『青天を衝け』を見ていると、光と闇のコントラストが印象的。政治的な陰謀と若者の瑞々しさが両方描かれている。その理由を村橋氏はこう考える。

「幕末はそういう時代。起きていることは血生臭く見えるけれど、本人たちはものすごくピュアで、ピュア過ぎるがためにあれだけいろんな考えの対立が起こるのだと思います。全員が正義で全員が悪、みたいな時代だから、コントラスをつければつけただけ物語として美しく見えるだろうと意識しています」

第16回ではもうひとつキュンとなる場面があった。円四郎が慶喜のことを思い続けたことが描かれるがその一方で、妻・やす(木村佳乃)のことも忘れないのである。斬られてもなお立ち上がり、どこかに歩いていこうとするような動きは堤真一と村橋氏が相談して決めた。まだやることがあり死にたくないと思う円四郎は慶喜のことばかり考えているようでいて、亡くなる瞬間の呼ぶ名は「やす」だった。「大森さんらしい脚本だなって思いました」と村橋氏。

慶喜と円四郎の深い絆のみならず描かれる円四郎の妻への愛。ここにもある種の「キュン」があると筆者は思う。国を良くしようと危険を伴う行動をする男性たちの傍らには必ず寄り添う女性たちがいる。

村橋氏は、慶喜と円四郎が出会う第4回、栄一が怪しい霊媒師を論破する第5回、栄一が山に登り晴天を衝く第7回、桜田門外の変の第9回と事が大きく動く回を担当している。毎回、大雨や逆光、高い山(第7回)、雪(第9回の桜田門外のシーン)、狭い場所(第16回の池田屋の路地での新選組のアクション)など俳優に負荷をかける演出で緊張感を高めている。第16回も心をざわつかせてくれた。

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