せっかく会社に入ったのに、何も教えてももらえず、構ってももらえない。ろくにコミュニケーションもとれないまま、時間だけが過ぎていき、いつの間にか「仕事ができない」レッテルを貼られてしまう。そうした状況に不安を抱き、すっかり心が折れてしまった――そんな新入社員の方からの相談が私のもとにも寄せられています。

  • 「いきなり在宅勤務」で困っていませんか?

昨年から新型コロナウイルスの影響で、いきなり在宅勤務になった会社もたくさんあります。弊社もそうでした。組織も、管理者も突然のことで余裕がない中、新入社員の方のフォローまでできなかった会社も少なくないでしょう。

「社会人なんだから、仕事は自分で考えるべきだ」という論調も理解はできますが、何も与えられずに、教えられずにやれと言われても、無理があるでしょう。一定の基準を共通言語として提供するのは採用側の責任です。今はオンラインでの新人研修も増えており、こうした状況でもできることはたくさんあります。

新入社員が磨くべき「質問力」

一般的に新入社員研修で指導される項目としては、挨拶や名刺交換の方法、仕事の基本的なルール、報告のやり方などがあります。それ以外に私はこれからの時代の新入社員の方々に磨いてほしいスキルが1つあります。それが「質問力」です。

リモートでの働き方が日常になると、「ちょっと分からないこと」を聞くタイミングがかなり少なくなります。いくら新人研修で基本を教えてもらったとしても、実際に仕事に着手をするとたくさんの疑問が出てきます。同じオフィスで働いていれば、悩んでいたり、手が止まっていたりすると、先輩や上司が気づいて声をかけてくれることもあります。

しかし、リモートワークでは姿が見えないため、誰にも気づいてもらえず、分からないことが分からないままになってしまっているケースが多数あります。

会社や上司が「分からないことを聞ける」仕組みを用意することは大切ですが、それと同時に、新入社員の方々は、質問してスムーズに答えを引き出す「質問力」をぜひ身につけていただきたいと思います。

わざわざ連絡して質問するのは気が引ける、と思うかもしれませんが、自分で調べて分からないことは必ず聞きましょう。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥です。

この時、1つ気をつけてほしいのが、「聞いたら教えてくれる」は、仕事の世界では当たり前ではない、ということです。相手の時間を奪う行為ですし、何でもかんでも人に聞いて問題解決するのではなく、自分で調べて答えを見つけることで血肉になることもあります。

よい質問のポイント3つをチェック

  • 質問する前にチェックしておこう

分からないことを教えてもらうときのよい質問のポイントは、「相手に手間をかけさせないこと」です。気持ちよく答えを引き出すことができれば、自分も、相手も不快になることなく問題を解決することができます。

1. どこが分からないのかポイントを明確にする
「分からないんです……」とだけ伝えても、相手はアドバイスができません。言葉の意味が分からない、材料がどこにあるのかが分からない、など具体的にポイントを絞りましょう。

2. 自分の考えを添える
相手に丸投げで「教えてください」というのではなく、「私はこのように考えたのですが、この進め方でよろしいでしょうか?」と聞きましょう。

3. 選択肢を絞る
質問にはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンがあります。オープンクエスチョンは「どう思いますか?」のように、相手から自由に答えを引き出す質問です。クローズドクエスチョンは「YES/NO」あるいは「A or B or C」のように選択肢を絞って聞く質問のあり方です。

より多くの情報が得られるのはオープンクエスチョンですが、回答を考えなければいけないため、相手により負担がかかる質問の仕方でもあります。仕事の進め方などで分からないところを聞くといった場合にはクローズドクエスチョンを意識して、選択肢を狭めて質問をすることを意識しましょう。

新人なのだから分からなくて当たり前、とはいえ、何度も丸投げの質問をされれば上司や先輩の仕事の妨げになることもあります。相手に手間をかけさせずスムーズな答えを引き出せるような質問術をぜひ身につけてください。