内(4月15日の報道撮影会にて、編集部撮影)

横須賀中央駅を発車した時点では雲の多い車窓風景だったが、次第に晴れ間が見え、追浜駅を通過したあたりから日差しがまぶしくなり、心地良い陽気になった。連続するトンネルを抜け、次の停車駅である金沢文庫駅に向けてひた走る。

■上大岡駅から品川駅までノンストップ

ところが、金沢八景駅を通過した直後、列車は大きく減速した。何があったのかと思えば、金沢文庫駅で8両編成の2100形を増結するため、先に2100形が金沢文庫駅に入っていったのだ。その様子は進行方向右手の車窓からも確認できる。1000形新造車両は2100形の後に続いて金沢文庫駅へ。ここで連結作業が行われ、前8両が2100形、後ろ4両が1000形新造車両の12両編成となって発車する。

金沢文庫駅と次の上大岡駅では、後ろ4両のドアは開かなかった。つまり、「モーニング・ウィング3号」で1000形新造車両に乗車できる駅は三浦海岸駅と横須賀中央駅のみということになる。

上大岡駅を発車すると、「モーニング・ウィング3号」は終点の品川駅までノンストップ。快特が停車する横浜駅、京急川崎駅、京急蒲田駅も通過する。日ノ出町駅の手前あたりから横浜駅まで、カーブが多くなるため速度を落としながら走行し、横浜駅を徐行運転で通過。ここからしばらくJR線と並行する区間となる。

時刻は7時をすぎ、通勤ラッシュもピークに近づいている。「モーニング・ウィング3号」も先行列車に接近することが増え、本来の速度を出せないことも多かった。横浜駅を通過した直後に再加速するも、再び減速せざるをえず、隣の京浜東北線に追い抜かれる場面も。横浜駅から先は高速運転と減速運転を交互に行いながらの走りとなった。

2号車の車内を改めて見ると、読書やスマートフォンに集中する人がいる中、寝ている人も多かった。また、デュアルシートと並んで京急初導入となったトイレ(2号車はバリアフリー対応、3号車は男性用)を利用する人も見られ、さっそく乗客の役に立っている様子だった。「モーニング・ウィング3号」なら品川駅で寝過ごす心配がほぼないし、車内にトイレがあることもありがたい。この日は気温も暖かく、より快適に乗車できた。

  • 1000形新造車両の2号車に設置されたトイレ(4月15日の報道撮影会にて編集部撮影)

1000形新造車両の登場により、京急電鉄のクロスシート車両は2100形と1000形新造車両の2種類(車端部のみクロスシートとなっている車両などは除く)になった。あくまで個人の感想だが、2100形のクロスシートは背もたれが比較的後ろに固定されるため、背中を預けて楽な姿勢を取りやすい。対する1000形新造車両は、2100形の座席ほど後ろに寄りかかれないものの、2100形よりも座席幅が広がり、電源コンセントやトイレなど他の面で利便性を向上させている点も好印象だった。

京急電鉄は5月12日に今年度の設備投資計画を発表し、1000形新造車両を3編成増備する計画を明らかにしている。今後、1000形新造車両の乗車機会が増えるとともに、快特や「ウィング号」「モーニング・ウィング号」など、2100形と連結しての運用が増える可能性もある。純粋に車内でのくつろぎやすさを求めるなら2100形、車内設備を有効活用したいなら1000形新造車両といった使い分けができるようになると良いかもしれない。

■品川駅到着後、京急川崎行の特急に

品川駅の手前でJR線を跨ぎ、「モーニング・ウィング3号」は7時34分、終点の品川駅に到着した。本来の到着時刻は7時28分だが、この日は踏切安全確認の影響で少々遅れが生じた。とはいえ、運賃に300円追加することで確実に座れる上に、電源コンセントとトイレの設置により、さらに利用しやすくなったことは十分に伝わった。

「モーニング・ウィング3号」の車両は品川駅到着後、引上げ線へ回送されるが、1000形新造車両はすぐに三崎口行の特急の後ろに増結され、品川駅から折り返す。行先を「京急川崎」と表示しての運転で、京急川崎駅到着後は回送扱いとなり、12両編成のまま神奈川新町駅まで走行。ここで1000形新造車両の切離しが行われる。

  • 「モーニング・ウィング3号」の終点となる品川駅(筆者撮影)

  • 1000形新造車両は品川駅到着後、三崎口行の特急の後ろに増結されて折り返す(筆者撮影)

筆者が「モーニング・ウィング3号」に乗車した後、SNS等でエアポート急行として走る1000形新造車両の目撃情報もあり、活躍の場を徐々に広げていることがわかる。今後、貸切イベント列車などでこの車両が活躍する可能性も十分にあり、誰でも気軽に1000形新造車両を利用できる機会がいずれ訪れるはず。そのときにはぜひ、京急初の設備などを体感してみてほしい。