「繁忙期」は、クリスマスケーキの販売スタッフや、セールシーズンのアパレル関係業務など、サービス業のアルバイトの求人欄で「繁忙期手当有」「繁忙期につき急募」といった見出しで見かけることがある言葉です。また「この時期は繁忙期に入るため○○しましょう」「繁忙期は残業が多くなります」などの表現を耳にしたこともあるかもしれません。
繁忙期の意味や使い方、言い換え表現や、業界別の繁忙期をご紹介します。
繁忙期の意味とは「仕事が特に忙しい時期」
まず「繁忙」は「仕事が多くて忙しいこと」です。つまり「繁忙期」は、来客や注文が増える一定期間など、特に仕事が忙しい時期のことを指す言葉です。
繁忙期の読み方
繁忙期の読み方は「はんぼうき」です。
繁忙と同じく「はんぼう」と読み、意味も「忙しいこと」を指す「煩忙」という言葉がありますが、「煩忙期」とは言わないので間違えないように注意しましょう。
繁忙期の注意点
繁忙期という言葉を使用する際の注意点として、基本的に一日単位ではなく、数週間から数カ月など、一年のうちで忙しくなる一定の期間において用いられる言葉だということを覚えておきましょう。
また繁忙期は一度きりではなく、旅行関係であればゴールデンウィークや夏休み、年末年始など、繁忙期が複数ある業界・職種も存在します。
なお個人単位で忙しい時期というよりは、会社や組織、業界全体などが忙しい時期を指すのが一般的です。
繁忙期と最盛期との違い
最盛期は、勢いが最も盛んな時期という意味の言葉です。「イチゴの旬は春だが売り上げ的には12月から1月が最盛期だ」「平安時代に貴族文化は最盛期を迎えた」などの使い方をします。
物事の最高潮を迎えるという点で繁忙期と似ている部分がありますが、最盛期には「忙しい」という意味が含まれません。ただ、最盛期によって流行が起き、需要が高まったものや関連する仕事が忙しくなる可能性はあるでしょう。
繁忙期の使い方と例文
繁忙期という言葉の使い方には、「繁忙期を乗り切る」「繁忙期を迎える」「繁忙期を避ける」などがあります。
繁忙期は、サービス業、飲食、旅行関係、公共事業など幅広い業界で存在します。使い方や例文を参考に、実際に使うときの参考にしましょう。
繁忙期を乗り切る
「繁忙期を乗り切る」は仕事で多忙な時期を克服して抜けよう、という意味で使います。
例文としては、「無事に繁忙期を乗り切るには、無駄な作業をできる限り省くことが必要だ」「最近体力が落ちてしまい繁忙期を乗り切る自信がない」などがあります。
繁忙期を迎える
「繁忙期を迎える」は、仕事で多忙な時期を迎えるという意味で使用します。
例文としては、「大型連休が入る4月末から繁忙期を迎えるため、力を合わせて乗り切ろう」「繁忙期を迎えるには人手が足りない」「繁忙期を迎えることで大きな収益を得る」などがあります。
繁忙期を避ける
「繁忙期を避ける」は、仕事で多忙な時期から離れるようにする、という意味で使用します。
例文としては、「少しでも安く旅行したい場合は、繁忙期を避けることが得策です」「新人教育には余裕も必要なため、繁忙期を避けるよう計画したい」などがあります。
繁忙期の類義語・言い換え表現
繁忙期の類語には、「書き入れ時」「稼ぎ時」などがあります。
書き入れ時
「書き入れ時(かきいれどき)」は、帳簿の記入に忙しい時期、商売で利益が多いとき、という意味の言葉です。商売が繁盛すると仕事が忙しくなることから、繁忙期の類語になります。
例文としては、「行楽シーズンは書き入れ時ということもあり、観光スポットは活気に満ちている」「コロナ禍よって、本来なら書き入れ時の時期に旅館を閉めることになった」などがあります。
稼ぎ時
「稼ぎ時(かせぎどき)」は、大きな収益があるとき、またはその時期という意味の言葉です。書き入れ時と同様、商売が繁盛している様子を伝えるときに用いられる表現でしょう。
例文としては、「雪が降り始めればスキー場は稼ぎ時だ」「成人式には多くの人が振り袖を着るため、着物業界やヘアメイクを担当する美容業界の稼ぎ時である」などがあります。
繁盛期
「繁盛期」とは、商売が繁盛している時期や商取引が活発な時期という意味の言葉です。繁忙期と非常に似ていますが、繁盛期は忙しくても儲かっていないような場合には適しません。一方、繁忙期は忙しいことを指すので、儲かっているかどうかは関係なく使えます。
繁忙期の対義語・反対語は閑散期
繁忙期の対義語は、「閑散期」です。企業などにおいて、仕事の依頼、注文、来客などが少なく暇である、比較的時間にゆとりのある時期のことを言います。
例文としては、「引っ越し業者は繁忙期と閑散期の差が極端に大きい」「閑散期はやることがないくらい暇だ」という使い方をします。繁忙期があれば閑散期もあるケースが多いため、逆の意味の言葉も知り、ビジネスに生かしましょう。
繁忙期の英語表現
繁忙期の英語表現には、「busy season」「high season」「peak season」などがあります。労働人口の減少から、外国人採用枠を増やしている企業も多いのではないでしょうか。
繁忙期という言葉は、ビジネスシーンではよく使われる表現です。仕事において、英語でやりとりをする場面が増えた方は、繁忙期の英語表現方法を知り、ビジネスに生かしましょう。
busy season
「busy season」は、商業の稼ぎ時を表す繁忙期の英語表現です。「busy(忙しい)」と「season(季節)」という単語で構成されているため意味を想像しやすいでしょう。
<例文>
- We are about to enter a busy season.
