鳥肌とは、寒さなどで皮膚が羽をむしり取ったあとの鳥の皮のようにぶつぶつになる状態を指します。この鳥肌という単語が入った「鳥肌が立つ」という表現がありますが、この言葉が使われるシーンはさまざまです。

この記事では「鳥肌が立つ」の本来の意味や使い方について紹介します。また、近年みられる「鳥肌が立つ」の使い方や類語表現などもまとめたので参考にしてみてください。

  • 鳥肌が立つ本来の意味は寒さ

    「鳥肌が立つ」について解説

鳥肌が立つの意味

「鳥肌が立つ」という現象が起きる理由とあわせて、「鳥肌が立つ」の本来の意味を解説します。

鳥肌が立つ理由・原因

鳥肌が立っているときは、よく見ると毛穴の周辺がやや盛り上がっています。「鳥肌が立つ」「総毛立つ」という状態は、交感神経と副交感神経の二つからなる自律神経のはたらきが影響しているそうです。

例えば寒さを感じた場合、起きているときや緊張しているときに優位になる交感神経のはたらきで毛穴のそばにある「立毛筋」が収縮します。これにより毛穴が閉じて普段は寝ている手足の毛がピンと立ちあがるのです。

慣用表現としての「鳥肌が立つ」の本来の意味

鳥肌は、寒さから体を守るために起こると考えられています。このことから、鳥肌が立つは「寒さのあまり鳥肌が立つ」のように、寒さを感じた場合に使うのが適当でしょう。ちなみに、体毛が逆立つのは生理現象であり、ほ乳類全般に起こります。

・鳥肌が立つほど室温が低い。
・今日は風が強いので外に出たら鳥肌がたった。
・長時間プールに入っていて鳥肌が立った。

  • 鳥肌が立つ本来の意味は寒さ

    生理現象で鳥肌が立つのがもともとの意味です

鳥肌が立つのネガティブな使い方

鳥肌が立つはもともと寒気で生じた生理現象だけを表していましたが、徐々に恐怖や嫌悪感などのネガティブな意味でも使われるようになりました。ネガティブな状態を表す鳥肌が立つを使った言い回しを、例文とともに確認しましょう。

恐怖

「恐怖により鳥肌が立つ」という表現は正しい使い方です。恐ろしい気持ちや危険を感じた場合、怖い思いをした場合には自然と鳥肌が立つことがあります。

・ビルの屋上から下を見下ろしたときに鳥肌が立った。
・鳥肌の立つような恐ろしい映画を見た。
・怪談を聞いて鳥肌が立った。

嫌悪感・抵抗感

嫌だという気持ちや不快感で鳥肌が立つのも本来の使い方です。恐ろしいものや気味の悪いものを見聞きしたり想像したりした場合に、鳥肌が立つのはごく一般的な状況だといえます。

・自己嫌悪感で全身に鳥肌がたった。
・恥ずかしさを通り越して、鳥肌が立ってしまった。
・昆虫や両生類が苦手なので、ちょっと見ただけでも鳥肌が立ってしまう。

衝撃

良くない意味で驚いたりあきれたりする場合にも鳥肌が立つという表現が使われます。実際に体に鳥肌が立ってはいない場合もあり、比喩表現として使われることも考えられます。

・今思い出しても鳥肌が立つような迫力のあるメッセージだった。
・友人が病に倒れたと聞き、思わず鳥肌が立った。
・身の毛もよだつ仕打ちに驚き思わず鳥肌が立った。

緊張

危険が迫っている場合や失敗したことを責められる場合など緊張を強いられる状況でも鳥肌が立つことがあります。

・噴火が始まった様子を振り返り、住民たちは「思わず鳥肌が立った」と語った。
・背筋に冷たい感触があり、全身に鳥肌が立った。
・上司に責められることを想像しただけで鳥肌が立った。

上記以外にも、鳥肌が立つという表現は、「気持ち悪さ」「不安」「恥ずかしさ」「退屈」「絶望」「悔しさ」などを表す場合に使用可能です。

また、本当にそのようなことが起こるのかは定かではないものの、寒さや感情が動いた結果ではなく「スピリチュアルなお告げ」で鳥肌が立つと言われることもあります。

  • 鳥肌が立つのネガティブな使い方

    鳥肌が立つのネガティブな使い方例

鳥肌が立つのポジティブな使い方

最近では鳥肌が立つを、凄さのあまり「鳥肌が立ちっぱなし」や「ずっと鳥肌が立っていた」といった、興奮した状態全般を表す際に用いられる機会が増えています。

しかし、このようなポジティブな意味で使われる鳥肌が立つは誤用とされることが多いです。正式な表現に配慮して意見するような場面では、別の表現に言い換え、使わないでおく方が無難でしょう。

