JR九州は昨年の「令和2年7月豪雨」で被災した肥薩線沿線の応援企画第2弾として、5月1日から鹿児島本線で「SL人吉」の運行を開始した。上り列車は熊本駅10時50分発・鳥栖駅13時24分着で運転され、各駅でイベント等も実施された。
同社は昨年夏から肥薩線沿線の応援企画を実施しており、鹿児島本線で「かわせみ やませみ」と「いさぶろう・しんぺい」を連結した4両編成の臨時列車を博多駅から門司港駅まで1往復運転。応援企画の第2弾となる「SL人吉」は、蒸気機関車8620形58654号機と客車3両、ディーゼル機関車DE10形を連結した編成で、上り列車は蒸気機関車を先頭に熊本駅から鳥栖駅まで、下り列車はディーゼル機関車を先頭(蒸気機関車は最後部に連結)に鳥栖駅から熊本駅まで走る。
運行初日の5月1日、熊本駅で出発式を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない規模を縮小。出発式は中止となり、熊本駅長による出発合図、駅員らによる列車の見送りのみ実施された。「SL人吉」は10時26分頃に入線し、熊本駅6番のりばへ。5番のりばで発車を待つ特急「A列車で行こう」と並んだ。
昨年11月、8620形に「無限」の型式プレートを取り付けた「SL鬼滅の刃」が運行開始した際、熊本駅での見学者は約700人に及び、ホームは非常に混雑した。今回は「SL鬼滅の刃」のときほどの混雑は見られず、乗客や見学者らも比較的余裕を持って記念撮影など行っていた様子。この日、熊本駅で「SL人吉」の見学や見送りを行った人数は約150人だったという。
熊本駅を発車した「SL人吉」は、途中の玉名駅、大牟田駅、久留米駅に停車。ホームにて横断幕と手旗で歓迎するなどのおもてなしが行われたという。終点の鳥栖駅でも歓迎セレモニーが行われ、JR九州取締役常務執行役員鉄道事業本部長の福永嘉之氏、鳥栖市長の橋本康志氏らが出席。福永本部長から橋本市長へ、「SL人吉」のサボ(行先票)を模した記念品が贈呈された。
福永氏は挨拶の中で、「SL人吉」が鳥栖駅発着となった理由として、鳥栖が国鉄時代、全国で12カ所認定された「鉄道の町」のひとつだったことを挙げ、「鳥栖は全国でも屈指の規模だったそうです。駅の東側に機関区や操車場など現業機関が集まり、多くの鉄道員が住んでいました。『SL人吉』の終着駅・出発駅として、まさにふさわしいのではないかと思います」と説明。「『SL人吉』に乗ってSLの鼓動を感じ、多くの皆さんに元気を届けたい。肥薩線沿線の方々の1日も早い復興を祈念しています」と述べた。
歓迎セレモニーでは、サガン鳥栖応援ガールズユニット「サガンティーナ」をはじめ、PRキャラクター「とっとちゃん」「ハルちゃん」「ウィントス」も登場。「ようこそ鳥栖へ」の横断幕を掲げ、4番のりばに到着する「SL人吉」を出迎えた。鳥栖駅長と「SL人吉」の機関士へ、感謝の気持ちを込めた花束の贈呈も行われた。
下り「SL人吉」は鳥栖駅を15時27分に発車し、熊本駅に17時53分に到着予定。なお、車内で予定されていた肥薩線沿線自治体による観光PR等も、感染拡大の影響で中止となった。「SL人吉」はゴールデンウィーク期間中の5月5日まで毎日運転した後、5月8日から6月27日まで土日に運転予定。5月9日まで上りはほぼ満席だが、下りは若干余裕があり、ゴールデンウィークが明けた後も予約可能とのこと。7月以降の運転については「計画中」とされ、決まり次第、改めて案内される。