ビジネスパーソンが“今読むべき本”を厳選し、要約してそのエッセンスを伝える「flier(フライヤー)」。最新のトレンドを学んだり、読みたい本を見つけたりするためのツールとして、累計約80万人のユーザーに活用されています。

この記事では、flierを利用する意識の高いビジネスパーソンの中でも特に、20代~30代のユーザーが今、リアルに読んでいる本とその傾向を紹介します。同世代のビジネスパーソンは今、どんな本を読んでいるのでしょうか? なぜその本が選ばれたのでしょうか? 気になった本があれば、ぜひチェックしてみてくださいね!

たった一つのシンプルな考え方で、「伝え方」がうまくなる

5月、20代~30代に一番読まれたのは、『〔新版〕一瞬で大切なことを伝える技術』(三谷宏治、三笠書房)でした。

直接顔を合わせることなく打ち合わせをしたり、議論したりすることが当たり前となった今、「伝える力」の重要性が増しています。「もっと簡潔に説明して」と言われてしまった、プレゼンに込めた熱意がうまく伝わらない、伝え方が悪く相手を不愉快にさせてしまった……このような失敗は、誰にでもあるものでしょう。

もしあなたが、伝える力を磨きたいと考えているなら、本書をおすすめします。本書は、アクセンチュアで20年近く経営コンサルタントとして活躍した後、大学教授、著述家、講義・講演者として幅広い領域で発信活動を行う著者が、「一瞬で大切なことを伝える技術」を指南する一冊です。

本書で紹介されるのは、自分の言いたいことを伝え、相手の言いたいことを引き出し、さらなる意見交換や議論を生むための方法。その根幹にあるのは「重要思考」という、ロジカル・シンキング(論理思考)の手法です。「重要思考」を使えば、自分の頭の中をうまく整理し、それを伝え、相手の話を聴き、議論することができるようになります。

ロジカル・シンキングと聞くと、ついつい「難しそうだ」と尻込みしてしまう人もいるでしょう。ですが、本書で紹介される考え方は意外とシンプル。それは、「そのことがどれだけ重要か?」という「重み」と、「それは他とどれだけ差があるか?」という「差」で考える、ということです。この考え方がさまざまな事例に基づいて丁寧に紹介されるので、ロジカル・シンキング初心者でもまったく問題なく理解し、応用できるでしょう。

若手として働く今も、ベテランになっても、「伝える」ことからは逃げられません。基礎力をアップさせて活躍の幅を広げたいなら、まずは試してみていただきたい一冊です。

「生きがい」を考える、色あせることのない名著

2位は、『生きがいについて』(神谷美恵子、みすず書房)でした。2004年に出版されて以降、多くの読者に「生きがい」についての思索を促し、示唆を与えてきた名著です。

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活を大きく変えました。今まで当たり前のようにしていたことができなくなり、生きがいを失ってしまったような感覚を経験した人も多いでしょう。また、命をかけて働く医療従事者やエッセンシャルワーカーの方々を見ては、どうしようもない無力感ややるせなさを覚えた人もいるかもしれません。

そんな人には、本書を手に取ってほしいと思います。本書は、精神科医としてハンセン病の療養施設に勤務した著者が、施設での体験をもとに、「生きがい」についての考えを記した一冊です。

本書で著者は、生きがい感とは「腹の底から湧き出る喜び」であり、そこに理由などない、といったことを書いています。生きがいは病や死などによって簡単に奪われてしまうもので。生きがいをなくしてしまった人には、自分の存在が必要だと強く感じさせてくれる新しい生きがいが必要だともいいます。

先行きが見えない時代において、自分の人生の指針をどのように立てようか。自分は誰か、何かの役に立てるのだろうか――生きがいを求めてもがいている人は、ぜひ本書を紐解き、思索のヒントとしてみてください。

マーケティング思考をうまく使えば、凡人こそ輝ける

3位は、『マーケターのように生きろ』(井上大輔、東洋経済新報社)でした。

SNSが普及した現代において、際だった個性を持っている人が可視化されやすくなっています。誰かの投稿を見ては、「あの人はこんなに優秀なのに」「自分はどうして平凡なのだろう」と落ち込んでしまうこともあるかもしれません。自分には、他人の目を引く個性などない――そう感じている人には、本書から多くのヒントを得られるでしょう。

著者である井上大輔氏は、これまでユニリーバ、アウディ、ヤフーでマネージャーを歴任し、現在はソフトバンクの広告部門でマーケターを務めてきました。この経歴を聞くと、「優秀な人だから参考にならない」と思ってしまうかもしれません。しかし井上氏は、新人の頃、まったく仕事ができないお荷物社員だったのだといいます。

井上氏が変わったのは、「マーケターとして生きる」ようになってからのこと。目に見えて企画の成功率が上がり、講演や研修講師の依頼が舞い込むようになりました。また、書いていたブログが注目され、出版のオファーが届くようにもなりました。

著者のいう「マーケターとして生きる」とは、自分を表現するよりも「相手からスタートする」マーケター視点を持って生きることを指します。つまり、相手が何を求めているかに思いをめぐらせ、それに応えるためにできうる限りのことをするのです。そうして相手の期待に応え続ければ、強く求められる存在になることができます。

著者はまた、マーケターとして生きることは、キャリアアップにも役立つといいます。特に覚えておきたいのは、自分の価値を伝えるという考え方。自分の存在をアピールしなければ、キャリアアップはかないません。

では、どのように自分の価値を伝えればいいのか。ポイントは、コミュニティ内で話題になることです。その好例として挙げられているのは、ネット通販限定のチーズケーキショップ「Mr.CHEESECAKE(ミスチ)」。ミスチを参考にして「目立っている人」になれば、きっとキャリアアップへの道がひらけるでしょう。

これからどのようにキャリアを歩んでいこうか、どのようにライバルと差別化すればいいのかと悩む20代、30代に、一生役立つ考え方を伝授してくれる一冊となっています。

ビジネス書から、ビジネスのヒントを得よう

今回も、現在の自分の姿と向き合い、さらなる成長を遂げようとするビジネスパーソンの姿が見えるようなランキングとなりました。

本の要約サイトflierには、他にも、ビジネススキルを磨きたいときや自分とじっくり向き合いたいときに役立つ書籍が多くそろっています。5月のランキングでは、『学び方の学び方』(バーバラ・オークレー/オラフ・シーヴェ著、宮本喜一訳、アチーブメント出版)や『問いの立て方』(宮野公樹、筑摩書房)、『妄想する頭 思考する手』(暦本純一、祥伝社)などがベスト10にランクインしたほか、『孤独と不安のレッスン』(鴻上尚史、大和書房)、『「20代」でやっておきたいこと』(川北義則、三笠書房)、『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー・インスティチュート著、金森重樹監修、冨永星訳、三笠書房)などといった名著も注目を集めています!

来月はどのような本が注目を集めるのか、楽しみにしていただければ幸いです。