「疲労困憊」は、心身ともに疲れたときに使う四字熟語として知られています。通常の「疲労」とどう違うのか、またどのような類語があるのでしょうか。ここでは、ビジネスシーンでも使えるよう、「疲労困憊」の正しい意味や適切な使い方を解説していきます。
「疲労困憊」の意味
疲労困憊とは、「ひどく疲れている」という意味の言葉です。普通の疲れではなく、苦しいほどに疲れて、精も根も尽き果てている様子を表しています。
精神的な疲れと身体的な疲れ、どちらの場合にも使います。社会人なら仕事上で次々とトラブルに見舞われることもあるでしょう。そんなときは、「トラブル続きで身も心も疲労困憊した」と表現できます。
疲労と困憊の2つの言葉について
疲労困憊は「疲労」と「困憊」、2つの熟語から成り立つ四字熟語です。疲労は「疲れ果てる」、困憊は「疲れ苦しむ」と同じ意味合いの言葉です。同じ意味合いの言葉を重ねることで、疲れの度合いを強調しています。つまり、疲労困憊は「最大級の疲れ」を表した言葉です。
疲労困憊のニュアンスとは
一時的な疲れの場合は疲労困憊とは言いません。「困難が続いて疲れ果てている」「疲れ果てて立ち上がれない」といった状態の際に使いましょう。通常の疲れで疲労困憊を多用していると、「心底疲れている」というニュアンスが薄れてしまいます。
読み方は「ひろうこんぱい」
疲労困憊の正しい読み方は「ひろうこんぱい」です。「憊」は普段あまり見慣れない漢字のため、初見で読むのは難しいかもしれません。読み間違いをしないよう、ぜひこの機会に読み方を覚えておきましょう。また、読み方と合わせて、漢字の書き方も覚えてみてください。
「疲労困憊」の使い方と例文
苦しいほど疲れきった状態を表す疲労困憊は、あまり多用すると疲労の度合いが伝わらず、「大げさだ」と思われる可能性があります。特にビジネスシーンにおいては、「疲労困憊するほど頑張った」と思われるような使い方を心掛けましょう。
疲労困憊のよく使う言い回しは、「疲労困憊する」です。その他、「疲労困憊の原因」「疲労困憊の日々」「疲労困憊に陥る」などがあります。ここから例文を交えて、疲労困憊の使い方を見ていきます。
疲労困憊する
疲労困憊の活用形は、「疲労困憊する」です。一般的な使い方は、「疲労困憊する」というかたちで、動詞として使うことで自分の状態を表しやすくなります。
<例文>
- 度重なるトラブルで、現場は疲労困憊している
- 仕事のしすぎによる累積疲労から疲労困憊してしまった
疲労困憊の原因
疲労困憊の状態に陥った要因のうちで、それを引き起こす元となったものを指す際に使います。
<例文>
- 疲労困憊の原因は、連日の深夜残業による慢性的な疲労である
- 育児によるストレスが、彼女の疲労困憊の原因であった
- 疲労困憊の原因には、身体的なものと、精神的なものがある
「疲労困憊」の類語・言い換え表現
疲れ果てていることを表す疲労困憊ですが、似たような意味を持つ言葉があります。
これから紹介する類語・言い換え表現は、普段からよく使われますが、似ているようでそれぞれに微妙なニュアンスの違いがあります。この点を理解すれば、シーンに合わせて正しく使うことが可能です。
憔悴
憔悴(しょうすい)は、「病気や心痛によってやつれる」という意味で、心痛が原因で身体が痩せ衰える状態のことです。
疲労困憊には「何かを頑張って行動した」というポジティブなニュアンスがありますが、憔悴にはポジティブなニュアンスはありません。病気をイメージさせる言葉なため、注意して使いましょう。
ボロ雑巾
ボロ雑巾(ぼろぞうきん)は、「酷使してボロボロになった状態の雑巾」のことを指し、「ボロ雑巾のようになる」は、「疲れて憔悴、へとへとになった」という状態の比喩的表現です。「朝から晩まで働き詰めで、ボロ雑巾のようになった」というように使います。
謙遜や自虐の意味で自分に使う際には大丈夫ですが、誰かの姿を現す際には失礼にあたるため注意しましょう。
精根尽きる
精根尽きる(せいこんつきる)は、「何かを行う体力も精神力もなくなり、くたくたの状態である」という意味です。「精根」とは「物事をする体力と精神力」のことを指します。
他に「精根尽き果てる」や「精根を使い果たす」という言い回しがあります。疲労困憊によく似た表現といえるでしょう。
「疲労困憊」と似た意味の四字熟語
疲労困憊に似た四字熟語はいくつかありますが、同じように疲れていることを表現していても、微妙にニュアンスが異なり、使い方にも違いがあります。
状況に応じた使い方をしないと、場合によっては誤解を招く可能性も。社会人として、正しい意味や使い方を知って、シーンに合わせて言葉を選んでいきましょう。
満身創痍
満身創痍とは、「心身ともにボロボロの状態である」という意味です。「まんしんそうい」と読みます。文字のとおりに解釈すれば、「全身が傷だらけ」といった意味ですが、一般的には「精神的、肉体的に打ちのめされている状態」という意味合いで使われることが多いようです。
疲労困憊と違うところは、満身創痍には「何かに痛めつけられた」というニュアンスがある点です。
<例文>
- 満身創痍にもかかわらず、彼は優勝を勝ち取った
- 度重なる批判に晒され、もはや満身創痍だ
精疲力尽
精疲力尽は、「ひどく疲れて弱る」という意味です。「せいひりきじん」と読みます。精も根も使い果たして、疲れきっている、疲弊している様子を表した言葉です。
