タピオカミルクティー発祥の店「春水堂」(チュンスイタン)が、新たに台湾茶×ビールのコラボ商品『ティービール』を開発した。渋谷マークシティ店限定で3月1日より販売を開始する。どんな味がするのだろう? 開発の狙いは? 関係者に詳しい話を聞いた。

  • 春水堂が、ビールに台湾茶を注ぐ新商品『ティービール』を販売する

実際に試飲した - 感想は?

春水堂の東京・代官山進出は2013年のことだった。それ以来、日本国内には台湾スイーツブームが到来している。現在は都内を中心に神奈川、京都、大阪、福岡などで全19店舗を展開している春水堂だが、その17店舗目として2020年6月にオープンしたのが渋谷マークシティ店だ。最大席数70席の広々としたスペースを構えており、当店限定の「ティーカクテル」などチャレンジングなメニューを提供することでも知られている。

  • 春水堂 渋谷マークシティ店(東京都渋谷区道玄坂1-12-3 渋谷マークシティ4F)

ティービールは、そんな渋谷マークシティ店の限定商品。サーバーから注ぎたてのビールに特製の『鉄観音』あるいは『ジャスミン茶』のいずれかを注いで完成する。店舗では『鉄観音ティービール』『ジャスミンティービール』の2種類が販売され、価格はいずれも600円(以下いずれも税込)。

  • 『鉄観音ティービール』(左)と『ジャスミンティービール』(右)。3月1日より販売を開始する

まずはグラスに注がれたビールをひと口飲む(もちろんこれだけで旨い)。次に溢れないよう、慎重に台湾茶をグラスに注ごう。いずれも想像していたより、とろみがある。注がれた台湾茶はビールの炭酸に迎えられながら混ざっていく。特に鉄観音は色も濃いため、その様子を見ているだけでエンタメ感がある。なおこの時点で、ビールの泡もモクモクと復活し始めた。

  • 鉄観音をビールに注いでいく

グラスを鼻に近づけると、なるほど台湾茶の香りが感じられる。こんなビールは過去に飲んだことがない。さて、気になるお味は―――。『鉄観音ティービール』は、口に含むと鉄観音の芳ばしさが広がり、飲みごたえはスッと引き締まった味だ。カクテルのような甘さはないため、何杯でも飲めてしまいそう。一方で『ジャスミンティービール』は、飲み始めこそジャスミンの香りは大人しいものの、後味が非常に上品で、爽快な香りが鼻に抜けていくのを感じた。

いずれの台湾茶も、ビールに負けない強い香りを持ちながら、ビール本来の風味を損なうことなく絶妙なバランスで共存していた。どちらも旨い。それにしても、これはまったく新しいビール体験だ。

開発の舞台裏 - 台湾に逆輸入も?

開発者のオアシスティーラウンジ 東日本エリア スーパーバイザーの伊藤貴弘氏に話を聞いた。

渋谷のど真ん中という好立地にあり、以前から「メニューにビールを追加して欲しい」との要望が高かったという当店。しかし台湾茶の専門店であり、メニューには必ずお茶を絡めなければならない。また新商品の開発には、台湾からのGOサインを待つ必要もあった。そこで「ビールにはいつか挑戦したかった」と語る伊藤氏も、まずは『タピオカカルーアミルクティー』(鉄観音×カルーア×牛乳×タピオカ)、『ジャスミンスパークリング』(ジャスミン茶×スパークリングワイン)といったティーカクテルの提供から始めた。

  • 店舗の内観(同社ホームページから)。割合としては女性客が多いが、客席数が多くて間隔も広いため、男性が1人でも気軽に入りやすい雰囲気だった

その間も、自宅ではコツコツとティービールのレシピづくりに励んだという。ビールが得意でない奥さんの協力を得て「ビール好きにはもちろん、あまり得意でない人にも飲める」「男性でも女性でも楽しめる」「中華料理の揚げ物を食べながらスッキリ飲める」ティービールを模索していった。その結果、台湾から開発の承認を得た2020年下期には、すでにある程度の方針が固まっていた。

その後も試行錯誤は続いた。台湾茶を入れた後にビールを注ぐと泡立ちが悪いので、順序を逆にした。また普段、飲んでいる台湾茶を混ぜたのでは「ただの薄いビール」になってしまうため、とりわけ濃厚に抽出した台湾茶を使うことに。さらにビールの苦味、お茶の渋みがうまく調和するよう、長時間煮詰めたキビの砂糖シロップの甘みでバランスを調整した。仕事帰りの人たちに飲んで欲しいという思いから、自分が仕事終わりに飲んだときのインスピレーションを大事にしたそうだ。

  • 店舗の内観(同社ホームページから)

「台湾の春水堂は、世代や男女を問わずお茶と料理を楽しめる空間です。日本の春水堂はお客様の7~8割が女性ですが、男性にも楽しんでいただける空間にしたい、との思いがあります。そのため今回提供するティービールが良いきっかけになるのでは、と期待しています。また、コロナ禍の収束後には『面白いビールがあるから』という理由で、それまで台湾茶に興味がなかったお客様にも足を運んでいただけたら嬉しいです」と伊藤氏。

ちなみに『タピオカ豆乳抹茶』など、日本オリジナルのメニューが本場台湾の春水堂に逆輸入されていった例もある。渋谷発のティービールも、反響次第では向こうに持っていけるとの話。「そうなったら誇らしいですね」と笑顔を見せていた。


この時期、春水堂には春限定商品も登場している。『中華風ポロネーゼ』は、芽キャベツ、トマト、カイワレなどの旬野菜をたっぷり使った汁なし混ぜ麺。五香(ウーシャン)風味の肉味噌と春水堂オリジナルスパイス入り醤油に絡めた麺に、粉チーズがトッピングされている。成人男性でも満足できるボリューム感があった。

  • こちらが『中華風ポロネーゼ』(950円)。もちもちの麺に甘めの肉味噌を絡めて食べる

また、期間限定で再販売となったのが『タピオカ苺ミルクティー』。フレッシュな苺を贅沢に使い、ジャスミンティー×ミルクをブレンド。たっぷりのクリームと苺のスライスがトッピングされている。どちらも発売日は3月1日で、5月末頃に販売終了を見込んでいる。

  • 『タピオカ苺ミルクティー』(750円)。氷と苺とタピオカの歯ごたえが楽しい、これぞ元祖 春水堂のタピオカ苺ミルクティー。優しく上品な甘さ、だからリピートしたくなる

この状況もあり、春水堂 渋谷マークシティ店でも時間短縮営業を行っている。来店の際は営業時間の確認をしよう。なお店内の入り口は扉が常時開放されており、換気にも気を遣っているようだった。ティービールは期間限定商品ではなく、この先も、来店したらいつでも飲める準備がされている。いまは独りで楽しみ、コロナが開けたら友人、会社の同僚と連れ立って飲みに来るのも良いだろう。