新型コロナウイルスにより半ば強制的に推進されたテレワークを代表とする「働き方」の変化。その流れを受けてか、より根本的なワードとなるジョブ型雇用、メンバーシップ型雇用に関する話題も多く見かけますよね。

補足すると、メンバーシップ型雇用は従来の新卒一括採用と密接に関係する仕事内容や勤務地を限定・特定せず、企業側が人事権を使って社員のキャリアを主導すること。逆にジョブ型雇用は働く本人の能力・希望を踏まえて「仕事が限定された」ケースでの雇用で、中途採用が主なもの。この時、本人のキャリアは自身が管理するのです。

なお、日本ではさまざまな解釈や混同もあるようなので、今回は簡単な説明にしておきます。

  • ジョブ型雇用は進むか?

先日、パーソルキャリアとパーソル総合研究所が、「ジョブごとの報酬水準データ」を企業に提供する「Salaries.jp(以下、サラリーズ)」のサービス提供を開始しました。

企業の「ジョブ型雇用」への移行など人事制度の見直しや、採用力強化・離職防止をサポートするという本サービスを紹介したいと思います。

キャリアを自律的に考える時代

リリースされたサラリーズについて、パーソル総合研究所 代表取締役 渋谷和久氏は「日本における仕事ごとの報酬水準を『doda』約100万件のデータに基づいて可視化していくことです」と説明します。

  • パーソル総合研究所 代表取締役 渋谷和久氏

渋谷氏「例えば大手企業に勤務する経理課長の報酬、ベンチャー企業のITエンジニアの給与水準などを明らかにします。これはジョブ型雇用で必須となる情報でありプロダクトです。企業と働く人間がフェアな関係を持ち、企業に委ねた職業人生ではなく、自らキャリアを選択していく。そういう世界観が人生100年時代に必要不可欠だというのが開発の背景としてあります」。

ジョブ型雇用に直結する報酬水準の判断

こうして登場した本サービス、主なポイントは「日本の業種、職種ごとの報酬レンジを提供」「自社とマーケットの報酬レンジを比較可能」「取込んだデータは機械学習で自動分類」の3点だと、パーソルキャリア執行役員 柘植悠太氏は言います。

  • パーソルキャリア執行役員 柘植悠太氏

社会情勢が大きく変化し、自分の仕事内容が変化する、または職種自体が無くなる。そうした中で、働く側はやりがい・自分らしさを持ちながらキャリアを考えていかなければなりません。

また、企業もテクノロジーの進化やグローバル化を受けて、よりスピーディな経営を求められ、そして社員の能力をいかに引き出すか、担うミッションや本人のスキルをどう正当に評価しないと経営が成り立たなくなっている、と柘植氏は指摘するのです。

柘植氏「ジョブ型雇用に関して人事担当者の皆さまと話しますと、ジョブの適切な報酬水準を明確に示すことは難しいと、よく聞きました、今回のサービスでそれが可能になるのです」。

同サービスを利用すると、「報酬レンジグラフ」「散布図による分析」の機能を使うことができます。また、利用場面は、「優秀な人材の給与面での不満による離職を解消」「採用時の他社と比較して優位な給与額の提示」「定年再雇用の社員の給与額」などが考えられそうだと言います。

  • サラリーズの2つの機能 提供:パーソルキャリア・パーソル総合研究所

  • 人事制度検討での活用事例 縦軸は報酬で横軸は社員の在籍年度 提供:パーソルキャリア・パーソル総合研究所

本サービスは企業向けのもの。

しかし、サービスが一般化すれば「例えば中高生が自分のキャリアを考える際のどんな職種があり、報酬は幾らなのかなど指標となり、そのうえでどういう学びを深めるか、どこで学ぶかなどにつながり、日本全体が働くことについて前向きでありフェアになるでしょう」と抱負を語りつつ、渋谷氏が話を締めくくります。

自分の市場価値は働く上で大切なことの一つ。働く私たちにも、こうした情報が当たり前のように知れるようになるのは嬉しいですね。