通常、こうした朗読劇は、前のセリフのトンマナを受けて読み方を対応するため、1つのブースで複数人が同時に行うものだが、コロナ禍の現在、密室で複数での収録は不可能。それでも、事前の読み合せでの確認や、先に収録したセリフを聴いてから臨むことで、掛け合いのセリフも自然に聴こえるのだ。

収録はナレーションブースのスタジオで行っているが、実は無料のスマホアプリを使用している。これは、最初に実施したのがステイホーム期間だったため、各自が家で収録するしかなかったことの名残だという。内田アナは「スマホのアプリで録っているとは思えないくらい、すごくきれいな音質でびっくりしました。聴いているだけだと分からないと思います」と胸を張る。

ステイホーム期間が終わった後もこの手法を続けることについて、音声などの技術面で「デジタル紙芝居」を支える奥寺健アナは「コロナ禍の今の状況において、すごく合理的だと思うんです。マイク1本あれば誰でもどこでも収録できて、それをすぐ伝送することができるというのは、革命的なこと。特にアナウンサーは、それぞれ担当番組が違うので、各々ができるタイミングで録るという手法は、ちょうど合っていたんです。これをみんなができるようになれば、すべての業務についてアナウンサーが1人で収録して対応するということもゆくゆくは可能になるはず。そういう意味でも、今回の試みはいい機会だと思います」と、今後のアナウンサーにおける業務変革の可能性も見出した。

佐々木アナは「コロナ禍でいろんな意味でできなくなったことが多いですが、オンラインのツールを使うことによって、諦めなければこうして1つの作品を作り上げることができるというのが分かったんです。アナウンサーは、物事を言語化することが仕事であったりするので、内田も読み合わせで『こういうものを作りたい』という思いをみんなにしっかり伝えてくれて、イメージを共有して進めていくことができました」と大きなメリットを感じた上、「リモートの利を生かして、系列局の皆さんとのコラボも考えています」と構想を巡らせていた。

●佐々木恭子
1972年生まれ、兵庫県出身。東京大学卒業後、96年にフジテレビジョン入社。『報道2001』『とくダネ!』『スーパーニュースWEEKEND』『みんなのニュースWEEKEND』『報道プライムサンデー』といった報道・情報番組のほか、バラエティ番組にも出演。現在は『Live News イット!』『ワイドナショー』を担当する。

●内田嶺衣奈
1990年生まれ、東京都出身。上智大学卒業後、13年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『とくダネ!』『すぽると!』などを担当し、現在は『Live News α』金曜メインキャスター、『Live Newsイット!』週末版のスポーツキャスター、フィギュアスケート中継キャスターなどを務める。