具体的なアドバイス

それでは具体的なアドバイスをみていきましょう。

家計を見直し、削減できそうな支出をチェック

Aさんご家族の家計状況を拝見する限りでは、ご主人の職業上、月々の収入が不安定ながらも工夫を凝らして家計管理をされている点が好印象を受けます。教育資金が不要になったこともあり、生活費はご主人の収入だけでも家計に4万円程度の余裕もあります。それを将来の家族イベントのために貯蓄されているのはいいですね。

ただ、ご自身でも言われているように、Aさんご夫妻の将来の老齢年金は少なめです。老後資金は自分たちでしっかり準備していきたいですね。

そこで、世帯の収入が減った今、まず実行したいことは家計の見直しをして支出を削減することです。常日頃から節約は心がけておられるようですが、もう少し削減できそうな費目がないかチェックしてみましょう。

たとえば、ご主人の生命保険を見直すことで、保険料を節約できるかもしれません。2人のお子様はすでに就職されていますから、もしものときに備えてAさんのための遺族保障とご主人の医療保障を残しておければ大きな死亡保障は不要でしょう。また、パート勤めを中断している今はAさんの衣服・美容代を少し節約できるかもしれません。

仮に支出を3万円減らすことができれば、次男さんが4月から入れてくれる3万円と合わせて6万円分の貯金ができます。Aさんの新たなパート先が見つかるまでは、このお金を老後資金用の貯蓄に充てるのもいいでしょう。

老後資金の貯蓄とともに年金を増やすことも検討する

老後資金は現在定期預金で準備されているようですが、一部を運用することや、自助努力の促進として国が設けている制度を活用することも検討してみましょう。

主なものに、iDeCo(個人型確定拠出年金)ほか、国民年金加入者の場合は国民年金基金や付加年金制度などがあります。

付加年金は国民年金に上乗せする年金です。月額400円の付加年金保険料を払うことで、1年あたり「200円×付加保険料納付月数」で計算された付加年金が65歳から支給されます。

仮に今から8年間(96カ月)加入すると、付加年金額は年額19,200円(200円×96カ月)となり、本来の老齢基礎年金に上乗せされます。月当たりにすると1,600円で、少なく感じるかもしれませんが、実は2年間受給すれば払った付加年金保険料の元が取れます。

400×96(カ月)=38,400

38,400÷2=19,200

年金の上乗せは一生続くのでお得な制度と言えます。夫婦で月額800円なら付加年金に加入しても大きな負担にはならないでしょう。

iDeCoへの加入もおすすめです。国民年金第1号加入者であるAさんご夫婦は、それぞれ月6万8,000円(付加年金保険料分を含む)まで拠出できます。めいっぱいに掛ける必要はありませんが、仮に2万円ずつでも積立運用していくことで定期預金より高めの利回りを期待できるでしょう。

ただし、仮に今から加入しても積立運用期間は10年未満と短めですから、運用商品を選ぶ際にはリスクの高いものは避け、比較的リターンが安定している投資信託などを選ぶようにしましょう。

なお、iDeCoに加入すると加入時や掛金納付時、運用時などに手数料がかかります。その点も踏まえて運用商品を選ぶことが大切です。

年収増を目指して再就職時にチャレンジ

Aさんは次のパート先を探す予定とのことですが、収入を増やすチャレンジは惜しまずやっていきましょう。コロナ禍で再就職自体が難しいことも考えられますが、焦らずチャレンジを続けてみましょう。そのときに意識しておきたいことが2点あります。

  • 長く働き続けられそうな仕事、職場を探す

60歳以降にも働き、月に数万円でも収入を得ることができれば老後生活費の助けになります。

  • 自分で社会保険に加入できるような働き方を検討する

自分で健康保険と厚生年金に加入できれば、週当たりの労働時間が30時間以上、あるいは勤務先によっては労働時間20時間以上・月額賃金8万8,000円以上などの要件を満たせばパート労働でも社会保険に加入できます。

給料から社会保険料が天引きされても、Aさんの分の国民年金および国民健康保険料が不要になるため家計的には負担が軽くなります。何より、Aさんの将来の年金が増えます。


今回の相談内容と皆さんの家計簿に似ている部分があるようでしたら、ぜひともFPの方のアドバイスを参考にしてみてくださいね。