クールビズやテレワークの浸透で、ビジネスパーソンの服装も多様化してはいるものの、スーツを着るなら、その下に身につけるのは「ワイシャツ」が多いでしょう。しかし「カッターシャツ」という言葉もよく見聞きします。両者の違いは一体何なのでしょうか。

本記事ではワイシャツとカッターシャツの違いはもちろん、それぞれの意味や由来、欧米での呼び方を解説します。おしゃれにスーツを着こなすために欠かせない、シャツの選び方やマナーについてもまとめました。

  • ワイシャツとカッターシャツの違い

    ワイシャツとカッターシャツの違いやそれぞれの意味、由来を紹介します

ワイシャツとカッターシャツの違いとは? 実は同じもの?

ワイシャツとカッターシャツは、基本的に同じシャツのことを指します。どちらの名称を使っても間違いではありません。ではなぜ呼び名が違うのでしょうか。そこには由来や地域性が関係しています。

この章では、ワイシャツとカッターシャツの由来や意味を詳しく見ていきましょう。

ワイシャツ(Yシャツ)とは? 意味や由来・語源

ワイシャツは、西欧文化が日本に続々ともたらされていた1870年ごろ、輸入雑貨店を営む石川清右衛門が英語で「白いシャツ」を意味する「White Shirt」を「ワイシャツ」と聞き間違えたことが由来とされています。

石川清右衛門はワイシャツの構造を学び、自ら生地を裁断してワイシャツを自作。その後、日本で初めてワイシャツ店を開店したことが、ワイシャツが日本の服飾文化に浸透するきっかけになりました。

ワイシャツは「Yシャツ」とも書きます。

カッターシャツとは? 意味や由来・語源

カッターシャツは、1918年に日本のスポーツメーカー・ミズノ(当時、洋服メーカー・美津濃)が開発、販売したシャツを指します。当時はテニスなどのスポーツやアウトドア用として売り出していました。

美津濃の創業者・水野利八が野球の試合を観戦し「勝った! 勝った!」と喜ぶ観客の声援からインスピレーションを受け、縁起の良いカッターシャツという名称に決定したといわれています。カッターシャツは商標名でもあります。

地域によって呼び方が違う

同じシャツでも、関東ではワイシャツと呼ばれますが、関西ではカッターシャツと呼ばれることもしばしば。これはカッターシャツの生みの親であるミズノの本社が、大阪にあることが関係していると考えられます。

また、関西や北陸の一部の地域では、大人がスーツの下に着るシャツをワイシャツ、学生が制服の下に着るシャツをカッターシャツと呼び分けることもあります。

  • ワイシャツとカッターシャツの違い

    ワイシャツとカッターシャツは同じシャツのことを指し、地域によって呼び方が異なります

ワイシャツのその他の呼び方

ここからは、ワイシャツ以外の呼び方も見ていきましょう。特に欧米では注意が必要です。

欧米では「白のシャツ」と勘違いされないよう、ドレスシャツを使う

欧米でシャツのことをワイシャツやカッターシャツと呼んでも通じません。特にワイシャツは「White Shirt」が語源であるように、英語では「白いシャツ」を指していると思われてしまいます。色や柄付きのシャツをワイシャツと呼んでも理解してもらえないので注意しましょう。

欧米ではシャツを総じて「ドレスシャツ(dress shirt)」と呼ぶため、ワイシャツもドレスシャツと呼ばれることがあります。色柄ものや、襟やカフスの形のデザイン性が高いシャツなどは、ドレスシャツと呼ぶのが無難です。

日本でもドレスシャツやメンズシャツと呼ぶことも

日本ではワイシャツやカッターシャツの名称で親しまれていますが、フォーマルでおしゃれな言葉の響きからドレスシャツと呼ばれることも増えました。また、若者向けにメンズシャツと呼ばれることも。

言葉の持つ印象から、さまざまな名称が生まれ定着してきています。

  • ワイシャツのその他の呼び方

    欧米ではワイシャツを含むシャツ全般をドレスシャツと呼びます

ワイシャツ(カッターシャツ)のおしゃれな着こなしのポイントとマナー

ビジネスやフォーマルなシーンで着る機会が多いワイシャツ(カッターシャツ)は、マナーに沿った着こなしをすれば相手にきちんとした印象を与えられます。この章では、ワイシャツ(カッターシャツ)を着こなすポイントをご紹介します。

選び方で大切なのは、自分の体に合ったサイズを選ぶこと

重要なのはきちんと採寸し、自分の体形にぴったりと合うサイズを選ぶことです。体のラインに合っていないと、だらしない印象を与えるだけでなく、動くうちにしわだらけになってしまいます。

襟型は用途に合わせて選ぶ

襟には20種類以上のデザインがありますが、一般的なワイシャツの襟はレギュラーカラー、ワイドカラー、ボタンダウンなどです。

  • レギュラーカラー:長さや開き具合が定番となる襟型で、ビジネスをはじめ多様なシーンで使える。さまざまなデザインのジャケット、ネクタイに合わせやすい

  • ワイドカラー:こちらも定番の襟型で首回りをスッキリ見せる。ビジネスのほかカジュアルな場面にもおすすめ

  • ボタンダウン:レギュラーカラーと同じ大きさで襟の先端をボタンで留める襟型。襟立ちがよいため、クールビズなどノーネクタイのスタイルにも合う。なお、フォーマルな場面ではふさわしくない

色柄は印象に合わせて選ぶ

ワイシャツの色は白、青、ピンクなどがあり、柄は無地やストライプが一般的です。ビジネスではさまざまなデザインのジャケット、ネクタイに合わせやすい白シャツを選んでおくと便利でしょう。

ワイシャツを着ることが多い人は、白シャツのほか色柄ものを何パターンかそろえておけば、日によって印象も変わります。若々しく清潔な印象にしたいときはブルー系、カジュアルダウンしたいときはピンク系などを選ぶとよいでしょう。

カフスボタンでアクセントを作る

個性を出したいときは、カフスボタンを取り入れてみましょう。着こなしのアクセントになり、パーティーなどの華やかなシーンでおしゃれを楽しめます。

なお、カフスボタンを使うなら、コンバーチブルカフス(ボタンホールが2つあるタイプ。片方にボタンが付いているため、ボタンとカフスボタンのどちらでも留められる)タイプのワイシャツが適しています。

肌着のデザインに気を付ける

肌着は第一ボタンを開けても見えないVネックがおすすめです。色はワイシャツから透けにくい白やライトグレー、ベージュなどを選ぶとよいでしょう。さらに、襟や袖口、裾に縫い目がなくフラットな状態で作られた肌着なら、シルエットに影響がでません。

仮に肌着なしでワイシャツを着用するなら、厚手のオックスフォード地を選べば肌が透けにくいでしょう。ワイシャツの上からベストを着用すれば、さらに安心です。

アイロンかけは洗濯表示をよく確認する

アイロンは生地によっては傷んでしまう可能性もあるので、洗濯表示タグを必ず確認します。綿や麻、ポリエステルなど素材に適した温度を設定しましょう。

形状安定加工のワイシャツはシワになりにくいですが、綿の配合が多いほど形状記憶の安定性が低くなります。そのため、形状安定加工のアイテムでも素材によってはアイロン掛けが必要です。

素材が麻の場合は、アイロンのスチームを当てるとシワが伸びやすくなります。

欧米ではシャツを下着扱いしている場合もある

ワイシャツは欧米では元々、肌着扱いされていたアイテムです。肌着扱いであったワイシャツを部屋着として着るようになり、やがてジャケットの下に着用。その後、普段着として使用するようになった歴史があります。

そのためジャケットを脱いでワイシャツ姿になるのは肌着を見せていることになり、フォーマルの場ではふさわしくない場合も。国によってマナーが異なるので気を付けましょう。

  • ワイシャツ(カッターシャツ)の着こなしとマナー

    これらのポイントに注意して、ワイシャツやカッターシャツを着こなしましょう

シャツを正しく選び、ビジネスやフォーマルシーンでスーツを着こなそう

ワイシャツとカッターシャツは、どちらも同じものを指します。ワイシャツは西欧文化が入って着た頃に「White Shirt(=白いシャツ)」を聞き間違えたことが由来で、カッターシャツはスポーツメーカー・ミズノの創業者が野球の試合で観客の「勝った!」という声からヒントを得て名付けられました。

デザインに違いはなく、関東ではワイシャツ、関西ではカッターシャツとして親しまれています。ただし、欧米ではワイシャツやカッターシャツと言っても通じないので注意しましょう。

今回ご紹介した着こなし・マナーのポイントも参考に、ビジネスパーソンとして恥ずかしくない着用を心掛けてください。