セルフメディケーション税制の手続きで確定申告をするとき、いくつかの添付書類が必要になります。その中の1つに「セルフメディケーション税制の明細書」があるのをご存じですか? この明細書とはどのようなものなのでしょうか。そして、どのように書けばいいのでしょうか。

本記事では、確定申告の必要書類とセルフメディケーション税制の明細書について解説します。

セルフメディケーション税制の概要と対象

セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例で、薬局やドラッグストアで対象となるスイッチOTC医薬品(医療用医薬品で使われている成分を含むもの)を1年間に1万2,000円以上購入した場合、その超えた部分の金額が最大8万8,000円まで所得控除できるという制度です(※1)

セルフメディケーション税制を利用するには、健康維持や疾病予防のために、一定の取り組みを行っていることが条件となっています。

一定の取り組みとは、特定健康診査(メタボ検診)やインフルエンザ予防接種、健康組合などの保険者や市区町村などが実施する定期健康診断や健康診査、がん検診などです。

また、セルフメディケーション税制の申請をする年に一定の取り組みを受けたことを証明する結果通知表や領収書が必要となります。また、購入したスイッチOTC医薬品のレシートや領収書も必要です(※2)

  • セルフメディケーション税制の申請にはいくつかの書類が必要となります

    セルフメディケーション税制の申請にはいくつかの書類が必要となります

セルフメディケーション税制の手続きは確定申告にて行います。

例えば、2020年度に購入したスイッチOTC医薬品を申請する際は、2020年に一定の取り組みを行ったことを証明する書類を用意して、2021年2月16日~4月15日(新型コロナウイルス感染症の影響で1カ月延長。通常は3月15日まで)の確定申告の期間中に、確定申告書と必要書類を最寄りの税務署に提出します(※3)。また、マイナンバーカードがあればネット上で申告ができるe-Taxも利用可能です。

セルフメディケーション税制の申請(確定申告)に必要な書類

セルフメディケーション税制を利用するときは確定申告をしますが、その際、確定申告書に添付する書類があります。それは次の2つの書類です(※4)

(1)セルフメディケーション税制の明細書

この明細書を作成するときに購入したスイッチOTC医薬品のレシートや領収書が必要となるので準備しておきましょう。

(2)一定の取り組みを行ったことを証明する書類

証明書類には、「氏名」「取り組みを行った年」「実施した保険者名や市区町村名、または医療機関名や医師の氏名」の記載が必要です。

主な証明書類は以下の通り(※1)です。

  • 特定健康診査(メタボ検診)
    ⇒特定健康診査の名称か保険者名が入った結果通知表または領収書
  • インフルエンザ予防接種
    ⇒予防接種済証または領収書
  • 市区町村が実施するがん検診
    ⇒領収書または結果通知表
  • 勤務先が実施する定期健康診断
    ⇒定期健康診断の名称または勤務先名が入った結果通知表
  • 保険者が実施する健康診査(各種検診)
    ⇒保険者名が入った領収書または結果通知表

領収書は原本を添付しますが、結果通知表はコピーの添付も可能です。

また、勤務先での定期健康診断や保険者が実施する健康診査、メタボ検診などを受けた際に領収書や結果通知表が用意できない場合は、勤務先や保険者に取り組みを行ったことを証明する書類(証明書)を発行してもらいましょう。

この証明書の用紙は、厚生労働省のページ「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について(※1)」にて取得できます。作成してもらった証明書は確定申告書に添付しましょう。

セルフメディケーション税制の明細書の書き方

セルフメディケーション税制の手続きで行う確定申告では「セルフメディケーション税制の明細書」に必要事項を記入し、確定申告書に添付する必要があります。

セルフメディケーション税制の明細書は、以下で取得できます。

▽国税庁「セルフメディケーション税制の明細書

(※)上記で記入しきれないときは、下記も利用しましょう。

▽国税庁「セルフメディケーション税制の明細書(つづき)

記入手順は以下のとおりです。

1) 年度(令和2年など)と住所、氏名を記入します。

2) 「1 申告する方の健康の保持増進及び疾病の予防への取組」には、該当する「取組内容」にチェックを入れ、「発行者名」に保険者名や勤務先名などを記入します。

3) 「2 特定一般用医薬品等購入費の明細」には、スイッチOTC医薬品を購入したときにもらったレシートや領収書を見ながら、以下の3点を記入します。

  1. 薬局などの支払先の名称
  2. 医薬品の名称
  3. 支払った金額

また、取り組みを行う際に補助金や保険金を受け取った場合は、「(4)(3)のうち生命保険や社会保険などで補てんされる金額」にその金額を記入しておきましょう。

全部記入できたら、合計金額を出しておきます。

4) 「3 控除額の計算」に、以下の内容を記入します。

  • 【A】支払った金額の合計
  • 【B】保険金などで補てんされる金額の合計
  • 【C】A-Bの差引金額
  • 【D】医療費控除額(C-1万2,000円)

ただし、【C】の金額がマイナスになる場合は「0」と記入しましょう。【D】が、セルフメディケーション税制にて課税所得から差し引かれる金額(所得控除額)です。

セルフメディケーション税制の明細書の書き方の注意点

確定申告では、スイッチOTC医薬品や購入金額などを「セルフメディケーション税制の明細書」に記載して添付する必要があるとお伝えしました。

明細書の作成時に購入したときのレシートや領収書が必要ですが、確定申告書への添付は不要です。しかし、添付不要だからとすぐに処分してはいけません。確定申告をした年から一定期間は、明細書への記入内容を確認するために税務署がレシートや領収書の提示や提出を求める場合があります。

万が一、税務署からの指示があった場合に備えて、セルフメディケーション税制を申告したレシートや領収書は自宅にまとめて保管しておきましょう。保管期限は、確定申告期限の翌日から5年間です。

また、いつでもセルフメディケーション税制の手続きがスムーズに行えるよう、医薬品を購入した際のレシートや領収書は常に保管することを習慣化しておきましょう。

このとき、スイッチOTC医薬品でない医薬品のレシートも保管しておくと、場合によっては医療費控除に利用できるかもしれません。ただ、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できないのでご注意ください。

また、勤務先の定期健康診断など、年に一度は必ず健康診査を受けることも忘れないようにしておきましょう。

まとめ

セルフメディケーション税制の手続きをするためには確定申告が必要です。その際、確定申告書には、健康診査や予防接種などの取り組みを行ったことを証明する書類と、セルフメディケーション税制の明細書を添付する必要があります。

明細書は「セルフメディケーション税制の明細書」で検索するほか、自治体のホームページでも入手できます。購入したスイッチOTC医薬品のレシートや領収書を見ながら必要事項を記入しましょう。また、レシートや領収書は税務署から確認のための提示を求められることがあるかもしれないので、確定申告期限の翌日から5年間は必ず保管しておきましょう。

参照 :
(※1)厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について
(※2)国税庁「No.1134 取組を行ったことを明らかにする書類の具体例
(※3)国税庁「2 申告・納付等の期限の個別延長関係
(※4)渋谷区「医療費控除及びセルフメディケーション税制の添付書類について