『愛の渦』『二重生活』『止められるか、俺たちを』『さよならくちびる』など、20代にして、多くの代表作を持ち、演技派女優としてまい進している女優・門脇麦の最新主演映画『あのこは貴族』が2月26日より公開になった。

山内マリコ氏の原作小説をもとに、結婚こそが幸せという価値観で生きて来た良家の子女の華子(門脇)が、全くことなる人生を生きて来た美紀(水原希子)と出会い、自身の人生を模索し始める。

自らの生き方を見つめていくヒロインを演じた門脇に、自身の仕事や人への向き合い方を聞いた。また、昨年開始したInstagramのことやSNSの活用法からは、素顔がちらりと覗いた。

  • 『あのこは貴族』で主演を務めた門脇麦

■『あのこは貴族』はヒロイン解放の物語

――親の敷いたレールの上を歩いてきた華子ですが、大人になってから、自分自身を見つけようともがき始めます。本作から、どんなメッセージを受け取りましたか?

華子という女性を主人公にしてはいますが、女性に限らず、人は生まれ育った場所や環境、仕事、出身校といったことで、知らず知らずのうちに自分のことをカテゴライズしているってことあると思います。

学校や結婚など、確かに華子は両親が敷いたレールの上を歩かされてきたかもしれない。でも、そこを実際に歩いてきたのは華子です。外れることなしに。大人になればなるほど、敷かれたレールの上を歩いたままのほうが楽ですよね。ということは、歩かされているようでいながら、その上を歩くことを選択してきたともいえる。

でも、自分を見つめ直したり、人との出会いや経験によって新しい自分を見つけてあげたりすること、認めてあげること、自分のことを許してあげることで、そこから外れることが可能になり、解放されていく。そうした人間の物語だと思いました。

  • (C) 山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会

■以前は“やってる感”の中で安心していた

――門脇さんは、ご自身のキャリアや年齢について考えることはありますか?

あんまりないですね。ただ、今が一番楽しいです。経験を積むことによって、だんだんバランスが取れるようになって、今まで力み過ぎていたんだなとか、そうしたことが分かるようになりました。最近は釣りをしたり山に行ったり、休みの日は外に出るようにしてますが、以前はそうした余裕がありませんでした。

ストイックに追い込むことで安心感を覚えていたのでしょうね。でもそれはある意味で自己満足というか、“やってる感”の中で安心してたんだなと気づいたんです。それでやめようと。今の方が想像以上に楽だし、すごく精神的にも健康で以前よりもアイディアも作品欲も自然と湧いてくる感じがします。プライベートも仕事もいい感じで両立できるようになりました。

――本作の華子ではありませんが、門脇さん自身も解放されたんですね。仕事現場でどなたか影響を受けた人はいますか?

三浦貴大さんです。わたしが仕事への向き合い方に悩んでいる時期に、たまたま何度か共演する機会があって。三浦さんの作品への取り組み方が本当に素敵で、ものすごく影響をうけた先輩です。

■人と向き合っている感覚を忘れたくない

――多くの人と関わるお仕事ですが、仕事人として、何か気を付けていることはありますか?

真心を持つこと。ちょっとしかいられない現場もありますし、大河ドラマのように期間をかけて向かい合う仕事もありますが、どの現場でも変わらず真心を持つこと。誠実に人と向き合うこと。たくさんの人と会えば会うほど、適当におざなりにしようと思えばできると思うんです。でもちゃんと真摯に向き合う。エネルギーを使うことだけれど、そこは心掛けています。

――常に、対象が人であることを意識している。

そうですね。分かりやすく具体的に例を出すならば、たとえばこうした取材でも、どうしても同じ質問が出てきますよね。でも、質問内容は同じでも、質問して下さる方は毎回違うわけだから、目の前にいる方とお話しているんだという感覚になれば、全然大変じゃない。ちゃんと人と向き合うという感覚を持っていると毎回新鮮な気持ちでしゃべれるわけで。撮影の現場には本当にたくさんの人がいて、さらに現場によってスタッフさんが変わるので皆さんのお名前を覚えるのは確かに大変ですが、そういう部分を今後も大切にしていきたいです。