皮下脂肪、内臓脂肪、中性脂肪、これらの違いをわかっていますか?そして、加齢とともに脂肪がつきやすい身体になるのはなぜだかわかりますか?

今回のテーマは、みんなが気になる「脂肪」。いつの間にか増えた脂肪を減らし、太りにくい身体になるための方法をお伝えします。前編は栄養学がご専門の石原先生、後編は運動生理学がご専門の髙石先生に、それぞれお教えいただきます!

後編は、「 1日15km、週3〜4日の自転車運動が目安」「もっと脂肪を燃やしたいならキツい運動をすること」「キツい&気持ちいいを繰り返すインターバル走行を」といった内容について伺います。

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▼教えていただく先生
名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科 博士(人間・環境学)髙石 鉄雄 教授

1988年神戸大学大学院卒、1989年名古屋市立大学教養学部助手等を経て、現在は名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科生体制御情報系教授。京都大学博士。運動生理学とバイオメカニクスを使って、自転車運動が健康づくりにもたらす効果を研究している。

――髙石先生、自転車運動で脂肪を燃やすにはどのくらいの運動量が必要なのでしょう?

厚生労働省が推奨している健康づくりの目安は1日300キロカロリーを運動で消費するというものです。歩くと1日1万歩、これを自転車に置き換えると15㎞程度を1時間で走行することになります。脂肪燃焼を目標にするなら、このくらいの自転車運動を週3?4日行うことが必要です。運動時間をとりにくい社会人が実践するなら、やはり自転車通勤が適しているでしょうね。

――その自転車運動時に、より脂肪燃焼の効果を上げる方法はありますか?

よりカロリーを使うには、「非効率で無駄な動き」を取り入れる方がいいです。ペダリングは軽いギアでくるくると回す方がエネルギー消費としての効果が出やすくなりますし、止まって走り出す際のストップ&ゴーも非効率な運動のひとつです。

――そのくらいなら日常的に取り入れられそうですね。

本当はね、スピードを出して30分から1時間程度本気で自転車をこぎ続けるのが一番いいんですよ。ただ日本ではスピードを出しつつ安全に走り続けることができる環境が少ないので難しいと思いますが、できる環境が揃うならぜひ取り入れてもらいたいですね。スピードを出さずにエネルギー消費を意識するなら長い時間走り続けることが大事。休日のトレーニングとして「ちょっとキツい」と感じるくらいの強さで2~3時間を目標に走るといいでしょう。

――やはり、運動のキツさもエネルギー消費には重要なんですね。

そりゃあそうです。脂肪を燃やしたいならラクな運動よりもキツいと感じる運動をしないといけません。キツさの基準となるのが心拍数で、息が上がった「ハアハア」という状態は心拍数が上昇し、その人にとってややキツい運動になっている表れです。ラクな方、しんどくない方を選ばずに、あえて坂道を上がるなど負荷のある行為を取り入れてほしいですね。

――わかりました。そのような強い運動によって脂肪燃焼が進むのはどういうメカニズムなのでしょうか。

運動で心拍数が上がると必要とする場所へ血液を再配分するなど交感神経が制御の役割を果たします。ある程度強い運動を続けて行うと、糖だけではエネルギーが足りなくなるために脂肪の燃焼が増大します。また、持久的な運動を習慣的に行うと、同じ強さの運動であっても脂肪燃焼の割合が増えて、中性脂肪の減少、HDL(善玉)コレステロールの増加につながります。

――やみくもに強い運動をするのは難しいので、何か取り入れやすい方法はありますか?

それならアップダウンを意識したインターバル走行がいいでしょう。例えば上り坂を頑張って走り、下り坂で上がった心拍をダウンさせるという緩急によって脂肪燃焼しやすい身体になっていきます。これは自転車ならではの運動方法ですね。

――それなら下りの気持ちよさをご褒美にがんばれそうです。では先生、他にも気をつけるべき生活習慣があれば教えてください。

食については石原先生がお話しされましたが、私も何をどのタイミングで食べるのかを考え、余計なエネルギーをためないように意識することが大切だと思っています。夜は糖質や過剰な脂質を控え、食べる順番にも工夫してみてください。食物繊維が豊富な食材からタンパク質の順に摂り、そこから5?10分ほどあけて糖質をしっかり噛むと甘みを感じられ、満腹中枢を刺激して食欲が落ち着きます。

――食べる順番で満腹感が得られるようになるのはいいですね。他に意識するべきことはありますか?

とにかくラクな方へ流れないことですね。エスカレーターよりも階段を使う、それ以上なら階段の一段飛ばしを全力でやってみるなど、自分の体力に合わせて「ハアハア」と息が上がる機会を増やすようにしてください。ハーフスクワットなら1日50回を2セットくらいを目安にすると、脚筋力の維持だけでなく筋肉増強にもつながり、運動できる身体を保つことができます。

――とにかく身体を動かすこと、ラクな運動よりキツいと感じるレベルの運動を行うことが脂肪燃焼に効果があることがよくわかりました。髙石先生、ありがとうございました。

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※この記事はCyclingood掲載「そろそろ、脂肪がつきにくい身体に変える!」より転載しています。