かつて消費の中心として、デジタルネイティブのミレニアル世代が注目されていました。情報収集が得意でインターネットを使いこなす世代です。

しかし近年では、それに続く若年層のZ世代が注目されています。幼少期からSNSやスマホを使いこなす世代で、マーケティングにおいてもその消費行動を注目しています。

今回はミレニアル世代とZ世代について、それぞれどのような特徴があるのか、違いについて分かりやすく解説します。

  • ミレニアル世代とZ世代の違いとは?

ビジネスで使われる「世代」の概要

まずミレニアル世代以前の世代も含め、出生時期や大まかな傾向について表にまとめてみました。

出生時期の目安 親しみのある製品 大まかな傾向
ベビーブーム世代 1946年~1964年 テレビ 仕事重視、キャリア優先
X世代 1965年~1980年 パソコン・携帯電話 独立心旺盛、ワークライフバランス重視
ミレニアル世代(Y世代) 1981年~1996年 スマートフォン・タブレット 多様性に富む、情報技術に詳しい
Z世代 1997年~2010年代年 スマートフォン・ウェアラブル端末 ソーシャルネイティブ、自己発信が得意

※2010年序盤からZ世代の後の「α世代」が考案されていますが、まだ流動的で厳密に定義されていません

ベビーブーム世代は現在56歳~74歳で、テレビに親しみがあるのが特徴です。X世代は現在40歳~55歳で、パソコンや携帯電話をよく利用してきた世代です。

そして、X世代の次に位置づけられるのがミレニアル世代で、別名Y世代とも呼ばれます。さらにその次が現在24歳以下のZ世代です。

アメリカ生まれの概念であることに注意

これら4つの世代は、いずれもアメリカで生まれた概念です。よってアメリカの文化・政治・経済事情が影響している面もあります。

テレビ・パソコン・スマホといったデバイスやメディアの利用状況も重視するため、これらが同様に普及している日本など、他国の同世代にも当てはまる部分はあります。しかしすべてが当てはまるとは考えないほうが良いでしょう。

これからミレニアル世代・Z世代の特徴について細かく見ていきますが、日本人もすべて同様とは限らないことを頭に入れておいてください。

日本人にも当てはめて考えるには、出生年代をずらしたり、日本特有の事情を考慮したりすることも必要です。

ミレニアル世代の特徴や消費行動

「ミレニアル」とは千年紀の意味で、2000年を幼少期・思春期で過ごした世代です。主に以下の特徴があります。

・デジタルネイティブ
・デバイスの操作が上手
・社会問題への関心が高い
・多様性を認める
・楽観的

10代の頃からスマートフォンなどのデジタルデバイスを利用し始め、現在も日ごろからアクティブに使いこなす世代です。ネットでの情報収集も得意で、デジタルネイティブと言えます。

学生や新社会人の頃にアメリカ同時多発テロ事件やイラク戦争などを目の当たりにしたことから、社会問題への関心が強い傾向もあります。近年環境問題がクローズアップされることもありますが、ミレニアル世代が多く声を上げている現象も見られます。

Z世代の特徴や消費行動

1997年以降に生まれたZ世代は、主に以下のような特徴があります。

・ソーシャルネイティブ
・自己発信が上手
・多様性を認める
・経済面では保守的
・実用性を重視

物心ついた頃からすでにスマートフォンに親しんでおり、SNSも子供の頃から利用経験があります。そのためSNSでの自己発信に抵抗がなく、情報収集もSNSが多いです。

ミレニアル世代と同様、多様性を認める価値観がある一方で、経済面では保守的な傾向もあります。消費行動において、Z世代はブランドよりも実用性を重視する傾向です。

ミレニアル世代とZ世代の違い3つ

似たようなイメージを持たれることもある2つの世代ですが、以下のような違いがあります。

1. ミレニアル世代は顧客体験(CX)、Z世代は実用性を重視する傾向

ミレニアル世代は、商品やサービスを購入・利用する際に、顧客体験(CX=カスタマー・エクスペリエンス)を重視する傾向があります。「モノ消費」よりも「コト消費」を重視するミレニアル世代の特徴とされています。

