JR西日本は18日の社長会見にて、新型コロナウイルス感染症の感染者急増、緊急事態宣言の発出などで鉄道利用者や収益が減少している状況の中、今期・来期の厳しい環境をむしろ変革の機会ととらえ、「地域共生の深耕と新たな価値創造」に資する取組みのひとつとして、今後、鉄道による荷物輸送に取り組むことを明らかにした。

  • 北陸新幹線W7系

荷物輸送を事業化するねらいとして、「他企業・地域との共創価値実現」と「地域活性化への貢献」を挙げる。JR西日本が保有する既存資源や沿線地域との関係を生かし、JR他社および他の物流会社との連携・共創により、たとえばモーダルシフトによるCO2削減と労働力問題の解決、定時性の高い鉄道輸送によって当日受領を可能にするといった新しい価値の提供をめざす。

地域活性化への貢献として、JR西日本の情報発信力を生かして地域情報を発信し、新たな旅客流動の創出をめざす。新たな地産品の発掘・発信のほか、将来的には地産品の販売を通じた旅行喚起など、旅客流動の創出も視野に入れている。

具体的には、北陸新幹線においてJR東日本と連携し、事業者をまたいで、北陸エリアの特産品を首都圏に輸送する事業を拡大する。これまでキャンペーンと連動しての実施にとどまっていたが、新幹線の速達性・定時性を活用することで、継続的な提供を検討していく。持続可能なスキーム構築、荷主開拓などに関して、現在、JR東日本グループと協議を進めており、詳細は改めて発表される。

  • 山陽・九州新幹線N700系

山陽・九州新幹線においては、JR九州と連携し、九州エリアの特産品等の荷物を関西エリアへ輸送する試行を実施する。鉄道ネットワークの活用という観点から、新大阪駅で新幹線から荷物を下ろした後、在来線に積み替えて大阪・京都に輸送するなど、新幹線と在来線を組み合わせての荷物輸送も試行するという。山陽・九州新幹線相互直通10周年に合わせ、2021年2月から実証実験に着手したいとしている。

在来線では、地域活性化を目的とした取組みとして、地元生産者らや運送事業者と連携し、伯備線の普通列車を活用した岡山駅までの地域の農産品輸送を試行する。実証実験は1月下旬以降、準備ができ次第、実施する予定。実証実験の後、駅での農産品販売ニーズを調査するとともに、地域活性化を目的とした地元事業者らと連携した農産品輸送の検討を行う。

  • 伯備線の普通列車

JR西日本は、コロナ禍による「人の移動の停滞と物の動きの活発化」を契機とし、旅客列車を活用した荷物輸送事業の可能性を提示することで、社会課題・地域課題の解決をめざすとしている。