五月病の原因や症状は?

年度が替わり、学校や職場などの生活環境が変わって間もない頃、目立った病気などがあるわけでもないのに「なんだか調子が良くない」と感じてしまう。その状況がゴールデンウィークを経ても改善しない――。こうした症状は、一般的に「五月病」と呼ばれます。

産業医として通算1万人以上の働く人と面談をしてきた経験から、五月病の原因の多くは、新生活のスタートで生じがちな「問題」――過去の友人・知人たちからの隔離と、新生活での高すぎる期待――が生むストレスです。このストレスが大き過ぎると、メンタルヘルス不調にまで拗らせてしまう可能性があるのです。

ストレスを解消する人間関係とストレスを生む人間関係

就職、異動や転勤などで新しい生活が始まると、それまでの友人や同僚たちとの関係が疎遠になることがあります。

仕事が忙しすぎて、結果としてこれまでの友人や同僚たちと疎遠になる人たちもいます。一方、新生活で知り合ったばかりの同僚や知人たちと、いきなり腹を割ったホンネの会話をするのは難しいことです。たわいもない話をしていても、緊張感が残っていたり、本心を隠した「腹の探り合い」になってしまったりします。

こんな時に、気心の知れた友人や以前の同僚と話すのは心理的に良い効果が期待できるのですが、コロナ禍では、いわゆる飲み会は激減しています。その結果、ちょっとした不安やストレス、悩みが、愚痴ったり解消できずに溜まっていき、やっかいなことになってしまうのです。不安やストレスや悩みは、溜まるほど解消が難しくなり、メンタルヘルス不調の原因になってしまいます。

高過ぎる期待はストレスに

五月病の原因となるストレスを生むもう一つの原因として挙げた「新生活での高すぎる期待」とは、日頃から学びなどの意識を高くもつ“ポジティブ動機からの”自分への期待だけでなく、コロナ禍で先々が見えない漠然とした不安から逃れたい気持ちから生じる"ネガティブ動機からの"自分への期待もあります。

新生活が始まると、多くの人は気持ちを新たにし、自分自身に期待をかけます。コロナ禍では先々の不安から何か資格取得や勉強をしようと思います。そして、新しく外国語学習やお稽古事を始めてみたり、他人より優秀でありたいと自分にハッパをかけてみたりします。それが上手くいかないと、「自分の頑張りが足りないからだ。もっと頑張らなければいけない」とか、「自分はダメな人間だ。この先どうすればいいのだろう」と考えてしまう人もいます。

このように、自分への期待が高すぎるために、ストレスが生じてしまいさらに自分を追い詰めて不調になる人たちもいるのです。

五月病とGWとの関係

そして、五月病のもう1つの原因は、GW明けから、海の日(今年は7/22)まで、祝日のない期間が約2カ月間続くこともあげられると思います。この祝日のない期間が一番長い間に、体調不良をリセットできることなく、悪化させてしまうのでしょう。

2019年のGWは過去最長の10連休でした。しかし、その年に五月病が増減したとは聞きません。おそらく、連休の長さと五月病は関係はないのでしょう。それよりも、連休中や連休後の過ごし方、が大切なのだと思われます。

五月病にならないための連休の過ごし方、注意点

連休中、ずっと思いっきりリフレッシュできる人は、それがベストと思います。連休明けはさほど忙しくないからと、連休明けに連休中の遊び疲れた体調を回復させようと思っている人は、五月病にはならないでしょう。

五月病にならないために、GWの間に頑張ってxxする、と目標をたてるのはやめましょう。

特に、4月に立てた勉強などの目標や日課が、4月は忙しくてこなせなかった人ほど、GWの間に挽回したり、5月分の予習をしようと考えがちです。根詰めてやるよりも、まずはリセットリフレッシュする時間も大切です。リフレッシュできた後で、頑張ることは否定しませんが、まずは、リフレッシュ、リセットを意識してください。

連休中に気持ちが緩みすぎると、元どおりに働けなくなるのではと心配な人は、連休最後の数日は早寝早起き等、会社のある時と同じ時間帯に寝たり起きたりすればいいと思います。

産業医としておすすめなのは、連休が明けるまでに、次の休みをいつ取るかを決めておくことです。可能であれば、7/22の海の日よりも手前で1〜2日取りましょう。金曜日や月曜日にとって、2泊3日の長めの週末を過ごしてみてはいかがでしょうか。そしてとりあえず、そのお休みの日を目指して、連休明けは働くことです。

コロナ禍2年目だからこそ

旅行に行くことがはばかれるコロナ禍では、働いている時は家で在宅勤務、祝日や休暇の時も旅行や人混みに行けず家で過ごす。結局気分転換にならないとか、だから休みを取らず働き続けるという声をコロナ禍の現在、よく聞きます。

多くの人が気分転換として大好きな旅行。これが自由にできないことはとても残念なことです。しかし、コロナ禍は2年目です。昨年と同じように、旅行に行けないから休みを取らない、気分転換ができないと言っていると、結局は自分のためになりません。場合によってはメンタル不調になり自分が損してしまうだけです。

コロナ禍でも五月病、メンタルヘルス不調、不安やストレスなどに上手に対処している人は、旅行に行けずとも、コロナ禍でも持続可能な、気分転換となる趣味を持っています。もともと持っていた人もいますし、新たに新常態にあった趣味を作った人もいます。

今年は、コロナ禍のため、休暇中に旅行で気分転換は行きにくいかもしれません。しかし、一昨年からの働き方改革で年間の有給休暇5日間の取得が多くの会社では義務となりました。また、コロナ禍で普及したテレワークやワーケーションを上手に活用すれば、きっと上手な気分転換は見つかるはずです。ぜひ、新しい趣味や気分転換を見つけるきっかけのGWにしてみてください。