住宅の購入(取得)を検討しているときに、住宅ローン控除(減税)の話をよく聞くと思います。住宅ローン控除は、住宅性能などによって上限額が変わるので、計算方法に疑問を持つ人も多いはず。そこで、ここでは「住宅ローン控除(減税)の控除額の計算方法」について解説します。

住宅ローン控除(減税)ではいくら戻ってくるのか?

住宅ローン控除(減税)は、正式には「住宅借入金等特別控除」と呼びます。これは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームを新築したり、購入(取得)したりした場合に、その取得等にかかる住宅ローン等の年末残高を基に計算した金額を、所得税額から控除するものです。

控除額は、「その年の年末借入残高×控除率」で計算されます。年末借入残高とは、その年の年末時点における住宅ローンの残高です。

この額は、借り入れたときに金融機関等から渡されるローン返済予定表や毎年10月頃に金融機関等から借入金の年末残高等証明書というものが送られてきますので、それらの書類で確認することができます(※1)

控除額は居住年および住宅の種類によって異なりますので、以下で詳細を説明します。

一般住宅の場合

一般住宅における控除額は以下の通り。

居住年 年末借入残高 控除期間 控除率 各年の最高控除額
2013年 ~2,000万円 10年間 1% 20万円
2014年1月~
2021年12月
~4,000万円 10年間 1% 40万円

認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合

認定長期優良住宅(※I)、認定低炭素住宅(※II)における控除額は以下の通り。

居住年 年末借入残高 控除期間 控除率 各年の最高控除額
2013年 ~3,000万円 10年間 1% 30万円
2014年1月~
2021年12月
~5,000万円 10年間 1% 50万円

(※I)認定長期優良住宅:行政が認めた基準による長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅
(※II)認定低炭素住宅:行政が認めた基準による市街化区域等内に建築された住宅のうち、二酸化炭素の排出を抑えた住宅

最高控除額の適応条件

2021年12月までに居住を開始したとしても、住宅を購入(取得)するときに支払った消費税の税率が8% または10% ではなかった場合には、2013年の上限が適用されます。そのため、消費税を支払わずに、個人間の取引で住宅を購入(取得)したような場合には、最高控除額は2013年のものが適用されます。

また、還付される税額は、その年分の所得税金額が限度となります。

一般住宅における控除額の計算例(住宅借入金等特別控除)

例えば、2020年3月に居住用の新築マンション(75m2)を3,300万円(消費税10% 込み)で購入した場合を例に、控除額を計算します。

仮に3,000万円の住宅ローンを借り入れ、2020年の年末残高が2,890万円だったとした場合、2,890万円×1% (控除率)=28.9万円となり、1年間で28.9万円が控除対象となります。

この場合、2020年の所得税の源泉徴収額が28.9万円以上であれば、全額が還付されることになります。なお、源泉徴収額が28.9万円未満であれば、翌年度の住民税において「住宅借入金等特別控除」が適用されることになります。

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    住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の計算方法

特別特定取得の住宅ローン控除額の計算方法

消費税率の10% への引き上げに伴う措置として、控除期間が10年から13年に延長される、「特別特定取得」という特例が作られています。

この特例が適用される条件は、消費税率が10% である住宅の取得等(特別特定取得)をして、2021年12月31日までに取得者らが住居として使用した場合です。消費税を払わない、個人間売買の場合には適用されませんので、注意しましょう(※2)

特別特定取得の住宅ローン控除額の計算式は以下の通りです。

一般住宅の場合

1年目から10年目 年末借入金残高(限度 : 4,000万円)×1%
11年目から13年目までの各年 次の【1】【2】のうち、いずれか少ない金額
1. 各年の年末借入金残高(限度 : 4,000万円)×1%
2. {住宅の取得等の対価の額等―住宅取得等の対価の額等に含まれる消費税額等(限度 : 4,000万円)}×2% ÷3