とはいえ、実際にいい意味で興奮したときや心が動かされたときに、鳥肌が立つこともあります。そのため、近年辞書によっては、鳥肌が立つ理由として「興奮」を挙げている場合も見られます。長い目で見ると、ポジティブな用途を誤用とする傾向が少なくなってくるかもしれません。

ここでは、ポジティブな意味合いで鳥肌が立つが使われる例をご紹介します。

すばらしさ

スポーツ観戦で応援するチームが得点を決めたときや、コンサートですばらしい演奏を聞いたときなど、いい意味で驚いたり衝撃を感じたりした場合に、全身が沸き立つような感覚を覚えることがあります。

実際に鳥肌が立つ場合もありますし、「すばらしい!」という気持ちを表現する比喩的な言い方として鳥肌が立つを使うこともあります。

・サッカー選手のゴールが決まって、身体に鳥肌が立つほどの興奮を感じた。
・すばらしい演奏を聞いて鳥肌が立った。
・ドキュメンタリー映画を見て、鳥肌が立つほどの感動を覚えた。

達成感

努力を積み重ねてきたことの結果がようやく出たとき、達成感や感慨深さを感じた場合に感動から鳥肌が立つことがあります。

・観客席からの拍手を聞いたとたん、全身に鳥肌が立った。
・合格を知り、身体に鳥肌が立つ程の興奮を感じた。
・長年の目標を達成して鳥肌が立った。

喜び

興奮したり気持ちが奮い立ったりして快感を覚えた場合などにも、鳥肌が立つの表現が使われます。

・選手宣誓を聞きながら鳥肌が立ってしまった。
・2連覇を達成して、喜びのあまり鳥肌が立った。
・興奮のあまり思わず鳥肌が立った。

  • 鳥肌が立つのポジティブな使い方

    正式な場では、いい意味に対して「鳥肌が立つ」を使わないようにしましょう

鳥肌が立つの類語表現

鳥肌が立つを他の言い方で表すと何と言うのか、類語を紹介します。

恐怖で鳥肌が立つ場合

恐怖で鳥肌が立つ場合は、「震えあがる」「冷や汗が出る」「身震いする」など怯えて身がすくむような表現に言い換えて使うことが可能です。

・その話を聞き思わず震えあがった。
・緊張のあまり冷や汗が出て止まらない。
・ぞっとするような話を聞き思わず身震いした。

嫌悪感・抵抗感で鳥肌が立つ場合

気持ちが悪くて鳥肌が立つ場合は、「悪寒がする」「背筋が凍る」「血の気が引く」といった表現を代わりに使うことができます。

・嫌いなものを思い浮かべると悪寒が走ってしまう。
・背筋が凍るような衝撃を感じた。
・思わず血の気が引いた。

誤用を回避するための鳥肌が立つの言い換え表現

前述したように、近年はいい意味で興奮したときや心が動かされたときを表現する意味で「鳥肌が立つ」が使われることも増えています。しかし、「鳥肌が立つ」の本来の意味は恐怖や嫌悪感などのネガティブな意味なため、ポジティブな意味で使われる場合は誤用とされることも多いです。

ここでは、誤用を回避するための言い換え表現をご紹介します。

「鳥肌が立つほどの感動」の言い換え

激しく感情を揺さぶられた際などに、その感動を伝えるために「鳥肌が立つほどの感動」を使うことはあるでしょう。

実際に鳥肌が立つこともありますが、正式な表現に配慮して意見するような場面では「言葉を失うほどの感動」「激しく胸を打たれる」などに言い換えましょう。

「喜びのあまり鳥肌が立った」の言い換え

喜びを表現する意味で使う「鳥肌が立つ」は、「喜びに打ち震える」「喜びを噛みしめる」などに言い換えられます。

  • 鳥肌が立つの類語表現

    鳥肌が立つの類語表現は?

鳥肌が立つの英語表現

英語の場合、鳥肌は「goose bumps」と表現します。直訳すると「ガチョウの表面にある凸凹しているところ」という意味になります。「chicken skin(ニワトリの皮)」では通じないため注意が必要です。

・I’ve got goose bumps.
鳥肌が立った。
・I got goose bumps from the cold.
寒くて鳥肌が立ちました。
・I was so impressed that I had goose bumps.
鳥肌が立つほど感動しました。

鳥肌が立つは寒さやネガティブな意味を表す言葉

本来は寒さの刺激で体毛が立ちあがる生理現象を鳥肌がたつと表現していましたが、そこから恐怖や嫌悪、衝撃などネガティブな意味で使われるのが正式とされるようになりました。

また、近年では鳥肌が立つをいい意味での驚きや感動、興奮などにも使われるようになってきています。しかし、人によっては誤用と感じる場合があるため正式な場では別の表現を使う方がいいでしょう。