JR東日本は1日、東北新幹線「はやぶさ」「やまびこ」の一部列車で「新幹線オフィス」の実証実験を開始した。東京発盛岡行の下り「はやぶさ103号」が実証実験の初列車となり、東京~仙台間にて1号車を「リモートワーク推奨車両」として使用した。

  • 東北新幹線「はやぶさ」「やまびこ」の一部列車で「新幹線オフィス」の実証実験が始まった

リモートワークが広がり、ウェブ会議が加速度的に普及する中、JR東日本は新幹線車内でリモートワークが可能な車両を設定し、利用動向や課題・要望を調査する実証実験を実施。「新幹線オフィス」対象列車の1両を「リモートワーク推奨車両」とし、車内でのウェブ会議や携帯電話等での通話が可能になる。快適で効率的なリモートワークを実現するため、各企業と連携し、Wi-Fiルーターをはじめ機器等の貸出しも行われる。

実証実験は前半(2月1~12日)・後半(2月15~26日)の2回に分け、土休日を除き実施される。前半は東北新幹線の下り「はやぶさ」2本・「やまびこ」2本、上り「はやぶさ」3本・「やまびこ」1本を「新幹線オフィス」対象列車に設定。「リモートワーク推奨車両」に座席指定はなく、利用にあたって追加料金も不要で、B席・D席以外の空いている席を利用できる。ただし、満席となった場合は利用できない。

  • 「新幹線オフィス」実証実験の初列車は下り「はやぶさ103号」

  • 「はやぶさ103号」では、1号車が「リモートワーク推奨車両」に

実証実験の初列車となった下り「はやぶさ103号」は7時40分すぎ、東京駅の22番線ホームに入線。「リモートワーク推奨車両」は1号車で、1~5列目のA・C・E席(計15席)を利用できる。初日ということもあり、7時56分に東京駅を発車した時点で1号車の利用者は少なかったが、上野駅発車後、「この列車の1号車は新幹線オフィス実証実験のため、車内でテレワークが可能なリモートワーク推奨車両としております。ご乗車の皆様がご利用になれますので、ご希望のお客様は1号車に移動の上、ご利用ください」と車内アナウンスがあり、その直後に3~4名ほど1号車へ向かう利用者の姿が見られた。

「リモートワーク推奨車両」では、専用案内スタッフが各企業と連携した機器等の貸出しを行う。今回の実証実験では、JR東日本と共同で「空間自在プロジェクト」を進めるKDDIがauのWi-Fiルーターを提供し、無料で利用できるほか、Think Labがメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」、富士フィルムがアルコール除菌シート「Hydro Ag+ クロス(アルコール60%)」を提供。客室内にヤマハのスピーチプライバシーシステム「VSP-2」も設置した。利用者にアンケートも実施しており、協力するとJR東日本の運営するシェアオフィス「STATION BOOTH」の無料利用チケットをもらえるという。

  • 「リモートワーク推奨車両」ではauのWi-Fiルーターやメガネ型ウェアラブルデバイス、アルコール除菌シートの貸出しが行われる

  • ヤマハのスピーチプライバシーシステム「VSP-2」はテーブル上や荷棚の上部に設置。客室内に「新幹線オフィス」実証実験の案内も掲出されていた

「はやぶさ103号」が仙台駅に到着した後、報道関係者らのインタビューに対応したJR東日本事業創造本部の中村元氏は、「新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、新しい暮らし方・働き方が広がってきています。あわせて移動中でも働く環境を求めるニーズが高まっているのではないかと感じ、今回の実証実験を行うこととなりました」と挨拶。東北新幹線で実証実験を開始するにあたり、「東京~仙台間は当社の中でもビジネス需要が多いこともあり、実証実験の第1弾として設定しました」と説明する。

「新幹線オフィス」で想定される利用者層に関して、「新幹線で出張等の移動をされる方々はもちろん、ワーケーションのような新しい暮らし方をめざしている方々にも利用していただけたら」と中村氏。今回の実証実験を通じ、「新幹線でどういったワーク環境が求められているのか、どの区間でニーズがあるか確認したい」「新幹線の車内で働く際、音や視界といったセキュリティ面を気にされるお客様も多いと思いますので、実証実験でしっかり確認できれば」と話す。人・機能が都心に集中した拠点集約型の社会から、場所・時間にとらわれない暮らし方・働き方を重視する分散型社会へ転換を図る中での新幹線の役割について、「都心のオフィスと地方・郊外のオフィスをつなぐ移動手段として、新しい働き方も出てくるのでは。両方合わせて利用する方々など、新幹線の移動時間を有効に使っていただけたらと思います」と語った。

実証実験の前半は2月12日まで。実証実験の後半は2月15日から始まり、下り「はやぶさ」1本・「やまびこ」4本、上り「はやぶさ」1本・「やまびこ」4本を「新幹線オフィス」対象列車として運転する。JR東日本は約1カ月にわたり実施する実証実験で得られた結果をもとに、移動中の車内で快適に仕事ができる「新幹線オフィス」の検討を進め、新たな働き方の実現をめざすとしている。