定年退職をすると、今まで加入していた健康保険から外れることになります。では、定年退職をした後の健康保険はどのようにしたらいいのでしょうか。定年退職が間際になってから慌てないで済むように、早いうちから確認しておきたいですね。今回は、定年退職後の健康保険についてお伝えします。

  • 定年退職後、健康保険はどれに入ればいい?

■国民は必ず健康保険に入らないといけない

日本は、国民皆保険制度をとっています。国民皆保険制度とは、日本に住む人は誰もが何らかの健康保険に加入しないといけないという制度です。

1958年に国民健康保険法が制定され、1961年に全国の自治体で国民健康保険事業が始まり、誰もが保険医療を受けることができるようになりました。健康保険に加入することで、医療機関を自由に選べたり、安い医療費で高度な医療を受けられたりできるのです。つまり、国民が何らかの公的医療保険に加入し保険料を支払うことで、お互いの医療費を支え合っているというわけなのですね。

■健康保険の種類、何があるの?

公的医療保険は、職域保険の健康保険と、地域保険の国民健康保険に分かれています。

会社員は、勤務先を通じて健康保険に加入します。一般的に大企業の会社員は、健康保険組合を保険者とする組合管掌健康保険(組合健保)に加入します。組合健保には「付加給付」という制度があり、支払った医療費が定められた自己負担額の上限を超えた場合、超過した費用が払い戻されます。中小企業の会社員は、全国健康保険協会を保険者とする全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)に加入します。また、公務員や教職員は共済組合に加入します。

勤務先で健康保険に加入することで、病気で長い期間仕事を休まないといけなくなった場合、1年6カ月までの間は傷病手当金が支給されたり、出産のため給与が受けられない場合には出産手当金が支給されたりと、手厚い保障を受けることができるのです。

■退職後に入れる保険の種類

75歳(一定の障害がある人は65歳)以上は後期高齢者医療制度に加入することになるので、定年退職後から75歳までの間はどの健康保険に加入するか考える必要があります。定年退職した人が健康保険に加入する方法は3つあります。

1.国民健康保険に加入する
2.退職した会社で、健康保険の任意継続被保険者になる
3.家族の健康保険の被扶養者になる

それぞれの加入条件や保険料の違い、またメリット・デメリットをみていきましょう。

<国民健康保険に加入する>

国民健康保険は、自営業者や無職の人などが加入する健康保険です。他の公的な医療保険に加入していない、生活保護を受けていないなどの条件を満たすことで国民健康保険に加入することができます。

国民健康保険料は全額自己負担となり、収入によって保険料は異なります。国民健康保険に加入すると、今まで扶養されていた家族もそれぞれ国民健康保険に加入しないといけなくなります。そのため、家計全体で考えると保険料の負担は高くなる可能性があります。加入の手続きは、退職日の翌日から14日以内に住んでいる自治体の窓口で行います。

<任意継続被保険者になる>

退職前の会社で加入してきた健康保険制度に、引き続き加入し続ける方法です。退職前に継続して2カ月以上被保険者だった場合に加入することができます。ただし、加入期間が決まっていて、最大で退職後2年間となっています。

在職中は、健康保険料の半分は勤務先が負担してくれていました。でも、定年退職した後は全額自己負担になることに注意が必要です。ただし、家族の年収が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180 万円未満)かつ被保険者の年収の2分の1未満であることなどの要件を満たすことで、家族も保険料の負担なしで保険に加入できます。

手続きは退職日の翌日から20日以内です。

<家族の健康保険の被扶養者になる>

家族が健康保険に加入している場合、家族の健康保険の被扶養者になるのも一つの方法です。年間収入が130万円(60歳以上・障害者は180万円)未満で、かつ被保険者の年間収入の2分の1未満の場合、家族の被扶養者になることができます。この年収には年金収入も含まれます。被扶養者になると保険料の負担がないうえ、家族が扶養控除を利用することができます。

被扶養者になるには、退職の翌日から5日以内に、加入を希望する被保険者の勤務先で手続きを行います。

■まとめ

退職後はできるだけ保険料の負担を抑えたいですね。でも、お伝えしたようにそれぞれの健康保険の加入手続きをするためには、短い期間でしなければなりません。一番避けたいのは、加入手続きが間に合わず健康保険に未加入になることです。そのためにも、在職中に、定年退職後の年金収入がどのくらいあるのか、退職前1年間の年収がどれくらいになるのかなど試算しておきましょう。

出典:全国健康保険協会