ポストモダンとは、芸術、建築、評論、哲学などの分野で流行した広範な思想運動であり、多くのアーティストが関わってきました。今回は、ポストモダンについての概念や、主なアーティストの活動について紹介します。

  • ポストモダンとは?

    ポストモダンについて紹介していきます

ポストモダンの意味を簡単にいうと?

「ポストモダン」の意味は、簡単にいうと「近代(モダン)以後」のことを指します。個人個人がそれぞれの趣味に生きて、共通の価値観が無くなってきている現代の状況を表しています。

20世紀中盤から後半にかけて、近代から脱却することを目標に、文学・芸術・建築などの分野で流行した思想運動が盛んになりました。

「近代(モダン)」という言葉は、時代区分を指すものだけでなく、19世紀以降の近代的な文化や価値観の総称としても用いられています。

広義には、近代(モダン)のあとに続くと考える時代と、その傾向を表す言葉で、「ポストモダニズム」とも呼ばれ、日本語では「脱近代主義」といわれます。

ポストモダン文学とは

「ポストモダン文学」は、近代文学の特徴に反する部分を持つ文学のことをいいます。代表的な作家はウィリアム・ギャディス氏やジョン・バース氏、トマス・ピンチョン氏が挙げられます。

「ポストモダン文学」は近代文学への反立、否定的な内容である以外に、明確な定義はありません。

通常、文学には特徴づける形質があります。しかし、「ポストモダン文学」の場合には、形質としての定義がなく、曖昧な分野ともいえるでしょう。

近代文学では無矛盾性(むむじゅんせい)・普遍性・独創性・秩序性・簡潔性などの特徴を持っていました。しかし、ポストモダン文学では物語の矛盾を肯定的に表現し、近代文学とは相反するような時間軸の無秩序性・記号性・全面的破壊などの表現が含まれています。

  • ポストモダン文学

    ポストモダン文学には近代文学とは相反するようなものが多くあります

ポストモダン建築とは

「ポストモダン建築」は、近代的な建築への批判からできた建築のスタイルを指します、日本では、竹山実氏や磯崎新氏、原広司氏などが有名です。当初は「ポストモダン」と呼ばれていましたが、近年ではあまり使われない言葉になってきています。

近代モダニズム建築は合理的で機能主義的な考え方で造られていました。しかしその反動として、「ポストモダン建築」では装飾性・過剰性・折衷性(せっちゅうせい)など、よりアートな部分も求め造られた建築となっています。

「ポストモダン建築」は1980年代を中心に流行し、さまざまな建築物が建てられました。

  • ポストモダン建築

    1980年代を中心に流行したポストモダン建築

ポストモダン芸術とは

「ポストモダン芸術」は、近代美術の後に登場した美術運動から生まれたアートを指します。近代美術的側面を否定し、発展していったともいえるでしょう。

ハンナ・ウィルケ氏やカラ・ウォーカー氏、アンディ・ウォーホル氏、オノ・ヨーコ氏、斉藤陽子氏などが有名です。

現代芸術そのものを指すという意見や、近代美術とポストモダン芸術の両方を包括して「近現代美術」という呼び方をすることもあります。

一方で、現代芸術と呼ばれるすべての芸術がポストモダンではないという見方もあり、定義は人それぞれで曖昧に発信されているという現実もあります。

「ポストモダン」に該当する芸術では、一般的には、

  • コンセプチュアルアート

  • インターメディア

  • インスタレーション

  • マルチメディア

  • ビデオ・アート

などが代表的なものとされています。

  • ポストモダン芸術

    ポストモダンのさまざまな芸術が流行

ポストモダンを代表するアーティストの例

身近に触れやすいポストモダンアートの例について紹介します。

「何を主張し、何に反対しているのか」を考えながらみることで、「ポストモダン」についてより理解できるようになるでしょう。

アンディ・ウォーホル

派手な色を使用し、さらに同じ図版を大量に生産できるシルクスクリーンの技法を用いた作風です。ドル記号やスターのイメージの商品など、アメリカ社会に広まっているシンボルを基に作品を作成しています。

絵柄は豊かなポップアートの反面、アメリカの資本主義や大衆文化のもつ大量消費や空虚さが表現されているとの見方もされています。

ジェフ・クーンズ

ジェフ・クーンズ氏はアメリカ合衆国の美術家で、キッチュなイメージ(派手なイメージ)を使った絵画や彫刻作品などで知られています。

使い捨ての物で作られた作品『バルーン・ドッグ(Balloon Dog)』(1994年 - 2000年)では、ねじって犬の形にしたバルーンのように見えるのに対し、実は明るい赤の風船は金属製で造られ、高さ3m以上もある彫刻での大作もあります。

オノ・ヨーコ

オノ・ヨーコ氏は、東京都出身の前衛芸術家であり音楽家、平和運動活動家です。

イギリスのシンガーソングライターで「ビートルズ」のメンバーであったジョン・レノン氏と結婚後、平和活動や創作活動をメインに行ったことでも世界中の人々に知られています。

斉藤陽子

斉藤陽子(さいとうたかこ)氏は、福井県生まれの現代美術家で、1960年代を代表する芸術運動「フルクサス」で活動しています。現在もフルクサス関連の展示に参加しており、有名な作品は「Silent Music」や「Spice Chess」が挙げられます。

「フルクサス」とは、ラテン語で流れる・変化する・下剤をかけるという意味です。1960年代を代表する芸術運動として、ネオダダと並び称されており、ユーモアに溢れる表現が特徴となっています。

フルクサスは自らのイベントをハプニングと区別していました。日常的なものを芸術の舞台に持ち込むことでその垣根を壊し、日常に芸術的な流れを持ち込ませるという反芸術的な意図を持っていたとされています。

メンバーは多国籍で、ドイツやアメリカ、日本、韓国など10か国近くに及びます。 美術や音楽、詩、舞踏など、広い芸術ジャンルにまたがって活動を行いますが、グループとしてのはっきりした主義主張を持たないというのが特徴です。

  • ポストモダンを代表するアーティストの例

    多くのアーティストが活動している

ポストモダンは思想であり芸術表現のひとつ

「ポストモダン」とは、近代から脱却することを目標に、20世紀中盤から後半にかけて、文学・建築・音楽・絵画などの分野で流行した広範な思想運動のことを指します。 ポストモダンを表現したアーティストは数多く、各分野で近代(モダン)に反したさまざまな表現がされています。

歴史の一部でありながら、現在でも多くの人の目に触れる「ポストモダン」をより理解してみましょう。