生まれた時代や育ってきた環境は、人の消費行動や価値観に大きな影響を及ぼします。現代のマーケティングにおいて要となる消費者グループは、家族構成や性別などでくくるのではなく、世代ごとに分類する方法が主流になってきました。そのため、それぞれの世代の特徴や価値観をくわしく理解し、効果的なマーケティング施策を行うことがとても重要です。
本記事では、消費者グループの中でも社会の中核となってきた「ミレニアル世代」にフォーカス。この世代の特徴や価値観、消費行動について紹介します。
ミレニアル世代(ミレニアルズ)とは?
「ミレニアル世代」とは、もともとアメリカで生まれた言葉で、ミレニアム(日本語で「新千年紀」)つまり2000年代が到来した前後か、それ以後に社会に出て働きだす世代のことを指す言葉です。
ミレニアル世代の年齢層
「ミレニアル世代」とは具体的に、1981年~1996年の間に生まれた人々と定義され、2021年に25歳~40歳になる層のことを指します。
Y世代やZ世代との違い
「ミレニアル世代」と同じような世代をあらわす言葉として「Y世代」や「Z世代」という言葉があります。マーケティングやニュースなどで近年頻繁に登場するようになったこれらの世代についても知っておきましょう。
Y世代(ジェネレーションY)とは
「Y世代(ジェネレーションY)」とは、アメリカや日本などで1980年代初頭から1995年前後に生まれた人々のことを指しており、ミレニアル世代とまさに同じ年齢層のことを指します。
この世代が生まれたタイミングでは、まだインターネットが普及しておらず、幼少期から、インターネットの普及とともに育った世代です。IT革命を肌で感じながら育った、デジタルネイティブ最初の世代ともいえます。日本においてY世代の初期の人々は、バブルが崩壊した直後に生まれ、就活も氷河期と言われる中で育ってきたため、「就職氷河期世代」ともいわれています。
Z世代(ジェネレーションZ)とは
「Z世代」とは、1996年~2015年に生まれた人々のことを指し、生まれた時から既にデジタルが存在していた世代です。「ミレニアル世代」が「デジタルパイオニア」と呼ばれるのに対し、「Z世代」は「デジタルネイティブ」と呼ばれています。
2021年に6歳~25歳になる層で、世界全体では人口の約25%を占める新世代です。
「ミレニアル世代」「Y世代」「Z世代」の違い
「ミレニアル世代」と「Y世代」は同じ層のことを指しており、特徴や価値観はほぼ同じです。どの世代もITリテラシーが高く、本質を重視する点において、ライフスタイルや価値観などは似ています。
「Z世代」は、生まれた当初からデジタルに囲まれていたため、デジタルが及ぼす危害にも敏感でプライバシーを保護する意識が高いのが「ミレニアル世代」と「Y世代」との大きな違いです。
ミレニアル世代の特徴
「ミレニアル世代」の人々は、特有の価値観や考え方を持っています。ここでは「ミレニアル世代」の7つの特徴についてくわしく見ていきましょう。
プライベートを重視する
「ミレニアル世代」は、仕事よりもプライベートを重視します。昭和を生きた世代がストレスを抱えながら忙しく働いている様子を見て育ったので、「ミレニアル世代」は、出世や成功よりもプライベートを充実させるほうが幸せだと考える傾向にあります。
デジタルパイオニア
IT革命とともに育った「ミレニアル世代」は、デジタルパイオニアと呼ばれています。生まれた段階では、まだインターネットが普及していなかったことから、「Z世代」のデジタルネイティブとはまた違う立ち位置です。
しかし、「Z世代」と同様にITリテラシーが高く、テレビや映画をスマートフォンで見たり、インターネットを出会いの手段として使ったりすることに抵抗がない世代です。
シェアリングサービスを活用
「ミレニアル世代」の特徴として、必要のないものにはお金を使わないという性質があります。物欲や所有欲も特になく、知らない人と物や体験を共有することにも抵抗がないため、必要な時にだけ必要なものが使える便利なシェアリングサービスを好むこともその一例です。
副業などを通して収入源をいくつも作る
「ミレニアル世代」の特徴の4つ目に、副業などを通して収入源をいくつも作るという点があります。長い間の慣習だった年功序列や、終身雇用の衰退により、会社への帰属意識が低くなっている世代です。
そのため、安定して収入を得るためにさまざまなスキルを得て、個人の力でも生きていける準備をしています。
お金よりも信用(フォロワー)が欲しい
欲がないとされる「ミレニアル世代」は、物やサービスに対してあまりお金を使うことはなく、必要最低限のお金さえあればそれ以上は望んでいません。そのため、 お金よりもフォロワーや信用に価値を見出し、得たいと思っています。
