新年度にあたり、営業部門や販売部門など人と話す機会が多いセクションに異動する人もいるでしょう。誰もが知りたい「売れる話し方」とは? お客様や取引先に好まれる話し方は? オンラインミーティングを含め、Withコロナ時代の話し方について、ベストセラー『人は話し方が9割』の永松茂久さんに聞きました。

  • 「売れる話し方」とは? /『人は話し方が9割』著者・永松茂久

■人と話すことが多い仕事に配属された時、身につけたい話し方は?

「トーク能力を磨くといっても、自分は口下手で芸人でもセミナー講師でもないし、すぐにはうまくなれる気がしない」。そう思う人は少なくないと思います。営業などに限らず、話し上手になるためには、人間関係の基本のキとなる「三大原則」をまず押さえることが大事です。

その第1が「人は誰もが自分のことが一番大切であり、自分に一番興味がある生き物である」ということです。一番興味がある「相手自身」のことを主役にすれば、自然と会話がはずむはずです。

第2が「本来、誰もが自分のことを認めてほしいし、自分のことをわかってほしいと熱望している」ということです。いわゆる承認欲求はすべての人に共通するものです。

第3が「人は自分のことをわかってくれる人を好きになる」ということです。例えば誕生日のプレゼントでも、自分が好きなものを贈ってもらったほうが、相手に好意を感じるはずです。

かつてアップル創業者のスティーブ・ジョブズはこう言ったそうです。

「美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラを10本贈ったら、君は15本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを見極めることが重要なんだ」

相手をよく観察して、相手が本当に何を求めているかを考えることが最も重要なのです。

■「聞き上手」になるためのいい方法はありますか?

三大原則を一言でまとめると「共感力が大切」だということです。相手の人となりを知り、困っていること、欲しいものをわかったうえで、最適な答えを提案すること。

そのためにはまず「聞き上手」になることが肝心です。売れる営業マンは例外なく聞くことを大切にしていて、「とにかく相手の欲しいものが知りたい」と口を揃えて言います。

会話で大切なのは自分が「話す」のではなく、相手の話を「広げる」ことです。これを実践するための話し方のテクニックが「拡張話法」です。これを使えば、相手が自分で自分の話を広げていってくれます。「拡張話法」には次の5つのステップがあります。

1 感嘆(相手の話を聞いた時に受ける感銘の表現)
「へー」「うわあー!」「そうなんですかー」など相手の話に合わせて感情を込めて応えます。

2 反復(相手の話を繰り返す)
「私、カレーが大好きなんです」→「お、カレー、いいですね」など話を反復することで、相手は次の話に進みやすくなります。

3 共感(相手の話に感情を込めて理解を示す)
「わかります」「大変でしたね」「よかったですね」など、相手の感情に寄り添う表現です。

4 称賛(相手を評価する)
「素敵! 」「すごい! 」「さすがですね」など話の内容を受けた感想を述べます。

5 質問(相手の話を中心に展開させていくためにその後を追いかけて聞く)
「それで、それで? 」「そこからどうなったの? 」とタイミングよくはさむことで、相手の話にドライブがかかります。

人は基本的に自分のことをわかってほしい生き物です。拡張話法を使うと、相手は気分よくたくさん話してくれます。

■相手の話を聞くときにとくに大事なアクションは?

重要度で言えば最初の「感嘆」が5割ぐらいを占めます。会話は言葉の掛け合いですから、最初が最も肝心です。 最初に「これこれこうなんだよね」と言った時に、「ふーん、そうなんだ」って言われるのと「えーっ! うそー! 」と言われるのでは、間違いなくその後の会話の展開が変わります。感嘆詞は強力なパワーを持っています。これを使った瞬間、相手の話にパチンとスイッチが入ります。

■オンラインミーティングで気を付けたいことは?

私の書いた『人は話し方が9割』は2019年9月が初版で、2020年に緊急事態宣言に入ってからは「会話の機会も激減して、話し方の本はもう駄目だろうな」と思っていました。ところが、逆に2~3月に部数が急伸したのです。

いくつか原因はあると思いますが、コミュニケーションの環境がガラリと変わって、多くの人が話すことについて基礎的なところから始めないといけない、と考えたのも一因ではないかと思います。

オンラインミーティングでは話す人はもちろん、ギャラリービューでも全員の表情が見て取れます。リアルの会議以上にごまかしが利かなくなっているわけです。

画面越しに見ていて表情が乏しい人は、まじめに聞いていても「怒ってるのかな」と思われてしまうことがあります。

オンラインではこれまで以上にコミュニケーションスキルや共感力が求められますし、画面に自分がどう映っているのかを意識した振る舞いがマストになってきます。

以上の理由で、リモート時代に入っても「リアクション」だけは大切にしてください。リアクションが突き抜けてよければおそらく3年目ぐらいまでは、周囲にかわいがられるはずです。

■いいリアクションとは具体的にどんなことですか?

会話上手になるためには、話し相手に対して自分がいかに関心を寄せているかを伝えることが大事です。

相手に対して「私はあなたに興味を持っています」と効果的に示す方法は、「顔の表情」「声の表情」「体全体の表情」を活用することです。つまり「笑顔で聞き、自分の感情を言葉に乗せ、身振り手振りを使って相手にリアクションする」ことです。

例えば、上司に何か間違いを指摘された場合、「はい、わかりました。申し訳ありませんでした」と神妙な顔つきで、声のトーンを落として話すほうが、相手に伝わります。

また、何かを伝えるときに一気に伝えようとするとどうしても早口になりがちですが、意識的にゆっくりと強弱をつけて会話することを心がけると、相手も自然に心の扉を開いてくれるようになります。