「イエス・バット法」という言葉をご存知でしょうか。会話する際に使うと効果的な応酬話法の一つですが、知らず知らずのうちに使っている人も少なくありません。

日常会話でも役に立つイエス・バット法はビジネスシーンでも大いに役立ちます。新社会人はもちろん、少し仕事に慣れてきてこれからその質や成績を上げていきたい人、よりよく人と接したい人はぜひとも身につけたいスキルです。

時代とともに変化しているイエス・バット法とその他の応酬話法を解説します。

  • ノートとペン

    イエス・バット法について理解を深めましょう

イエス・バット法とは

イエス・バット法とは、相手の意見を「そうですね」と肯定した後に「しかし」と否定の意見を述べる方法です。相手に反論したいときや、こちらの意見を納得してもらいたいときなどに有効な応酬話法で、一度相手の意見を受け止める姿勢を見せることで、議論を有利に進める効果があります。

応酬話法とは

イエス・バット法は、応酬話法の一つとされています。応酬話法とは、相手の意見や質問に対して応答するための基本的なトークスキルです。効果的に使うと潜在ニーズを掘り出し、会話を優位に進められます。ビジネスシーンはもちろん、日常においても人間関係を築く上で重要なスキルです。

応酬話法を使う意味

相手の潜在ニーズを引き出すことによってより深い新たな提案ができ、会話が弾むことによってあっさりと断られる可能性が少ないです。また、相手と今後のより良い関係構築につながります。

応酬話法は答えが決まっているコミュニケーションスキルではないため、話し相手や状況によって自分が繰り出す話法を変えていかなければなりません。

一問一答形式で応酬話法を使うのではなく、自らの直感とセンスでその場にあった応酬話法を使い分けることで、自分らしさを出しつつ話し相手の心を開けます。

イエス・バット法の使い方

「おっしゃる通りです。しかし~」のように、まず相手の意見を受け止める言葉を使います。そのあと、自分の意見を展開するために逆接の言葉を用います。

イエス・バット法は、相手の主張を真正面から受け止めることで「自分のことを認めてくれている」という相手の承認欲求を満たしつつこちらの主張に転じていくため、心理的な抵抗感を少なくしながら会話を続けられるメリットがあります。

近年にイエス・バット法が使われない理由

画期的な方法としてビジネスパーソンの間で広く普及してきたイエス・バット法ですが、近年ではさまざまな理由から使われる場面が少なくなっています。その理由をしっかりと理解し、正しく効果的に使うことが大切です。

■「しかし」に対する警戒や不信感

イエス・バット法は一度肯定のクッションを入れますが、その後に「しかし」などの逆説の言葉が入るため、結局は否定されていると感じ、前述したような承認欲求が満たされない可能性があります。

逆接は後の言葉を強調する役割があるので、話し手にとっては自分の意見を強く通せるメリットがありますが、あまりにも軽い肯定の後などの説明は、押し売りを受けているような印象を相手に抱かれてしまうので注意が必要です。

■昔より簡単になった商品比較や選択

イエス・バット法は営業スキルの一つとして活用できます。例えば、以下のようなシーンです。

買い手「この仕様でこの金額だと、ちょっと高い気がするんだよね……」

売り手「確かにそうかもしれません。しかし、他社の製品と比べて使いやすいですし、今購入されれば、●●や△△も特典として差し上げますよ」

このように、セールスパーソンは言葉巧みにイエス・バット法を用いた営業トークを実践していました。

ところが、近年はインターネットの普及に伴い、消費者が簡単に自分たちの欲しいものを比較検討できるようになりました。営業担当者から説明を受けた商品を検索エンジンにかければ、その類似商品・価格帯まで瞬時にわかってしまう時代です。

ひとしきり説明を聞いた後、他社の同様の商品を購入したり、あるいはインターネットでもっと安く手に入れたりすることが容易になりました。そのため、イエス・バット法が営業シーンにおいて使われにくくなっているのです。

  • ノートに何かをメモしている人

    イエス・バット法が使われなくなった理由を知りましょう

イエス・バット法を使うときのポイント

従来のイエス・バット法のニュアンスはそのままに、逆接の言葉を言わない、あるいは使わないことを意識するだけで、相手の受け取るイメージが変わります。

<使用例>

「これ作ってみたのだけど、味はどうかな」

「うん、なかなかいい味だよ。少し甘めだけどね」

「いい味」といったん肯定した後、「少し甘め」と注文的要素を付け加えています。本来であれば、ここに「でも」や「だけど」といった「BUT」の意味の言葉をクッションとして加えてもいいのですが、あえて使わないことで否定的要素を相手に直接伝えないようにしています。

このようなやりとりができれば、相手に不快な思いをさせることなく、こちらの思っている本音の部分を伝えられるようになります。

イエス・バット法以外にもある応酬話法

イエス・バット法以外にも、会話に効果的な応酬話法がいくつかあります。会話を弾ませたり、商談を成功させたりするためには、それぞれの応酬話法の理解を深め、適切に使うことが大切です。

■イエスアンド法

イエスアンド法は、同調の言葉の後にセールスポイントを述べる方法です。

お客様が疑問や不安に思っている点をセールスポイントを交えながら説明できる上に、話し方によっては重要なセールスポイントを繰り返して伝えるチャンスも作られます。

<使用例>

「この商品は少し高いですね」

「そうですよね。実は〇〇という機能があり、これがこの商品の一番の特徴で他のお客様にも喜んでいただいている理由です」

■イエスイフ法

イエスイフ法は、顧客が希望する事柄を「もしも~」の架空話で提案する話法です。

この話法は例え話であっても相手の「イエス」を引き出すことにメリットがあります。「イエス」と答えられる質問を積み重ねることによって、本命の質問にも「イエス」と答えやすくなる心理学を応用しているのです。

<使用例>

「この商品は値段が高いですね」

「そうですね。では、少し値段が下がれば前向きに検討いただけますでしょうか」

「検討する価値はありそうですね」

■イエスソーザット法

「だからこそ」を使って顧客の不安点を逆手にとる話法です。顧客自身の不安点を自身で解決できる方程式が作られ、その裏付けになるような理由をこちらがはっきりと示すことで、商談成立に近づきます。

<具体例>

A:「今は子育てにお金がかかる時期なので、予算が厳しいです」

B:「おっしゃる通りです。そういった状況だからこそ助けになるこの商品が、お客様にぴったりです」

■イエスハウ法

「どのような~」を使って顧客の希望を引き出す話法です。

新たな条件を引き出し、付け加えの説明や交渉を行うことで自然に顧客が契約成立に考えを向けてくれるようになります。

<具体例>

A:「少しサービスの内容が充実していないです」

B:「申し訳ありません。ではどのようなサービスがあればご納得いただけますでしょうか」

イエス・バット法について理解しよう

従来のイエス・バット法も時代の変化とともに使い方を変えていくことで、さらに相手に響く交渉ができます。

同じ商品でも、営業担当者の印象でサービスを受けるかどうかの意思は変わるものです。営業に携わる人は、は相手により良い印象を与えるためにも、イエス・バット法をはじめとした応酬話法を理解しておくとよいでしょう。