ミニマリスト(必要以上のものを手に入れない)
「ミレニアル世代」には、ミニマリストが多くいます。ミニマリストとは、必要最低限の家庭用品だけで暮らしている人のことを指します。
必要最低限と一口に言っても、人によって生活に必要な量やものが全く異なるので、「ミニマリスト」の明確な定義はありませんが、大きく捉えると「シンプルな生き方をしている人のこと」のことです。
恋愛や結婚への執着がない
「ミレニアル世代」は、無欲なため恋愛や結婚への執着がありません。平穏や安定を好むので、恋愛での感情のアップダウンは平穏な日常を脅かす脅威やリスクと捉えています。結婚に関しても、自分の意思でコントロールできないことから、消極的な意見をもつ人が多いです。
ミレニアル世代の消費行動
「ミレニアル世代」には、それ以前の世代とは全く異なる特有の消費行動が見受けられます。
情報収集はインターネット検索よりSNS
情報を収集する際は、インターネット検索エンジンを使うという従来の常識を破り、真新しい常識を作り上げた「ミレニアル世代」。彼らが情報収集に使用するツールは、SNSです。
「ミレニアル世代」はインターネット検索エンジンが大企業の広告費によって動かされていることを知っています。つまり、検索をしても一番上に出てくる商品やサービスが、多くの人に「いいもの」と認められた結果として最上位表示されているのではなく「広告費をかけても企業が売り出したい商品」であることを理解しているということです。
そのため、インターネット検索エンジンへの信頼はなく、第三者の声が反映されやすいSNSを情報収集の手段として使っています。「ミレニアル世代」にとって、「いかに共感できるか」が購入や拡散という行動につながります。
オンラインでの買い物が主流
「ミレニアル世代」は、デジタルに精通しているだけでなく無駄を徹底的に省きたいという思考を持っているので、オンラインでの買い物が主流です。わざわざ現地に行って商品を実際に見て購入するというアナログなことはしません。
ブランドよりもユニークさを重視
物欲があまりない「ミレニアル世代」にとって、ブランドの価値は通用しません。名が知れていることよりも、他人と同じではないか、個性的であるかを重視します。
幼少期に流行った歌にもある通り「ナンバーワンよりオンリーワン」、みんながナンバーワンだ! ともてはやすものより、この世に一つしかないもの、独自性や個性があらわれているものに価値を見出しています。
「物(モノ)」より「体験(コト)」にお金を使う
「ミレニアル世代」は、「物(モノ)」より「体験(コト)」にお金を使うという特性があります。これは、単に物を買うよりも、体験を通して仲間と「共感」することのほうが満足感を得られるからです。
コストパフォーマンスを重視する
「ミレニアル世代」は、生き方、働き方、消費行動全てにおいてコストパフォーマンスを重視します。リーズナブルな価格で、実用性があるかという点に注目しますので、高級品にはあまり興味がありません。いくらいい商品でも高すぎる価格で売られていると購買意欲がなくなってしまいます。
ミレニアル世代に有効なマーケティング施策
独自の考え方や消費行動をもつ「ミレニアル世代」へのマーケティングは、従来のやり方では通用しません。ここでは、「ミレニアル世代」への理想的なアプローチを3つ紹介します。
SNSを通じて共感を得られるメッセージを発信する
「ミレニアル世代」へのマーケティングのキーワードになるのが、「共感」です。フィルターがかかっていない一般の人の生の声や本音を届け、価値がある商品だと思ってもらうことが必要です。
サービスや商品の質の高さをアピール
いくら広告費をかけても商品やサービスに質が伴っていなければ、「ミレニアル世代」には届きません。コストパフォーマンスを重視する「ミレニアル世代」だからこそ、商品やサービスの質を売りにする必要があります。
リアルに体験してもらうようなアプローチ
「ミレニアル世代」は、ものより体験にお金を使う傾向があります。リアルに体験してもらう場を作ることで興味を持ってもらうなど、どのような体験ができるのかを明確に示すことが必要です。
ミレニアル世代の特徴や価値観を理解し有効なマーケティングを!
従来の方法でマーケティングをやってもあまり効果が見られないのは、「ミレニアル世代」の価値観や消費行動が根本的に異なるからです。
「ミレニアル世代」の購買意欲を促すには、「体験」や「共感」できる商品やサービスであることはもちろん、商品そのものの良さ自体を高める必要があります。
自分とは異なる世代であっても、その価値観を正しく理解し、有効なマーケティングを行うことによって、ビジネスを成功に導けるでしょう。