両者の対戦はこれで豊島竜王の12連勝となった

第80期A級順位戦(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の1回戦、▲豊島将之竜王-△佐藤天彦九段戦が6月10日に東京・将棋会館で行われました。結果は111手で豊島竜王が勝利を収めています。


第80期A級順位戦リーグ表

最近は振り飛車を多用する佐藤九段。本局も飛車を振るのかと思われましたが、雁木+袖飛車の戦型を選択しました。袖飛車とは飛車を初期配置から自分から見て一つ左に寄った形を指します。本局は振り飛車を警戒した豊島竜王が玉を早めに7筋に配置したため、その頭上から攻めていくという理にかなった駒組みです。

佐藤九段は銀香交換の駒損ながら、先手玉付近に馬を作って攻めていきます。この攻めに対する豊島竜王の対応が的確でした。

まずは手にした銀で馬の利きを遮断。さらに角を打って角と銀の協力で馬を捕獲します。佐藤九段がこの角を目標に攻めてくると、ばっさりと角を切り飛ばして攻め込んでいきました。先手の桂香を用いた攻めが厳しく後手陣に突き刺さり、豊島竜王が優勢になります。

終盤、佐藤九段は上部脱出を含みに粘ります。攻め駒の数が少ない豊島竜王。寄せ損なうと勝負は一気に分からなくなります。しかし、豊島竜王は寄せの絶妙手を用意していました。

それが飛車をタダで捨てる▲4一飛成。玉に取らせて下段に落とし、上から押さえつける狙いです。最後に香を捨てたのが決め手。盤上の攻め駒は成桂2枚だけ。先手の唯一の持ち駒である歩1枚もぴったりと使い切る、攻め駒3枚によるギリギリの寄せで、佐藤玉を仕留めました。

この結果、豊島竜王は1勝0敗、佐藤九段は0勝1敗の成績になりました。第78期名人戦七番勝負で渡辺明名人に名人位を奪われた豊島竜王。復位に向けて幸先のいいスタートを切ることができました。

前名人が復位に向けて好発進。写真は王位戦挑戦者決定戦の時のもの(提供:日本将棋連盟)
前名人が復位に向けて好発進。写真は王位戦挑戦者決定戦の時のもの(提供:日本将棋連盟)