認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合

1年目から10年目 年末借入金残高(限度 : 5,000万円)×1%
11年目から13年目までの各年 次の【1】【2】のうち、いずれか少ない金額
1. 各年の年末借入金残高(限度 : 5,000万円)×1%
2. {住宅の取得等の対価の額等―住宅取得等の対価の額等に含まれる消費税額等(限度 : 5,000万円)}×2% ÷3

一般住宅における控除額の計算例(特別特定取得)

具体例を挙げて説明します。先ほどの例【2020年3月に居住用の新築マンション(75m2)を3,300万円(消費税10% 込み)で購入】で10年目以降も継続して住んでいたとして、11年目の借入金残高を2,400万円で計算します。

  1. 借入金残高×1% =2,400万円×1% =24万円
  2. {住宅の取得等の対価の額等―住宅取得等の対価の額等に含まれる消費税額等}×2% ÷3={3,300万円―300万円}×2% ÷3=20万円
  3. 【1】>【2】となり、1年間で20万円が控除できます。

また、別の例として、新築マンションを3,300万円で購入し、11年目のローン残高が1,500万円だった場合を計算します。

  1. 借入金残高×1% =1,500万円×1% =15万円
  2. {住宅の取得等の対価の額等―住宅取得等の対価の額等に含まれる消費税額等}×2% ÷3={3,300万円―300万円}×2% ÷3=20万円
  3. 【1】<【2】となり、15万円が控除できます。

一般的に、物件価格に対してローンの比率が低ければ【1】が、比率が高ければ【2】が適用されることになりますが、具体的なケースについては個別に計算してみてください。

住宅ローン控除(減税)を上手に使うために知っておきたいこと

住宅ローン控除(減税)を上手に使うためには、知っておいたほうが良いポイントがあります。

配偶者に収入がある場合

昨今は共働きの夫婦が多くなっています。配偶者に収入がある場合には、一人でローンを組むより、夫婦それぞれにローンを組む、もしくはペアローンを組むことで、最大50万円の減税が二人分受けられることになります。

ただし、ローンの額にあわせて持分(※)を登記しなければ、住宅ローン控除(減税)を受けることはできません。

また、配偶者が子育てなどで収入がなくなる時期ができる場合には控除(減税)が受けられなくなることに加え、ローンの支払いが苦しくなる可能性があるので注意が必要です。

(※)持分(もちぶん) : 1つの物の所有権を複数人で持つ場合における、各共有者が持つ所有権の割合のこと

繰上げ返済をする場合

住宅ローンは、大きな金額を借り入れるので、その数字に圧倒されて早めに返済したくなる気持ちになることがあるかもしれません。

しかし、住宅ローンは早く返済すれば良いというものではありません。せっかく住宅ローン控除(減税)があるのですから、その恩恵をしっかり享受しましょう。

例えば、1%未満のローン金利で借りている人であれば、住宅ローン控除(減税)の1%の控除率は金利より高いものです。したがって、ローンで払う金利より控除額のほうが大きくなります。この場合は慌てて残高を減らすより、10年間(もしくは13年間)の減税分を受け取ってから、繰上げ返済をしたほうがお得になります。

また、住宅ローン控除(減税)の対象となる借入残高は年末の金額が適用されますので、繰上げ返済を行う場合には年末に行うと借入残高が減って控除額が少なくなってしまいます。

もし、住宅ローン控除(減税)のある間に繰上げ返済をしたい場合には年初に行うのがベストです。

住宅ローン控除(減税)の仕組みを理解して活用しましょう

住宅ローン控除(減税)の控除額の計算方法について解説しました。

住宅ローン控除(減税)には、適用要件が決められており、その要件を満たさないと住宅ローン控除(減税)を受けることができません。

基本的には、年末の借入残高の1% が控除できますが、住宅の性能によって、上限額が変わります。また、2021年12月までの入居であれば、最長13年目まで住宅ローン控除(減税)を受けることができます。

参照 :
(※1)国税庁「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
(※2)国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)