映画『ミッドナイトスワン』で改めて演技力の高さを見せつけ、「第44回日本アカデミー賞」で最優秀主演男優賞を受賞した草なぎ剛。現在放送中の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)では徳川慶喜を好演し、存在感を示している。大河ドラマ出演は『新選組!』(2004)以来、2度目だが、中心人物を演じるのは今回が初めて。草なぎにインタビューし、慶喜をどのように演じているのか、そして、大河ドラマの醍醐味について話を聞いた。
新一万円札の顔としても注目されている“日本資本主義の父”、渋沢栄一の生涯を描く本作。慶喜は栄一の人生に大きな影響を与える人物で、栄一(吉沢亮)の物語と慶喜(草なぎ)の物語が並行して描かれ、やがて2人の物語が交わっていく。
草なぎは、慶喜役のオファーを受けたときの心境を「最後の将軍ということで特別な思いがありました。物事の始まりはドキドキワクワクしますが、終わらせるのはどんな感じなのかなと、そこに興味を持ちました」と振り返る。
役作りについては、演出の黒崎博氏との打ち合わせで「つかみどころがない役がいいのではないか」という話になり、その意識で演じているという。「慶喜が将軍になるのはわかっていることですが、本当に自分が将軍になっていいのかという葛藤が見え隠れする中でも、つかみどころがない感じ。もしかして将軍にならないんじゃないかというくらい力の抜けた感じで演じようと思っています」と説明し、苦労している点については「セリフ回しが難しい。でも普段使わない言葉ゆえに、時代をタイムスリップして演じているんだなと思います」と語った。
SNS上では、草なぎの存在感や演技力を称賛する声が毎回多く見られる。草なぎは「恐縮です。本当に何も考えてないでやっているので。でも褒めていただいて本当にうれしい」と頬を緩め、「父・斉昭(竹中直人)は『攘夷だ!』とストレートに感情をぶつけたりするので、僕は対局にいたほうがいいのではないかという気持ちもあり、ふわふわしている感じに。父が熱意を込めて将軍に推してくれているのに他人事のような。それが後に大きな器を持っている人間という風に見えるといいなと思っています」と役作りについてさらに説明した。
役が自分に憑依したり、自分とリンクするところは「ない」とのこと。「慶喜のことをよくわかっていないので。それくらいのほうがいいかなと。なので全然リンクするところもないですし、憑依というのもないですが、すごく楽しいのでいい感じになっているのではないかな」と淡々と話し、「そのときそのときを楽しんで演じている。慶喜は自分という感じもないですが、その離れている感じがまた楽しい」と充実した表情を見せた。
将軍になるタイミングで慶喜がどう変わっていくのか、その変化も気になるところ。草なぎは「普通にやっていれば、なるんじゃないかなと。『私が将軍です!』とやると『急にどうした!?』となってしまう。脚本が自然でスッと入ってくるので、脚本通りにやっていればいい感じになると思う。激動のシーンもありますが、そうなったらそれに飲み込まれていくと思うので、その現場その現場、その日その日でなんとかやるんじゃないですかね」と笑った。