堅い業界である大手銀行でもビジネスカジュアルが導入され、「ノータイ・ノーシャツ」スタイルも当たり前に見かけるようになってきました。

ビジネスカジュアルが多様化する今、どのように着こなせばいいか分からないという人も多いのではないでしょうか。実は、知らないと恥をかくことも——。

そこで今回、書籍『ビジネスの装いルール完全ブック』(世界文化社)の編集者で、先日まで雑誌『MEN'S EX』の副編集長を務めていた内田さやかさんに「ビジネスカジュアル」を着こなすポイントについて、伺いました。

  • ビジネスカジュアルはどこまで許される?

    ビジネスカジュアルはどこまで許される?

「カジュアルダウン」すれば言いわけではない

「ビジネスカジュアル」と聞くと、どんなスタイルを想像されますか? 内田さんによると、「『ビジネスカジュアル』とは、必要に応じて働きやすいようにリラックスした装いで仕事ができるためのもの。必ずしもカジュアルダウン=着崩すことが目的のスタイルではないと考えます」と言います。

外勤・内勤などのビジネスシーンに合わせて求められる装いは違うので、当然なのかもしれません。

「ご自分のお仕事がどんな業種で、回りはどんな装いで仕事をされているのか、仕事のTPOを適切に把握し、意識することが、ビジネスカジュアルにおいても重要です。自分のオフィスではOKのスタイルも、取引先に行ったら"その服装はカジュアルすぎる""チャラチャラしていそうな人だ"などと、捉える相手もいるかもしれません。装いで個性を表すことはとてもいいことですが、仕事相手に不快感や不信感を与える着崩しになってしまっては意味がありません」。

「ビジネスカジュアル」で押さえるべきポイントとは?

では、「ビジネスカジュアル」で押さえておくべきポイントとはいったい何でしょうか?

  • MEN'S EX副編集長の内田さやかさん

    MEN'S EX副編集長の内田さやかさん

「一言でいえば、見た目で『だらしない』と思わせないことです。もちろん、パンツの裾がヨレヨレにないっていないなどの『ルーズさがない』のは大前提。その上で、気を付けるべきは『サイズ感』と『シルエット』です」。

さらに、内田さんは具体的な例で補足してくれました。

「例えば、デニムパンツで通勤できるとなった時に、『動きやすいから』『座り心地がいいから』といって、ダボダボのシルエットのデニムパンツを着て出社したらどうでしょうか? いくら仕事に集中できるとアピールしても、周囲には、むしろやる気のない人として見られるのではないでしょうか。

一方、細身過ぎるシルエットも要注意です。ピタピタ過ぎてシワが寄るほどの細さでは、相手に悪い意味での軽さを印象付けることも。特に30代以降の方は、本来あるはずの、年齢に応じた風格が損なわれてしまわないよう、こうした装いには注意すべきでしょう。パンツのほかTシャツなどもそうですが、体のラインが出すぎる細さは、相手に不快感を与える可能性があるので、少しゆとりがあるシルエットが望ましいでしょう」。

なお色使いについては、「ここ数年ビジネスカジュアルはだいぶ浸透し、自由度は増しているように見えますが、安心して上品さや大人っぽさを装いたいなら、まずはスーツ同様にネイビーやグレー、ブラウン、黒、白などのベーシックカラーで着こなすといいでしょう。慣れてきたら差し色や柄使いで装いを愉しむのもよいと思います」と、内田さん。

小物で押さえるべきは「靴」

ビジネスカジュアルでもう1つ気になるのは、靴や時計といった小物のコーディネート。

「小物の中で配慮すべきアイテムは『靴』。接する相手の目に留まりやすく、装うマナーを知っているかどうかが一番表れるからだ」と、言います。

「ビジネスカジュアルでオススメは大きく分けて2ジャンルです。1つはローファーや外羽根Uチップなどカジュアルに履ける革靴です。リラックス感のある服装でも足元が引き締まってスマートに見えます。

もう1つはスニーカーです。スニーカー通勤もだいぶ浸透してきましたね。ボリューム感があり過ぎたり、あまりスポーティすぎたりするものより、シンプルで白や黒、グレー、ネイビーなどシックなカラーリングのものが上品に見えてよいと思います。昨今増えているレザースニーカーもお勧めです」。

  • 『ビジネスの装いルール完全ブック』より「靴のドレス度」 提供:世界文化社

    『ビジネスの装いルール完全ブック』より「靴のドレス度」 提供:世界文化社

やはり小物においても、見た目の「きちんと感」が重要だということでしょう。

「時計についても、自分が好きなものではなく、自分の年齢などに見合ったもの、悪目立ちしないものを選ぶのがポイントです」。

オーダーメイドにトライしてみる

「ビジネスカジュアル」の押さえるべきポイントはつかめたが、自分の装いにどのように取り入れていけばいいのか具体的に知りたい時にはどうすればいいのでしょうか。

内田さんに質問してみると、「3つの方法があります」とアドバイスしてくれました。

「1つ目は、本書で簡単にできる"上品さやきちんと感を装える"ポイントをご紹介しておりますので、まずは取り入れてみるところから始めてみて、トライ&エラーでブラッシュアップしていくのはいかがでしょうか。もっと具体的なアドバイスが欲しい時は、オーダーメイドのお店で1着仕立ててみることです。

ビジネススーツだけでなく、ジャケットやカジュアルスーツも作れますし、オーダーメイドなので、自分のジャストフサイズが手に入ります。少し値が張りますが、長く使えるものなので、トータルで考えると、高い買い物にはならないと思います。店員さんと相談しながら作れるので、装いのマナーも学べます。

3つ目は、素敵でスマートに見える社長や上司などの装いを参考にするのもよいかもしれません。高い社会性を身に付けている方々なので、今の仕事で求められる装い(振る舞いも含めて)のお手本になると思います」。

  • 書籍を読むと、「装いのポイント」を学べますと話す内田さん

    書籍を読むと、「装いのポイント」を学べますと話す内田さん

装いは仕事道具の1つ

「なかなか人に会えない時代からこそ、1回1回の出会いを大切にしてほしい」という内田さん。

「以前取材した時に、ある経営者が『装い(服装)も仕事道具の1つ』と仰っていました。見た目は、想像以上に、その人の第一印象を決めてしまいます。昔ほど簡単に人と会えなくなりましたが、だからこそ、人と会う時にはスイッチを入れるためにも、装いを楽しんでほしいと思っています」。

コロナ禍により、会って話をする重みが増してきたと思います。だからこそ、相手に対する敬意や配慮をした「装い」に気を付けたいものです。

取材協力:内田さやか

2003年、株式会社世界文化社入社。雑誌『家庭画報』、『MISS』の編集を経て2014年に『MEN'S EX』に異動。2018年より同誌副編集長に。今年4月1日より、株式会社Beginコンテンツビジネス部配属。企業向けの装いセミナー等を企画・運営している。