リーンスタートアップとは2008年に提唱されたマネジメント手法のひとつです。正しく理解すれば事業開発においても活用できます。

この記事では、リーンスタートアップの基本的な考え方や、活用方法について詳しく解説します。

  • リーンスタートアップとは?

    リーンスタートアップはどういった手法でしょう

リーンスタートアップとは?

リーンスタートアップは、新しい商品やサービスを企画して試作品(MVP)を作る「構築」、試作品を使って市場の反応を確認する「計測」、その結果をもとに試作品を改善する「学習」のサイクルを回していくというマネジメントの手法です。

市場の反応を素早く製品に反映できるのみでなく、計測、学習の段階でビジネスとして成立しないのであれば早い段階で「再構築」を行うことで無駄を省くこともできます。

「リーン」と「スタートアップ」の意味

リーンスタートアップとは「痩せ型」や「細い」といった意味を持つ形容詞のLeanと、「立ち上げ」や「企業」といった意味を持つStartupを組み合わせた言葉です。無駄を省いてスピーディーな成長を狙うビジネスの立ち上げ、企業といった意味合いになります。

注目されている理由

リーンスタートアップが注目された理由を提唱された時代から読み解いてみましょう。前述の通り、この手法が提唱されたのは2008年のことです。この年、日本を含む多くの地域でスマートフォン普及のきっかけとなったApple社のiPhoneが発売されています。

そしてこの時期を境に、スマートフォンやタブレットをはじめとしたネット端末の普及が急速に進みました。つまり、本格的にネット時代に進んだタイミングであると言えます。

ネットが普及したことによって消費者自身でさまざまな情報を積極的に得ることができるようになり、市場は売り手主導から買い手主導へと変化しました。

その結果、ニーズは多様化し、大量消費を前提とした大量生産を行うというスタイルでは対応が難しくなったのです。

そこで、さまざまな商品をスピーディーに開発し、市場にリリースする手法としてリーンスタートアップが注目を集めることになりました。

誤解されがちなリーンスタートアップ

時代は常に変化し続けています。すでにリーンスタートアップという考え方が提唱されてからすでに10年以上が経過しており、時代遅れの手法であると言われるケースも増えました。

現在ではSNSなどの普及によって情報拡散のスピードはさらに速くなっています。そのため、試作品で市場の反応の計測を行おうとした段階で、評価はすぐに拡散され評価が固定されてしまう恐れがあるのです。これではリーンスタートアップにおいて重要となる計測、学習を行う隙がありません。

これが、リーンスタートアップが時代遅れであると言われる理由です。しかし、そこには誤解も含まれています。

リーンスタートアップでは構築した試作品を使って計測や学習、そして再構築を行います。これを繰り返すことだけを前提として考えれば、確かに時代遅れな手法かもしれません。

しかし、「売れる」商品やサービスを開発するためには最初の段階の試作品がある程度の魅力を持って市場にアプローチできるものである必要があります。 その上で、より優れた商品にするために計測や学習を行うのです。

  • リーンスタートアップとは?

    リーンスタートアップの意味を正しく理解しましょう

リーンスタートアップのメリット

リーンスタートアップにはさまざまなメリットがあります。いくつかのポイントに分けてリーンスタートアップのメリットについてくわしく紹介します。

コストの削減ができる

リーンスタートアップでは顧客のフィードバックによって製品やサービスの開発を進めます。そのため必要最低限の人員でも行え、コスト削減が可能です。また、素早く消費者の反応を確認できるため、失敗の際の見切りも早く行え、余計なコストの発生を防げます。

リーンスタートアップは、顧客からのフィードバックを開発段階で得られることから、事前調査に時間をかける必要がありません。そのため、企画からリリースまでの時間を大幅に短縮できるのです。

顧客からのフィードバックを活かしやすい

リーンスタートアップでは顧客からのフィードバックを活かしやすいという点もポイントです。試作品をすぐに提供して実際の顧客の声を聞くことができるので、次のアップデートに素早く活かせます。

  • リーンスタートアップのメリット

    リーンスタートアップには多くのメリットがあります

リーンスタートアップの手法

リーンスタートアップは3~4つのフローを繰り返すことによって行われます。その手法を紹介しましょう。

構築~企画・開発

まずは製品やサービスの企画と開発を行いますが、この段階で試作品を作成することになります。リーンスタートアップでは、この試作品をベースとしてサイクルをまわしていくことになりますのでとても重要なフローです。

しかし、消費者からのフィードバックを得る前提での構築ですので、事前調査などに長い時間をかける必要はありません。

計測~顧客からのフィードバック

試作品をリリースしてから顧客からのフィードバックを集めます。これが計測です。売上高や顧客の反応など複数の指標を定めて客観的にデータを集めることが重要です。

学習~構築の見直し

計測の結果から構築段階の問題点などを検証するのが学習です。基本的な方針が正しいと判断されるのであれば、さらなる改良を行います。逆に企画そのものが市場において有効ではないと判断されるのであれば方向転換を視野にいれることになります。

再構築~企画そのものの見直し

学習の結果をもとにして、再構築を行います。学習の段階で市場に受け入れられない可能性が高いと判断された場合、最初の企画からやり直すことになります。

  • リーンスタートアップの手法

    リーンスタートアップの手法

リーンスタートアップの課題

最後に、リーンスタートアップが抱える課題をいくつかのポイントに分けて紹介します。

施策の中で目的がずれやすい

リーンスタートアップでは、同じフローをサイクルとしてまわしていくこととなります。これを繰り返していく中で、徐々に目的がずれてしまうというケースもあるのです。

そのため、再構築を行うたびに一度当初の目的を改めて確認するようにしましょう。

顧客からのフィードバックが得られない

顧客からのフィードバックが得られなければ、リーンスタートアップにおける計測、学習のフローを行うことができません。そのため、構築の段階でしっかりと顧客からフィードバックを得ることができる体制を整える必要があります。

  • リーンスタートアップの課題

    リーンスタートアップの課題

リーンスタートアップを正しく理解しよう

リーンスタートアップは、その本質を正しく理解した上で導入すれば現在でも有効です。とはいえ、課題も少なくありません。自社の目的と照らし合わせた上で、事業開発の手法のひとつとしてリーンスタートアップを検討するようにしましょう。