車を購入するときの選択肢としては一般的になってきた残価設定型ローン。「月々の返済を抑えながら、憧れの車を自分のものに!」といったコマーシャルを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

国土交通省は、この残価設定型ローンを住宅ローンにも普及させるべく、2021年にも民間の金融機関が参加するモデル事業を始めると言われています。

今回は、残価設定型住宅ローンの仕組みと、そのメリット・デメリットについて考えます。

  • 少額で持ち家に住める? 残価設定型の住宅ローンは得なのか損なのか※画像はイメージ

残価設定型住宅ローンの仕組みとは?

残価設定型住宅ローンというのは、住宅購入時の借入額と将来的な住宅価値(残価)の差額を返済するローンの仕組みです。

借入額から残価をひいた額を返済するので、通常のローンを組むより月々の返済が抑えられ、住宅取得のハードルが下がることが期待されています。

住宅ローンが終了した時点で
・残価で住宅を買い取る
・残価分の住宅ローンを新たに組む
・家を売却して住み替える
といった選択肢のなかから今後の住まい方を選択できます。

実は残価設定型住宅ローンについては、2019年11月、新生銀行が「新生パワーセレクト」(支払額軽減住宅ローン)の取り扱いを始めましたが、まだ一般的に普及するまでには至っていません。

日本の住宅は20~25年でその価値がほぼゼロになるとも言われていたため、住宅の残価設定が難しかったことが、これまで、残価設定型住宅ローンが普及しなかった最大の理由としてあげられます。

今後、その問題点を解消する「長期優良住宅」の普及にあわせて、残価設定型住宅ローンも選択肢のひとつとして普及させていこうというのが、国の方針ということになります。

残価設定型住宅ローンのメリットとは

毎月の返済額が抑えられる

一番大きなメリットは、やはり月々の返済額が抑えられることです。

ただし、購入のハードルが下がる分、しっかりと制度を理解した上で判断しないと、住宅購入にかかる負担を先延ばしにしただけになりかねません。

残価が保証されている

基本的に残価が保障されているので、住宅ローン終了時、物件を売却したのに負債が残ってしまうということはありません。

「売却したいのにできない……」という状況を避けられるのは大きなメリットです。

ただし、住宅ローン返済途中に売却する場合は、残価として保証されている金額よりも売却価格が低くなる可能性があるので、注意が必要です。

ライフプランに柔軟に対応できる

ライフプランに変更はつきもの。熟考して購入した住宅であっても、家族の成長や変化に伴って、必要な住まいの形も変わります。

住宅ローン終了時に、ライフプランに合わせてその後の住まいの持ち方を柔軟に選択できるので、家族の変化に対応しやすくなります。

残価設定型住宅ローンのデメリットは?

住宅ローン終了後に新たな資金が必要になる

住宅ローン終了後、住宅を買い取る場合はその資金が必要になりますし、住み替える場合は頭金や諸費用などが必要になります。

住宅ローンを返済しながら、返済終了後に必要な資金を計画的に準備しておかないと、住宅ローン終了後の住まいに困ることになります。

支払総額が通常の住宅ローンより高くなる場合がある

住宅ローン終了時に残価に対して新たにローンを組む場合、最初からフルローンで組んだ場合と比べると支払総額が高くなる場合があります。

また、新たにローンを組む時点で審査に落ちてしまい、住み続けることができなくなる、というリスクもあります。

定期的なメンテナンスが必要

将来の価値を維持するために、定期的な点検や必要に応じた修繕が求められます。

住宅ローンにかかる費用だけではなく、メンテナンス費用も含めた資金計画が必要です。

残価設定型住宅ローンの利用に向いている人は?

残価設定型住宅ローンは、家族の変化にあわせて住宅を住み替えたい方や、少し先であれば計画的に資金を用意できる方にとっては活用できる仕組みといえるかもしれません。

月々の返済額が減ると、住宅購入のハードルが下がるので、つい飛びつきたくなりますが、残価設定型住宅ローンは住宅ローン返済後のプランニングが非常に大切になってきます。

しっかりと内容を確認したうえで、活用してくださいね。