皮下脂肪、内臓脂肪、中性脂肪、これらの違いをわかっていますか?そして、加齢とともに脂肪がつきやすい身体になるのはなぜだかわかりますか?

今回のテーマは、みんなが気になる「脂肪」。いつの間にか増えた脂肪を減らし、太りにくい身体になるための方法をお伝えします。前編は栄養学がご専門の石原先生、後編は運動生理学がご専門の髙石先生に、それぞれお教えいただきます!

前編は、「脂肪の役割と種類について」「加齢によって太りやすくなる理由は基礎代謝の減少」「これで脂肪がつきにくい! 食事の摂り方」といった内容について伺います。

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▼教えていただく先生
龍谷大学 農学部 食品栄養学科博士(農学)石原 健吾 准教授

2000年京都大学農学研究科応用生命科学専攻修了後、椙山女学園大学生活科学部助手、2004年同学部講師、2012年同学部准教授。2015年より龍谷大学農学部食品栄養学科准教授、2018年より龍谷大学農学研究科食農科学専攻准教授も兼任。趣味はサイクリング、スノーボードなど。

――先生、今回は多くの中高年者が悩まされる脂肪についてしっかり学びたいと思っています。よろしくお願いします。

わかりました。歳を取ると太りやすくなるのは仕方ないと諦めてしまわずに、正しく理解して健康的な身体づくりに役立てていただきたいです。

――それではまず、そもそも脂肪とは何なのかを教えていただけますか?

脂肪には2つの役割があります。ひとつは余分なエネルギーを蓄えること、ふたつ目は体温を維持してエネルギーを逃さないようにする役割です。食べ物が十分にないときには、蓄えられる余分なエネルギーがほとんどないので、皮膚の下に皮下脂肪としてエネルギーを蓄えると同時に、エネルギーを逃さないようにすることが最も効率が良くなります。中高年になると脇腹や内股につくのはこの皮下脂肪です。

――では「内臓脂肪」が増えていくのはどうしてですか?

身体がエネルギーを吸収する場所は小腸です。小腸で吸収された脂肪の粒子が血液によって皮下脂肪へ運ばれ、脂肪として蓄えられます。皮下脂肪が十分にあるのにエネルギーを過剰に摂り続けた場合、その脂肪が皮下脂肪としてさらに蓄積されてお尻や太ももに肉がついていく、または小腸で吸収した脂肪が小腸の血管の周りにたまり、内臓脂肪としてお腹まわりにつくという風に大きく2つのタイプに分かれます。

――なるほど。エネルギーの過剰摂取が原因なんですね。では健康診断でよく見る中性脂肪とは何ですか?

中性脂肪とは、小腸で吸収した脂肪や肝臓で合成された脂肪が血液中を漂っている量を表しています。健康診断は大抵、朝の空腹時に採血するので、本来的には小腸で吸収された脂肪が血液から運ばれた後であり、血液中の量は食後に比べると少なくなります。中性脂肪が高いという結果が出たら、それは「あなたの血液の中には、まだ食後のように脂肪があふれていますよ。食べ過ぎや運動不足ではないですか」というメッセージだと思ってください。

――ああ、耳が痛いです。では中高年になると脂肪がつきやすくなってしまうのはやはり基礎代謝の減少が原因なのでしょうか。

そうです。基礎代謝とは1日中、横になっていたとしても、呼吸や血液の循環、消化吸収など生命活動の維持に消費されるエネルギーで、普通の生活をしている人の1日のエネルギー消費量の60%を占めています。この基礎代謝量が加齢とともに減少するため、若い頃と同じ食生活や活動量を続けていると消費できないエネルギーが身体に蓄積されやすくなります。つまり、加齢によってすべての人が「太りやすく」なるのです。

――……ショックですね。年齢を重ねると誰もが「太りやすく」なるのは避けられないと。では先生、どうしたらいいのでしょう?

アメリカで行われた基礎代謝量と体重の関係を調査した研究結果では、基礎代謝量は太りやすさに関係するものの、実際に太るかどうかは「運動などによる1日全体のエネルギー消費量」と「1日の食事の量やタイミング」の方が影響していると考えられています。つまりこの2つを意識して生活に取り入れると「太りやすくなる」ことを防げる可能性が高いのです。

――それでは先生、まず食事についてどうすればいいのでしょう? 現在、糖質オフなどいろいろなダイエット法が注目されていますが……。

食事で脂肪を落とすために最も効果的なのは寝るときに軽い空腹になっていること。夕食の時間を早くしても、量を減らしても構いません。遅い時間に食べて満腹で寝る習慣は確実に太ります。寝る2~3時間前には食事を終え、さらに夕食には糖質を減らした方が体脂肪蓄積予防には効果があります。

――夕食に糖質を減らすと脂肪を蓄積しにくいのはなぜでしょう?

それは、体内で糖質などが脂肪に合成される時間帯が夜だからです。血糖値が上がりにくい低糖質の食事によってインスリンの分泌が抑制されるとともに脂肪の合成も抑えられ、脂肪の分解が活性化されます。

――最後に1日のエネルギー消費量を増やすことについて、自転車運動の良さをどのようにお考えですか。

1日全体のエネルギー消費量を増やすという点では、特に太っている人にとって自転車運動は良いと思います。同じ時間運動するならば、スポーツバイクを利用すると歩行よりもエネルギー消費量が高く、ランニングなどに比べても長い時間運動を継続しやすいことから脂肪燃焼に適した運動になると思います。そのあたりは髙石先生に詳しく話していただきましょう。


石原先生による脂肪をためにくい食事の方法は今すぐ取り入れたいとても興味深いお話でした。後編は髙石先生に脂肪を燃やす自転車運動についてお話いただきます。お楽しみに!

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※この記事はCyclingood掲載「そろそろ、脂肪がつきにくい身体に変える!」より転載しています。