香取慎吾が主演を務め、話題を呼んでいるテレビ東京系のドラマ『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』(毎週月曜22:00~)。架空の警視庁SNS専門対策室「警視庁指殺人対策室」を舞台にしたオリジナルのクライムサスペンスで、捜査一課の第一線から外された一匹狼の万丞渉(香取慎吾)をはじめとした出世コースから外れたクセモノメンバーが、キーボードによる殺人=指殺人に苦しむ人々の事件を解決に導いていく。

香取は民放5年ぶり&テレ東33年ぶりのドラマ出演となり、第1話は世帯視聴率7.3%、個人視聴率3.6%を記録。前身となる枠のドラマBiz創設以来、22時スタートの作品初回として最高記録を更新した(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。今回は、同作について濱谷晃一プロデューサーにインタビュー。香取のキャスティングの裏側や、改めてすごさを感じたシーンなどについて話を聞いた。

  • ドラマ『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』主演の香取慎吾

    ドラマ『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』主演の香取慎吾

■シンプルな流れで主演が決定

——第6話まで放送されましたが、これまでの反響についてはどのような印象ですか?

率直にテーマが重いですし、月曜22時は今までビジネスドラマの枠だったので、どう受け止められるか緊張しながら作っていたんですけど、多くの人に受け入れられて良かったと思いました。初回は15万ツイートされて、トレンド1位にもなっていたので、共感してもらえるところも多かったでしょうし、香取さんが数年ぶりに地上波で連ドラの主演をするということへの期待値も非常に高かったのだと思います。

香取さんは、今までのドラマでは明るくコミカルな役が多い印象ですが、今回は寡黙なキャラクター。40代になった香取さんの奥行き、深みを役の中で感じてもらえたと思います。ご本人も言葉を選んで話される方だという印象もあり、そういった香取さん像を投影しました。だからこそ口数は少ないけど、万丞の被害者に寄り添う言葉や、心の底からぶつける言葉が響いてる、という印象を受けています。

  • 濱谷晃一プロデューサー

    濱谷晃一プロデューサー

——香取さんが『年忘れにっぽんの歌』『家、ついて行ってイイですか?』『出川哲朗の充電させてもらえませんか? 』『おはスタ』『YOUは何しに日本へ?』『開運! なんでも鑑定団』とテレ東さんの番組にたくさん出られて、局ぐるみで盛り上がっているのかなという空気も感じました。

前枠の『共演NG』がテレ東史上最大のプロジェクトだったので、みんな疲れちゃっていないか心配していたんですが(笑)。今回も局全体で宣伝を頑張ってもらうことができました。バラエティ番組も香取さんに出てもらうと盛り上がりますからね! それと大きかったのは、香取さんの久々の地上波ドラマ主演作で、メディアの方々にも興味を持っていただけたことです。すごい数の取材依頼が殺到したからこそ、僕らも仕掛け甲斐がありました。

——テレ東さんもテンションが上がっていたんですか?

上がっていたと思います(笑)。情報解禁が10月初旬と早くて社内でも知ってる人が少なかったのですが、ネットニュースでも大きく取りあげられて、反響が大きかったことも、テレ東内の追い風になりました。

——5年ぶりの民放ドラマ主演とのことでしたが、なぜそれがテレ東さんのドラマだったんでしょうか? 局側としてはどのようにとらえていますか?

テレビ東京は企画重視でコンペを行っているので、今回も企画が決まってから主演を誰にするか、という順番でした。そこで、香取さんは主人公の役柄にもピッタリだし、久々の連続ドラマ主演も話題になるだろうし「これは、香取さんしかいないんじゃないか!」と盛り上がって……というシンプルな流れなんです。5年ぶりの民放がなぜテレ東? というのは、僕も聞きたいくらいです。テレ東は33年ぶりだからほぼ初出演ですよね(笑)。

——これまでも骨太なドラマや攻めたドラマを世に生み出している、というテレ東さんの下地があってOKしてくれたのでしょうか?

そうかもしれないです。香取さんもそうですが、新しい地図の作品選びはクリエイティブ重視で「攻めてるな」と感じています。そんな中、テレビ東京からの、そして、僕の企画を「やってみてもいいんじゃないか」と思っていただけたのだとしたら、嬉しいです。

■香取慎吾ならではの説得力

——実際に香取さんと組んでみて、すごいなと思ったのはどんなところですか?

香取さんは事前に読み込んだり、入念な役作りを準備して…というタイプではなく、瞬発力やインスピレーションの方だと思います。やはり重要なシーンでの迫力や説得力は、香取さんならでは。香取さんとドラマをやることを発表したら、白石和彌監督から「彼は天才ですから」というLINEが来て、香取さんに対するリスペクトが伝わってきました。日本を代表する映画監督が才能を褒める、すごい人なんだなと。

ドラマの内容についても、香取さんが「この台詞が引っかかる」と言った時に、その違和感をひもといてみると、構成的に重要なことだったりして、そういうことをポーンと見抜いてくる。香取さんのセンスはやはりすごいなと思いました。

——香取さんと一緒に作り上げていったという感覚は強かったんですね。

準備段階から、香取さんと「こういうキャラクターは、こういう風にしゃべるんじゃないかな」といったお話ができて、今の万丞を作ることができました。香取さん自身、万丞というキャラクターは「打ち合わせでの意見を反映してもらったから演じやすかった」と言っていましたし。香取さんと僕らはこれが初めてのお仕事でしたが、こうして一緒に作り上げていけたのは嬉しかったです。

■濱谷晃一プロデューサー
テレビ東京ドラマ室プロデューサー。バラエティ班として『ピラメキーノ』『シロウト名鑑』などを担当した後に、現職。担当したドラマは『バイプレイヤーズ』『おじさまと猫』『フルーツ宅配便』『コタキ兄弟と四苦八苦』など多岐にわたる。