これに対してZ世代については、商品・サービスの実用性を重視する傾向が見られます。ミレニアル世代よりも若い時期から不況や就職難に直面していること、収入が少ないことが影響している可能性があります。

2. ミレニアル世代よりもZ世代のほうがさらに所有欲は少ない

ミレニアル世代はややミニマル嗜好があり、ミニマリストの生活にも抵抗がないとされています。Z世代は経済面で余裕のない人も多く、ミレニアル世代よりさらに消費に慎重な傾向です。よってモノを所有する欲は他の世代よりも少ないと言われています。

その傾向を具体的に示す事例が、定額制サービス(サブスク)の利用です。音楽や映像の配信に始まり、今では飲食店にまでサブスクの利用が広がっていますが、その中心的なユーザーは若年層のZ世代とされています。

マイボイスの調査によると、10代・20代男性で何らかのサブクスを利用している人は4割弱、10代・20代女性では3割弱との結果が出ています。

たとえば音楽配信のサブスクは原則としてCDなどのモノを手元に残すことはできません。その代わりに毎月1,000円前後の低料金で利用でき、数千万にも及ぶ曲から、聴きたい曲を選べます。

モノを所有することよりも、さまざまな音楽を手軽に聴ける実用性のほうがZ世代には重要なのではないでしょうか。

3. ミレニアル世代は楽観主義、Z世代はより現実主義

ミレニアル世代の若い頃は、好景気の時期でした。よってどちらかというと楽観的な傾向があるとされています。ミレニアル世代は他の世代に比べて賞賛されて育った傾向があるとの声もあり、自己肯定感が得られやすい世代ではないかと考えられます。

対してZ世代は現実主義的な傾向が強いです。Z世代の親が、2008年のリーマンショック、直近では2020年の新型コロナウイルス大流行により、財政的に困難な状況に直面したのを子どもながらに目撃しています。よってミレニアル世代よりも経済面で慎重であり、雇用の安定性を重視する傾向です。

日本のZ世代も2011年の東日本大震災など、社会的な不安定さを目の当たりにして、アメリカのZ世代と同様、安定性を重視する傾向があると考えられます。

第一生命保険が小中高生を対象に実施する「将来なりたい職業」の調査においては、2020年は会社員がトップでした。コロナ禍での親のリモートワークなど、Z世代の現実主義的な面を表していると考えられます。

ミレニアル世代とZ世代それぞれに対するアプローチ方法

ここからマーケティングにおいて、ミレニアル世代とZ世代それぞれにいかにアプローチするかについて考えてみましょう。

ミレニアル世代にはビジョンやストーリーが大切

ミレニアル世代は情報収集が得意で、複数の情報源を比較するのも当たり前です。ただし紙の新聞を購読する人は比較的少ないため、ネットの情報がメインです。

また、社会問題への関心が強いこと、自分が共感できるものを求める傾向があるといった特徴も。

よってミレニアル世代へアプローチするには、商品やサービスが持つビジョン・ストーリーが大切になります。WEBサイトやSNSでいかに魅力的に伝えるかが重要でしょう。

Z世代に対しては映像コンテンツの活用が鍵

Z世代はYouTubeやインスタグラム、TikTokなどに親しみがあり、音声や映像のコンテンツを好む傾向があります。よってテキストメッセージよりも動画コンテンツの活用が鍵となるでしょう。

たとえばアメリカのクッキーブランドの「オレオ」はZ世代を意識したプロモーション戦略を実施。SNSのインフルエンサーを起用したデジタルコンテンツを展開しました。その結果、オレオは現在Z世代に人気のクッキーとなったそうです。

その一方で製品やサービス開発では、Z世代の持つ経済面での慎重さ、現在よりも将来志向という面も参考になるのではないでしょうか。