「五代のかっこいいと感じたシーンは?」という質問には「全部」と答え、「こういう風に物事を考えて行動できたらかっこいいなと率直に思う。自分が普段言っていることや、やっていることは、五代さんに教えてもらっていることをそのまま現代に移して実行しているのかなと錯覚するくらい、偉大な知恵と行動力を持った先輩だなと改めて思っているので。毎回印象的なシーンになっていて、ギュッと密度の濃いやりとりがあります」と、すべてのシーンで五代の偉大さを感じているようだ。

その中でもやはり初登場シーンが特に印象深く、本作における五代をつかむ上で重要なシーンになったという。「囲碁を打っているんですけど、こういう立ち振る舞いでいいのか、『本当にいいんですか?』と聞いてしまったくらい。その時点で少し朝ドラに引きずられていたのかもしれないですが、そこで全部いい意味で吹っ飛ばされて、きれいにスタートが切れた。心地よかったです」と晴れやかな表情で振り返った。

もちろん、変わらない五代の魅力もある。「先見性を持って、知的に物事を着実に進めていくという意味での五代さんは変わらない。武士の五代さんから文明開化していく、近代化していく変化など、すべてにおいて五代さんがずっとワイルドというわけではないですが、その変化のダイナミックさ、振れ幅の広さが柔軟で素敵だなと思いました」と述べ、「自分も願わくば、そうありたいと思いました」と憧れを口に。

そして、大森氏の脚本について「今回も五代友厚というキャラクターの魅力や彼の思想、成し遂げた偉業を現代の人たちに伝える上でいろんな仕掛けがあり、一つ一つのセリフが選び抜かれている。いち人間として生きていく、この仕事をしていく上での指針となる言葉がたくさん散りばめられている」と魅力を述べ、「大森さんの脚本を通して、五代さんの後世に残した知恵や思いを、思い切り全身で受け止めています」と笑顔で話した。

特に心に刺さった五代のセリフは「捨小就大(しゃしょうしゅうだい)」とのこと。「正しいなと思いました。仕事は決められた条件の中でゴールを達成するということで、優先順位が自然と出てくる。どんな業種であっても基本的に一緒で、小を捨てて大を求めていくことが必要になる。現実を真正面から受け止めることによって着実に未来に向かって進んでいくということを改めて、大森さんが書かれたと五代さんの言葉でハッとさせられました。あのセリフは今後を暗示するような素晴らしい一言だったと思います」と語った。

時代の変化を読む先見性を持ち、ワイルドさもある『青天を衝け』の五代友厚。まずは、ディーンにとっても本作における五代という人物をつかむ上で重要なシーンになったという初登場シーンに注目したい。

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