年末調整では、いくつか書類の提出を求められます。その書類のひとつである基礎控除申告書は、給与所得者は全員提出が必要な書類です。ただ、何の書類なのか詳しく知らない人も少なくないでしょう。そこで、本記事では基礎控除申告書の書き方をご紹介します。

  • 基礎控除申告書について

    基礎控除申告書の書き方や注意点などを紹介します

基礎控除申告書とは

基礎控除申告書は、給与所得者なら年末調整で必ず提出を求められる書類のひとつであり、毎年11月頃に会社から配布され、自分の基礎控除額をはっきりさせるために必要となる書類です。

基礎控除申告書にはどのような内容を記入していくのか、概要を解説します。

(1)合計所得額

基礎控除を算出するために、まずは給与所得欄に給与収入金額を記入します。次に所得金額を記入します。給与所得がいくらになるのかは、基礎控除申告書に掲載されている表をもとに算出可能です。

給与所得以外の所得と合算し、合計所得金額を記入。そこから基礎控除の区分と基礎控除の金額を判定します。

(2)給与所得以外の所得

給与所得以外の所得がある場合には、給与所得以外の所得欄にも金額を記載しましょう。給与所得以外の所得には下記のようなものがあります(※1)

  • 利子所得(総合課税または申告分離課税の対象となるもの)
  • 配当所得(株の運用益など)
  • 山林所得(立木の売却益など)
  • 譲渡所得(土地売却など)
  • 一時所得(賞金や懸賞当選金、競馬・競輪の払戻金など)
  • 雑所得(単発の副業所得など)
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 退職所得

給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える場合や、複数の会社で働いていたりする場合など、年末調整だけでは手続きできず確定申告が必要なこともあります。

3つの手続きをひとつの書類で行う

年末調整の書類の様式は令和2年分から変更になり、下記3つの手続きを1枚の申告書で行うようになりました。

  • 給与所得者の基礎控除申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 所得金額調整控除申告書

配偶者がいる人、自分・扶養親族が特別障害者である場合や扶養親族が23歳未満の場合は、基礎控除申告書欄以外にも忘れずに記入してください。

  • 基礎控除申告書について

    配偶者控除と所得金額調整控除の申告も一緒に行います

基礎控除申告書の書き方

基礎控除申告書は様式が新しくなったため、どう書けばいいのか迷ってしまう人も多いでしょう。そこで、基礎控除申告書の書き方を紹介していきます。

  • 基礎控除申告書の書き方

    令和2年分基礎控除申告書の様式です

自分の情報

まずは上記画像のA欄に、自分の個人情報を記入します。

  • 氏名
  • 押印
  • フリガナ(カタカナで記入)
  • 住所または居所

年末調整に提出する他の書類と共通する項目ですので、同じ内容を記入しましょう。

基礎控除申告書欄

上記画像のB欄が、基礎控除申告書です。配偶者や扶養家族の有無にかかわらず、給与所得者全員記入が必要となります。

  1. 給与所得の収入金額欄に年収を記入
  2. その金額から給与所得の金額を算出
  3. あらかじめ計算しておいた給与所得以外の所得金額も記入
  4. 合計額を記入
  5. 「○控除額の計算」欄で当てはまるものにチェック
  6. チェックした欄の右側にある金額を「基礎控除の額」へ記入
  7. 配偶者がいて「○控除額の計算」欄のA、B、Cのいずれかに該当する場合は「区分Ⅰ」へ「A、B、C」の中で該当する文字を記入

給与所得の収入とは、年収のことです。その年の1月1日から12月31日までの支給額をもとに記入していきましょう。

給与所得の金額の計算方法

給与所得の金額の計算は、基礎控除申告書裏面の表をもとに行います。

  • 基礎控除申告書の書き方

    給与所得の金額の計算表です

計算が合っているか不安な人は「所得税法 別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)」を参照することで、控除後の金額を確認できます。

給与所得者の配偶者控除等申告書欄と所得金額調整控除申告書欄も記入

基礎控除申告書には給与所得者の配偶者控除等申告書(基礎控除申告書画像C欄)と所得金額調整控除申告書(基礎控除申告書画像D欄)も含まれていますので、必要な人は記入してください。

対象者
配偶者控除等申告書 自分の所得が1,000万円以下で配偶者の所得が133万円以下の人
所得金額調整控除申告書 ・自分の収入金額が850万円を超えている
・自分または扶養親族、同一生計配偶者が障害者
・扶養親族が23歳未満

家族や扶養親族がいる場合には、控除を受けるためにも忘れずに記入しましょう。

基礎控除申告書記入例

こちらでは、年収800万円で配偶者控除を受ける配偶者や扶養家族がいない場合の記入例を紹介します。

  • 基礎控除申告書の書き方

    収入と所得との違いに注意して記入しましょう

必要に応じて、給与所得者の配偶者控除等申告書欄や所得金額調整控除申告書欄も記入してください。

  • 基礎控除申告書の書き方

    基礎控除申告書は会社勤めをしている人であれば記入が必要です

基礎控除申告書提出時の注意点

基礎控除申告書を提出する際に、いくつか気をつけておきたいポイントがあります。年末調整で問題なく手続きするためにも、押さえておきましょう。

(1)余裕をもって提出するようにする

基礎控除申告書の提出期限は、「その年最後に給与等の支払いを受ける日の前日まで」と定められています。提出した後は基本的には会社が保管しており、提出を求められたら税務署へ提出する仕組みとなっています。

提出をしなければ年末調整ができず、所得税の還付金があった場合も受け取ることができません。基礎控除申告書は年末調整で正しい所得税を計算するための書類です。受け取ったら早めに提出しましょう。

(2)提出しないと確定申告が必要になる

年末調整の書類を提出しないと基礎控除と配偶者控除、所得金額調整控除を受けられず、必要以上に税金を納めるといった事態になることもあります。さらには、控除を受けるためには確定申告が必要となります。

(3)所得の金額によって記入すべきかどうかが異なる

基礎控除申告書欄の記入は、給与所得以外の所得があるかどうかで記入すべき欄が少し異なります。

しかし、同じ用紙にある配偶者控除等申告書については、たとえ配偶者がいても年間所得1,000万円以下かつ同一生計配偶者の合計所得金額が133万円以下である場合が対象です。

また、所得金額調整控除申告書については年収850万円超の方が対象となります。

配偶者や扶養親族がいたとしても、年収によって対象になるかどうかが異なることから、記入すべき欄も年収により異なる点に注意しましょう。

  • 基礎控除申告書の書き方

    基礎控除申告書は期限や記入すべき欄に注意して書いていきましょう

基礎控除申告書の書き方を理解して申請をしよう

基礎控除申告書とは、年末調整で給与所得者の基礎控除を受けるために必要となる書類です。提出しないと源泉徴収された所得税を正しく精算できず、もし還付金があった場合でも受け取ることができません。

確定申告すれば手続きはできますが、本来必要なかった手続きであり、かなり手間がかかってしまうのでできれば避けたいものです。

基礎控除の申告は給与所得者の基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書の3種類の手続きがひとまとめになった用紙で行います。配偶者や扶養家族がいる人で申請対象に該当する人は、あわせて記入しておきましょう。

令和2年分から様式が変わったこともあり、書き方に戸惑う人も多いかもしれませんが、この記事で紹介してきた書き方例を参考にしながら記入し、期限までに提出するようにしましょう。

参照 :
(※1)国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし