NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)で織田信長役を熱演している俳優の染谷将太。ただ強いだけではなく、ピュアすぎるがゆえの狂気という新たな解釈の信長を見事な演技力で表現している。長谷川博己演じる主人公・明智光秀との関係性の変化や、感情をぶつけ合うシーンは物語の大きな見どころに。クライマックスの「本能寺の変」に向かってさらに注目が集まる中、染谷にインタビューし、長谷川をはじめとするキャストとの共演について話を聞いた。

  • 『麒麟がくる』明智光秀役の長谷川博己(左)と織田信長役の染谷将太

染谷は、光秀とのシーンについて「一番緊張します」と告白。「2人の関係性をどう表現していくかが今後にとって重要なので、毎回すごく緊張していますが、やっていて楽しいです」とやりがいを明かした。

そして、信長の光秀への思いを、「最初の頃からずっと好き。頼りになり、帰蝶もそうですが、十兵衛(光秀)がいて初めて自分がその場にいられるという存在。光秀は、いい意味で一定の距離を保ちつつ、的確に言うことは言ってくれる。自分に唯一言ってくれる人で、言われたことをやってみるとすべてがうまくいくという最大の部下」と解説。

「十兵衛への思いは最初の頃から変わらず、『お前も俺と同じくらい俺のこと好きだろ』というのがずっと続いています。向こうが自分をどう見ているのかもあんまり気にしていない人間なので、『俺のこと好きでしょ』とずっと思い続けています」と語った。

家臣にならないかという提案を光秀が断ったときや、比叡山焼き討ちで女子供を逃がしたと光秀が打ち明けたときに、怒ることなく冷静を装っていた信長。

そのときの感情について、染谷は「単純にすねています。戦ではないタイミングで十兵衛に何か言われたとき、信長はどういう風に表現していいのかわからず何も言えない状態」と説明し、「今後、話が進んでいくと激しいすね方に変わっていく。こんな上司、本当に嫌だなと思うすね方になっていきます」と予告する。

座長である光秀役の長谷川には、安心感を抱いていたという。「現場の空気の軸だと思っているので、スタジオにいらっしゃるだけで安心します。お芝居を組み立てていくときも常に冷静なので自分も冷静でいられますし、全体を客観視されている感じもあって、それに見守られている空気。その中で思いっきり暴れることができるという安心感があります」

撮影前の様子を尋ねると「長谷川さんもフラットな方なので、すごい静かに2人で座っています」と答え、「『体調大丈夫ですか?』『頑張りましょう』という空気感から、セットに入ってパッと瞬発的にやる。繰り返し撮影するので、何回もやりながらどんどん高め合っていくという感じです」と現場の様子を明かした。

川口春奈演じる帰蝶とのシーンもまた違った面白さを感じていたそうで、「ある種、安心感。自分をさらけ出して受け止めてくれる。探り合いではなく自分をバンバン出していくお芝居なので、それもとても面白かったです」と振り返り、「場面が変わって対峙する人が変わると信長も機嫌が変わったり、人が変わったりするので、いろんな方々と演じるたびに新しい発見があります」と続けた。

後半に入り、坂東玉三郎演じる正親町天皇に認められたいという承認欲求があらわになってきた信長。染谷は「帝との関係性は今後ものすごく重要なものになっていく。承認欲求の極みがものすごく出ていると思います」と説明し、「今までは、戦に勝ってみんなが喜び、褒められてうれしいという感じでしたが、ただうれしいというより若干狂気的な、『自分は無敵なのかもしれない』、『自分は神なのかもしれない』というくらい恐ろしい喜び方をしていきます」と語る。

ドラマ初出演の玉三郎との貴重な共演も楽しんだようで、「現場ですごく声をかけてくださって、例えば所作一つにしても『こうするときれいに見えるよ』などと教えてくださったり、『いつも信長を楽しみにしてる』っておっしゃってくださって、すごくうれしく、頑張らねばと思います」と少し照れながら話した。

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