ビジネスシーンでもよく使われる「対応」と「応対」は、同じ漢字でできている二字熟語ですが、漢字を並べる順番が違うだけで、別の意味を持つ言葉になります。しかし、両者ともなじみ深く、使われる場面も似ているため、違いを明確に説明できない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ビジネスシーンでもよく使われる「対応」と「応対」の違いについて、類語・言い換え表現・英語表現などを交えながら解説します。
対応と応対の言葉の違い
「対応」と「応対」には、人以外のものに対しても使われるか、人に対してのみ使われるかという違いがあります。それぞれの意味を理解し、ビジネスシーンにおいても正しい使いわけができるようになりましょう。
対応の意味
「対応」は、周りの状況などに合わせて物事をすることで、人以外のものに対しても使われる言葉です。「事故対応をする」「被害に対応する」などのように使用できます。
対応するときには、状況をとらえて何を求められているのかを読み取ったうえで行動しなければなりません。
例えば、事故対応をするなら、事故の状況を把握したうえで、どのように行動したら問題がなくなるのか、要求されていることは何かを考えて処置や対策まで行う必要があります。
応対の意味
「応対」とは、相手になるという意味で、人に対してのみ使われる言葉です。
例えば、来客がオフィスを訪れた際に受付が応えるのが、応対です。対処や対策までは含まれません。受付が応対し、担当者が来客の要求を受けて行動を起こした場合は、来客への「対応」になります。
「電話応対」などの使い方もありますが、この場合は電話の相手に対して受け答えするという意味で、やはり人に対して用いています。
対応と応対の類語・言い換え表現
「対応」と「応対」に似た意味で使われる類語や言い換え表現を知っておくことで、より両者の違いがわかりやすくなります。また類語や言い換え表現の使い方も知っておきましょう。
対応の類語・言い換え表現
対応には、「対策」「対処」「措置」などの類語があり、どれも状況を理解して求められている行動を取るという意味で使われる言葉です。
対策
「対策」は、相手の態度や事件の状況に対応するための方法や手段を言います。相手の態度から求められていることを読み取って要求に応じたり、事件の状況を見て問題を解決するための方法や手段を考えたりなど、求められる行動を取って解決に導くところまでが対策です。
「人手不足の対策を立てる」などと使用され、人手不足という状況に対応するために、対策を考えて実施することが求められています。
対処
「対処」とは、ある事柄や状況に合わせて適当な処置を取ることを言います。事柄や状況を理解したうえでどのようにすれば問題が解決するのか考え、適切に応じることが求められる言葉です。
「部下のミスに対処する」などの使い方をします。この場合、部下のミスで起こった問題を把握し、ミスを補えるような方法を考えて実行することが求められています。
措置
「措置」とは、事態に応じて必要な手続きを取ることや、取り計らって始末をつけることを言います。事態を把握して求められる手続きを取ったり始末をつけたりと、状況に合わせて必要な行動を取ることを示す言葉です。
「万全の措置を取る」などと使用され、考えられる様々な事態を予想して、どのような場合でも必要な手続きが行えるよう準備することが求められています。
収拾
「収拾」とは、混乱をおさめて状態を整えることを言います。なぜ混乱が起きているのかその原因を考え、混乱がおさめられるように行動することを示す言葉です。
「難局を収拾する」などの使い方をします。この場合、難しい局面の混乱をおさめる方法を考え、実行することが求められています。
応対の類語・言い換え表現
応対には、「受け答えする」「接客」などの類語や言い換え表現があります。どれも目の前にいる相手の言葉を受けて言葉を返すという意味で使われる言葉です。
受け答えする
「受け答えする」とは、人の言うことや尋ねることに応じて答えることを言います。言われたことに対して答える以上の何かをするのではなく、相手にきちんと応じることを意味する言葉です。
「はきはきと受け答えする」などと使用され、相手の言うことに応じてはっきりと答えている状態を表します。要求を受けて対処や対策をしているわけではありません。
接客
「接客」とは、客をもてなすことです。心をこめて客の世話をしている状態を表していて、相手からの要求を受けて動いているわけではありません。
「笑顔で接客する」のように使用し、笑顔で客の世話をしている状態を表しています。客からの依頼を受けて動いているのではなく、客に応じている状態です。
応接
「応接」とは、訪れた人を招き入れて相手をすることを言います。訪れた人の要求などに応えているわけではなく、相手している状態を表す言葉です。
「次々訪れる客に応接する」などと使い、次々と訪問する客を招き入れ、その相手をしている状態を表しています。それぞれの要求を聞いているわけではありません。
お構い
「お構い」とは、気にかけたり、心にかけてもてなしたりすることや、お世話をすることを言います。心にかけてもてなす点で丁寧な印象を受けますが、相手の要求などに合わせて動いているわけではありません。
「なんのお構いもできませんで」など、来客などの場面でよく使われる言葉です。
対応と応対の英語表現
「対応」と「応対」は違う意味をもつため、英語表現も異なります。ここからは、それぞれの英語表現やどのように使うのかを、例文も合わせて紹介します。
対応の英語表現
対応の英語表現には、「take care of」や「deal with」があります。
take care of
「take care of」には、世話をする・引き受ける・処理する・大切にする・切り抜けるなどの意味があります。トラブルから雑務まで、幅広い物事に応じるイメージで使う言葉です。引き受けるという意味もあるように、自らが行うというニュアンスが含まれています。
<例文>
- I'll take care of buying the flowers for the party. (私がパーティー用の花を買う仕事を引き受けます)
deal with
「deal with」は、処理するという意味で使われ、トラブルなどに対処するニュアンスが含まれています。人に対して使うと失礼な印象があるので、注意しましょう。
<例文>
- He must deal with a difficult problem.(彼は難しい問題に対応しなければならない)
応対の英語表現
応対の英語表現には、「reception」や「receive」があります。
reception
「reception」の主な意味は、応接・接待・反応・歓迎会、(会社などの)受付や(ホテルの)フロントなどですが、歓迎会の意味もあるように、歓迎して受け入れるというニュアンスを含んでいます。
- I got a warm reception.(私はあたたかい応対を受けた)
receive
「receive」の主な意味は、応じる・受け取る・受理する・受け入れる、受けるなどです。同意して受け入れるというよりも、単純に来たものに応じるというニュアンスで使われます。
- I'm busy receiving visitors.(私は来客の応対で忙しいです)
対応と応対の違いを理解して正しく使おう
「対応」は人以外にも使え、「応対」は人にしか使えない熟語です。また、「対応」は相手の要求や状況に合わせて、適切に対処するところまでが含まれていますが、「応対」は相手の言葉に応えるだけであるという点でも異なります。
ビジネスシーンでは、まず受付が来客に「応対」した後に、担当者が「対応」するケースが多く見られます。「対応」と「応対」の違いを理解して、正しく使い分けましょう。