疲労困憊と同じ意味ですが、疲労困憊のほうが一般的で聞きなれた言葉であるため、口語表現よりも文語表現として使うとよいでしょう。
<例文>
- このところトラブル続きで精疲力尽だ
- いつも元気な彼女も、今回ばかりは精疲力尽のようでミスが続いている
意気消沈
意気消沈は、「いきしょうちん」と読み、「元気をなくして、気分が落ち込んでいる」という意味です。疲労困憊と違うところは、「意気消沈」は肉体的な疲労は表していません。「精神的に落ち込んでいる」ということの最大級の表現と言えます。
<例文>
- 最近ミスが多くて意気消沈している
- 意気消沈している彼をどうやって励ましたらよいだろう
半死半生
半死半生は「死にかけている」「もう少しで死にそうな様子」という意味です。「はんしはんしょう」と読みます。「死にそうなほどつらい、ひどい」という悪いニュアンスがあるため、使うときには注意が必要です。フォーマルなシチュエーションでは使わないほうがよいでしょう。
<例文>
- あまりにも過酷な環境だったため、半死半生だった
- 半死半生になるくらいなら欠場したほうがマシだ
「疲労困憊」の対義語
疲労困憊には、典型的対義語はありません。しかし、疲労困憊が「クタクタの状態」を表現する四字熟語ならば、その対義語は「エネルギッシュでいきいきとした状態」を表す言葉と言えるでしょう。そのような視点から見た疲労困憊の対義語を、四字熟語の中から紹介します。
元気溌剌
元気溌剌は、「げんきはつらつ」と読み、「健康で生き生きしていて活力が満ち溢れている」という意味で、疲労困憊の対義語となります。
元気は「心身の活動の力」、溌剌は「いきいきしているさま」という意味です。同じ意味合いの言葉を重ねることで、「とても元気」な状態を表しています。
意気軒昂
意気軒昂は、「元気で威勢のよい様子」という意味で、疲労困憊の対義語となります。「いきけんこう」と読み、意気は「あふれる元気」、軒昂は「高く上がる」という意味合いがあります。
銀鱗躍動
銀鱗躍動とは、「勢いよく活動することのたとえ」です。「元気に活動する」という意味で、疲労困憊の対義語となります。読みは「ぎんりんやくどう」で、口語よりも文語表現に適した四字熟語です。
魚がうろこを銀色に輝かせて泳ぐことから、「いきいきと元気に活動する」という意味に転じました。
「疲労困憊」の英語表現
疲労困憊が、ただ単に「疲れた」という意味ではないことを解説してきました。
「疲れた」ということを英語では、「tired」だと覚えていらっしゃる方は多いでしょう。しかしtiredは単に「疲れた」ということで、疲労の程度や種類、内容については表現していません。
tired以外にも、英語にはさまざまな「疲れた」を表現する英単語があり、細かいニュアンスが異なっています。例文を挙げて紹介します。
tired
英語のtiredは、make~tiredという使い方が一般的です。「へとへとに疲れた」という場合は、「tired out」を使います。
<例文>
- I am all tired out.
私はへとへとに疲れたよ。
dead tiredを使って、I am dead tired. と言い換えることもできます。これは口語的な表現であり、「死ぬほど疲れた」といったニュアンスになります。
exhausted
exhaustedは、exhaustの過去分詞の名詞・形容詞的用法です。語源的には、水を容器の中から外に汲みだして空っぽになったこと(状態)を言います。精力を使い果たした、倦怠といったニュアンスです。
exhaustedは、単に「疲れた」(tired)ではなく、「疲れ果てている」状態ですが、日常会話ではtiredよりもexhaustedのほうを使うことが多いようです。
<例文>
- Feeling exhaust is so common that it has its own acronym, TATT, which stands for tired all the time.
倦怠感はよくあることで、"常に疲れている"の頭文字を取って TATTと言われている。
worn out
worn out は、(布などが)すり切れたという意味で、すり切れるほどに疲れたときに使います。日本語で「ボロボロに疲れた」と表現することと同じ発想です。
<例文>
- She was worn out from looking after those naughty children.
彼女は、いたずらな子供たちの世話で、くたくたに疲れてしまった。
spent
spentはspendの過去形・過去分詞で、「費やす」という意味です。金を費やすとか、時間を費やす(過ごす)という使われ方が圧倒的に多いのですが、「エネルギーを使い果たした」姿をたとえて「疲れた」という表現方法もあります。
<例文>
- Emily spent all his energies on his work.
エミリーは彼の仕事に精力を使い果たしてしまった。
「疲労困憊」をビジネスシーンで正しく使おう
疲労困憊は「とても疲れている」「心身ともに疲れて苦しい」という意味合いの四字熟語です。そして「最大級の疲れ」を表します。特にビジネスにおいては、些細な疲れを表現する際に疲労困憊を多用するとイメージダウンになる可能性があるため注意が必要です。
使ってよいシチュエーションや正しい表現方法を学んで、円滑なコミュニケーションを目指しましょう。