オンラインイベント「しまね館の縁結び」

しまね館が、知られざる島根の魅力を全4回にわたってナビゲートするオンラインイベント「しまね館の縁結び」。最後は、旭日酒造の寺田栄里子さん、渡邊水産の岩田響子さんがゲストスピーカーとして登場しました。

  • 右上=渡邊水産の岩田響子さん、右下=旭日酒造の寺田栄里子さん、左上=司会者、左下=しまね館スタッフ

両者とも自然に恵まれた地で、風土と素材を活かしたモノづくりをしています。寺田さんは11代目、岩田さんは3代目と、この地で名の知られた老舗の暖簾を守りながらも、時代に合った独自性を打ち出し注目を集めているようです。

旭日酒造はコイン式自動試飲機が楽しみ

旭日酒造は、JR西日本山陰本線・一畑電車北松江線の出雲市駅からほど近い「サンロードなかまち」というアーケード商店街の中にある酒蔵で、出雲大社に奉納するお酒も造っています。

寺田栄里子さんはここに生まれ育ち、一度離れた後に出雲に戻り、20年ほど酒造りに関わってきました。

  • 夫婦で酒造りに取り組む旭日酒造の寺田栄里子さん

最近話題を集めているのは、自動試飲機。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、店頭での試飲を見合わせていましたが、非接触型の試飲が可能となりました。100円でコイン6枚を受け取り、全6種類のお酒を試飲できるというお得な内容。お酒の銘柄は定期的に変わっていきます。

  • 旭日酒造店頭に設置されたコイン式の試飲機

オンラインイベントでは、なかなか見られない酒仕込みの様子を見せてくれました。

  • 日本酒になる前の発酵中の状態はこんな感じ

「発酵の主役は酵母という微生物です。この酵母が増殖し、泡がモコモコ立っているところです。毎晩毎晩、発酵の進み具合を観察するのを楽しみにしています」と寺田さん。

渡邊水産は「美人干物」で勝負

渡邊水産は、昭和40年創業。刺身で食べられるほど新鮮な魚を、昔ながらの製法で干物にし、販売しています。余計なものを使わずに仕上げるため、本来の味と磯の香りが楽しめると好評です。

3代目の岩田響子さんは、「美人干物」と名づけ、生魚と干物の中間ほどの絶妙な干し具合の干物を開発。山陰沖で獲れた新鮮な旬の魚を、高知県室戸沖の海洋深層水100%で作る塩を使って干物に仕立てています。

「干物というと、古臭い、ダサい、しょっぱいなどマイナスのイメージがあります。ですが、実は、下処理が終わっている、下味がついているなど、生魚や切り身にはない利点もあり、日常的に使いやすいんですよ。もちろん、そのまま焼いただけでもメインのおかずになりますし、時間があるときはアレンジ料理も楽しいです。魚に、『塩、乾燥、火』という要素が加わると、だしが出る煮干しのような食材へと変わります。干物もその一つです。干物の焼いたアラは、煮出すとおいしいだしが取れますよ」。

オンラインイベントでは、干物を使ったアレンジ料理をテキパキと作り、紹介してくれました。

  • 手際よくグラタンなどのアレンジ料理を披露する岩田響子さん

垣根を超えて商店街から地域活性

寺田さんや岩田さんは、近隣の店や地域の人を誘い、町や商店街を盛り上げる取り組みも進めています。過去には、金魚すくいとお酒が楽しめる「街バル」のようなイベントや特産品や手作り品などを売る夜市「ナイトマーケット」を開催。さらに、出雲そばや干物、日本酒など、出雲の食文化を受け継ぐ若手後継者のグループ「タベツク出雲」を立ち上げるなど、精力的に活動しているのです。

  • イベントでは、大人も金魚すくいに熱狂した

そんな中、「商店街の横のつながりをうまく盛り上げながら、何か一緒にできないか」と考えた結果生まれたのが、オリジナル日本酒「中町エニシカル」です。「エニシカル」は、縁(エニシ)とエシカル(人と社会、地球環境、地域のことを考慮する生き方)を合わせた造語。商店街の有志で酒を醸し、商店街のハンコ店がラベルのハンコをデザインした手作り感のある一品です。

旭日酒造の寺田さんが、「商店街はいろいろな方が集まって出会って、というのが大事だと思っています」と、印象的なことを言っていました。商店街に活気を取り戻すことが、地方活性への第一歩なのかもしれません。

●information
日比谷しまね館
東京都千代田区有楽町1-2−2 日比谷シャンテB1
※記事内で紹介した酒蔵の酒や干物などの取り扱いあり