コロナ渦ですっかり変化してしまった、飲み会事情。相次ぐ外食自粛や時短営業要請で、居酒屋でワイワイ過ごすことが難しくなり、飲み会好きの人にとっては少々寂しい状況だ。だが一方で、オンラインで集まって家にいながら飲み会を楽しめる“リモート飲み”は定着してきた。
リモート飲み会のメリットといえば居酒屋での感染リスクが回避できるだけでなく、自分の好きなものを飲んでいても気兼ねしないで済む点、家にいながら気楽な雰囲気で楽しめるといった点がある。プライベートなグループだけでなく、仕事上の飲み会もオンラインで行われるようになっている。
一方で、自分で食材やアルコールを用意するのが面倒だという声、せっかくだからレストランの味を楽しみたいという声も。そこで続々と生まれたのが、リモート飲み会用のお取り寄せグルメだ。居酒屋さながらの料理やご当地グルメが楽しめたり、調理不要ですぐリモート飲み会に参加できたりする商品もあり、注目だ。
居酒屋メニューがそのまま届く! 「おうち塚田農場 家飲み便」
全国でおよそ90店舗を構える居酒屋「塚田農場」が2020年4月に始めた「おうち塚田農場 家飲み便」もその一つ。家での晩酌タイムを充実させたいという人に好評だ。
「おうち塚田農場 家飲み便」は、オンラインで注文すると居酒屋での人気メニューをセットにしてパッキングしたものを個人宅など指定の場所に配送してくれるサービスだ。同社では、宅配弁当を500万食以上も販売してきたノウハウを生かし、自宅で簡単にお店のクオリティを再現できるメニューを家飲み便のために開発している。
例えば「ベーシックセット」の中身は「塚だまタルタルチキン南蛮」や「塚田のポテトサラダ」など8品。リモート飲みの前日か当日に冷蔵状態で届き、レンジで温めるだけでOK。好みのお酒を用意し、料理を食器に移し替えれば、まさにおうち居酒屋感覚だ。
塚田農場プラス取締役社長 森尾太一さんによると「『手軽にお店の味が再現されて家飲みが楽しかった』、『オンラインでも同じものを食べることで一層盛り上がった』というお声をいただいています。企業の懇親会でも利用も多く、それをきっかけにプライベートでも利用するという方もおられ、3月は前月比でも倍以上のご注文をいただくほど好調です。」と話す。今後は九州の地ビールや焼酎も商品に加わるそうなので、注目だ。
酒と産直グルメを堪能できる「SAKEぐる」
コロナ渦前の2019年4月にスタートした酒と産直グルメをセットで選べる通販サイト「SAKEぐる(さけぐる)」では、ワインや日本酒、焼酎、ビール、ウイスキーなどから好きな酒をを選択でき、それに合わせる選りすぐりの産直グルメをセットで購入できる。例えば日本ワインとソーセージや地鶏の味噌漬けの組み合わせや、日本酒と干物の組み合わせといった具合だ。
商品は現在約140の組み合わせがあり、料理も冷凍・冷蔵・常温品と幅広くラインナップ。日持ちは短いものでも冷蔵で4日あり、長いものだと常温180日保存ができるので、リモート飲みの都合に合わせて購入しやすいのもいいところだ。
もともとは全国各地の逸品と相性のいい酒をセットにするという目的で始まったが、コロナ渦に入り、リモート飲みのために数人のグループで購入して個人宅に配送するといったグループ購入も増えているという。同サービスを運営するフィッシェルの酒販事業部リーダー 植松美和さんによれば「当店の商品は開けてすぐ飲んで食べられるセットが多いので、料理が苦手な方や面倒だと感じる方から好評」とのこと。リモート飲みでも手間なくおいしいものを食べたいという人にぴったりだ。
いざ実食! お酒までセットになった「nonpi foodbox」
昨年8月にスタートした「nonpi foodbox(ノンピ フードボックス)」は、リモート飲み会に特化したフードデリバリーサービスだ。オンラインで予算に合わせた食事と好みの飲み物を選択すれば、リモート飲み会の前日夜か当日の朝に自宅に届く。冷蔵状態で届くので、箱を開ければそのままリモート飲み会に参加できるようになっており、価格や目的に合わせて10種ほどのプランが用意されている。今回はその中から“リモート花見”向けのセットを試してみた。
冷蔵で届いた箱を開けてみると、トレーに入った料理の他、ビール3缶、おしぼりと割り箸、桜の絵葉書とメニュー、ランチョンマットまで。自分でわざわざ出かけて調達しなくても、これだけで十分楽しめる手軽さがうれしい。メニューには料理の説明書きに加え、リモート飲み会のポイントについても書かれていた。
料理は冷蔵のままで味わえるものばかりなので、電子レンジでの温めすら不要だ。ちなみに、飲み物はビール以外のハイボールやウーロン茶も選択ができる。
花麩が添えられた白身魚の西京焼き、鶏の照り焼きや彩り豊かな炊き合わせなど9品のおかずと、エビやいくらが入ったちらし寿司、さらにあまおう餡の葛饅頭まで。三色団子や桜の塩漬けなど随所に春らしさがちりばめられていて、家にいながらこれだけの料理が並ぶと気分も上がってくる。
筆者が個人的においしかったのは、秘伝の西京味噌で焼かれたという西京焼きと、具沢山なちらし寿司。どれも素材の味を大事にしながら上品で丁寧な味付けがされており、いわゆる惣菜や弁当というより、どちらかというと料亭の料理といった感覚。手軽にイベント気分を味わえたのも良かった。
同サービスを運営するノンピ執行役員 綿貫貴大さんによると、「もともとオードブルをネットで販売するケータリングサービスを運営していましたが、コロナ渦で売上が前年比95%減まで落ち込みました。そんな中でリモート飲み会のニーズに合わせて開発したのがこちらのフードボックスです。味はもちろん、主催者や参加者の負担を増やさないことを心がけています。共通の食事をとることで会話も弾むので、リモート飲み会を楽しんでほしい」と話す。
居酒屋で大人数が集まって楽しむ、という以前のような飲み会は、まだしばらくできそうにない状況の中、リモート飲み会用のお取り寄せはいろいろなバリエーションが増えている。どうしても集まりたいというとき、こういったサービスを利用してみるのもいいかもしれない。