私たちは今から繁忙期を迎えようとしている。 - December was a busy season.
12月は繁忙期でした。
high season
「high season」は商売や仕事などの最盛期、客が殺到する時期、旅行者が多く価格が高い季節、などで使われる繁忙期の英語表現です。
<例文>
- This vehicle operates only during the high season of autumn.
この車両は秋の繁忙期のみの運航です。
peak season
「peak」は山頂や頂点を意味する単語であり、「peak season」は、イベントのある期間で旅行客が集中する繁忙期のことを指します。「high season」とほぼ同じ意味です。
<例文>
- I'm thinking of traveling during peak seasons such as New Year.
お正月などの繁忙期に旅行を考えています。
業界別・職種別の繁忙期は?
繁忙期は業界や職種によって異なります。一部の例をご紹介します。
ホテル業界
ホテルの形態や立地にもよるので一概には言えませんが、やはりゴールデンウィークがある5月、シルバーウィークがある9月、お盆・夏休みがある8月、年末年始など、長期休暇がある時期は、ホテル業界、そして旅行業界全体の繁忙期といわれています。
また中華圏の旧正月、つまり春節の大型連休(1月下旬から2月上旬)でのインバウンドニーズもあります。その他、海の近くのホテルなら海水浴シーズン、山の近くなら紅葉シーズン、また花火大会の近く、ライブ会場の近くなど、季節やイベントにより繁忙期がある場合もあります。
アパレル業界
アパレル業界の繁忙期は、7月と12月~1月といわれています。
7月は夏物商品に加え、サンダルやサングラス、水着などのレジャー系の商品が出てきます。さらに7月下旬から夏のセールが始まるため忙しくなります。
12月はクリスマスなどのイベントが多い時期であり、ボーナスが出て客足が増えます。プレゼント用のラッピングも増えるなど作業量も多いでしょう。1月は初売りや福袋、1月下旬には冬のセールがあります。
IT業界
IT業界の繁忙期は、職種や扱っている商品・サービスによって異なりますが、例えばSE(システムエンジニア)などの開発職の場合、システムのリリースを控えて、稼働チェック・バグ修正を繰り返す時期が特に忙しいといわれています。
またシステムをリリース後の数日~数カ月の間は、顧客からの問い合わせが多くなるため、保守担当は多忙となるでしょう。PM(プロジェクトマネージャー)や営業職の場合、新しいプロジェクトが始まる時期などが繁忙期といわれています。
飲食業界
飲食業界の繁忙期は、送別会のある3月、歓迎会のある4月、クリスマスや忘年会などがある12月といわれています。ただし最近はコロナ禍により団体での来店が制限されていたため、繁忙期が変化しているとされています。例えば夏や冬のボーナスが出た後の週末に、外出ついでに外食をする人が増え、繁忙期となるといったケースが見られるようです。
経理系の職種
経理系の繁忙期はその企業の決算時期によっても異なりますが、数の多い3月決算の会社を例に取ると、3月~6月、12月~1月が忙しいといわれています。
3月に決算準備が始まり、4月~5月に決算業務を進めます。そして6月は決算報告をする株主総会の準備のため、多忙となります。また12月~1月は、年末調整があります。通常業務に加えて、このような年次業務が重なるときは、経理系の業務負担が大きくなる時期です。
繁忙期とは仕事が特に忙しい時期のこと! 正しく理解し、ビジネスに生かそう
繁忙期は仕事が忙しい時期を指すため、アパレル業界、旅行・ホテル業界、飲食業界、物流業界など、さまざまな業界・職種で使われる表現です。
「書き入れ時」「稼ぎ時」は類語に当たるため、商売繁盛し利益が多く出る時期の場合は言い換えられます。対義語の「閑散期」や英語表現なども参考に、繁忙期の意味や使い方を理解して正しく使いましょう。