本記事では「稚拙」の詳しい意味や読み方、よく使う言い回しごとにビジネスシーンでの使い方・例文を紹介。「幼稚」「拙劣」「拙い」などの類語や対義語、英語表現もまとめました。

稚拙とは? 意味や読み方を解説

「稚拙」は「幼稚で未熟なこと」を表す言葉です。

「稚」は、「幼いこと」を表す漢字で、考え方や行動の幼さを表しており、「拙」は下手なことや巧みではないことを表す「つたな(拙)い」という漢字です。そのため、「稚拙」は完成度の低いことに対して使われます。

稚拙の読み方は「ちせつ」です。「稚」という漢字は「幼稚」や「稚魚」など、日常的に聞くような言葉で使われているため読める方も多いでしょう。

一方、「拙」という漢字は日常で頻繁に見聞きする言葉ではあまり使われていないため、読めなかった方も多いかもしれませんね。

  • パソコンの前で頬杖をついている女性

    「稚拙」は完成度の低いことに対して使われます

ビジネスシーンにおける「稚拙」の使い方と例文

「稚拙」という言葉は、ビジネスシーンでもよく使われます。特に部下など、目下の相手に対して注意をするときや、自分のアウトプットに対して謙遜するときなどに使用します。

ただしインパクトのある言葉なので、相手に対して直接使用する際は、傷付けないよう前後の言葉でフォローするなどの配慮が必要です。

以下で「稚拙」を用いたよくある言い回しと、その例文を紹介します。

「稚拙な考え」「稚拙な文章」の使い方とは

ビジネスシーンで「稚拙」を使う機会が多いのが、考え方や文章の出来栄えについての評価です。

「稚拙な考え」とは、思考やその結果の判断が未熟である、よく練られていないといったときに使われます。部下に注意するときなどに使えます。

「この判断を下したことは、稚拙な考えだったと言わざるを得ないな」などの形で使用します。

そして「稚拙な文章」とは、部下が書いた報告書内で使われる表現が幼稚だったり、ビジネス文書の域に達してなかったりする時に使われます。

「あの報告書は稚拙な文章で、内容が的確に報告されていない」と、部下に注意する場合に使えます。

他にも、自分が書いた文章の謙遜として「稚拙な文章ですが、原案を考えてみました。ご一読ください」のように使うことも可能です。

「稚拙ながら」の使い方とは

「稚拙ながら」とは、自分の行動を「未熟」だと謙遜して伝えるときに使う言い回しです。

ただし「稚拙」には「レベルが低い」という意味もあります。相手の受け取り方によっては「レベルの低いものとの宣言」と認識されてしまうことがあるため、注意が必要です。

また上司に対する「稚拙ながらクライアントへのプレゼン資料を作成しました」との報告は、謙遜としてではなく、不十分な資料作成を報告しているように受け取られる可能性がありますので、こちらも注意が必要です。

「稚拙な行動」の使い方とは

「稚拙な行動」は、大人として十分な配慮が行き届いていない行動を指して使われます。イメージとしては、行動に幼さがあるだけでなく、もう少し悪質さを含んでいます。子供っぽい行動ではなく、「無責任な行動」と理解した方が近いでしょう。

大人の愚行を戒めるときに「場をわきまえ、稚拙な行動は慎むよう、肝に銘じておくように」のように使えます。

  • どこかを見ている子ども

    ビジネスシーンにおいての「稚拙」を理解しましょう

「稚拙」の類語・言い換え表現

「稚拙」が意味する内容を伝えたい場合でも、「稚拙」を使うことが適切ではない状況もあります。「稚拙」の類語を覚えておくと、そのようなときに適切な類語への置き換えができるので便利です。

「幼稚」の意味と使い方とは

「幼稚(ようち)」は「幼い年齢」を意味する言葉で、「稚拙」と同義の「考え方や行動が幼いこと」の意味でも使われます。

「幼稚園」で使われている「幼稚」は幼い子そのものを意味する言葉として使われていますが、「幼稚な考え」「幼稚さが露見した」などの例では、未熟さや不十分さを意味する言葉として使われています。

「拙い」の意味と使い方とは

「拙い(つたない)」は「能力が劣っている」や「下手なこと」「巧みではないこと」という意味の言葉です。

「幼い」という意味はないため、幼稚さを強調したい場合には向きませんが、未熟であることを言い表したい時には使えます。「拙い文章で恐縮ですが」「拙い表現で申し訳ありません」といった使い方ができるでしょう。

「拙劣」の意味と使い方とは

「拙劣(せつれつ)」は「下手で幼稚なさま」や「技術が劣っている」という意味の言葉で、稚拙の言い換え表現として使えます。

例えば、「今回の質問は稚拙さを感じるものばかりだった」は、「今回の質問は拙劣さを感じるものばかりだった」と言い換えてもおかしくありません。

「未熟」の意味と使い方とは

「未熟(みじゅく)」は、もとは「果実が熟していない様子」を表す言葉でしたが、「学問や技術の習得が十分ではない様子」を表す言葉としても使われています。「稚拙」と同様に「不十分な技術」という意味を表すため類語として使われます。

「稚拙な文章では、相手に伝わらない」は、「未熟な文章では、相手に伝わらない」と言い換えても同義に近くなります。

「下手」の意味と使い方とは

「下手(へた)」は「物事のやり方が巧みでなく、手際が悪いこと」の意味で使われる言葉で、「稚拙」が持つ意味の一部でもあり、類語としても使えます。

「君の稚拙な報告書は見直しが必要だ」は、「君の下手な報告書は見直しが必要だ」と言い換えられますが、完全な同義ではなく、受け取り手に与える印象が異なります。

「取るに足りない」の意味と使い方とは

「取るに足りない」とは「問題として取り上げる価値もない」という意味で使われる言葉です。「稚拙」を「レベルが低い」という意味で使っている文章では、「取るに足りない」に言い換えても同義となることもあります。

「稚拙な文章を読まされて無駄な時間を過ごした」を「取るに足りない文章を読まされて無駄な時間を過ごした」と言い換えることも可能です。

  • ベンチで笑っている子ども

    「稚拙」の類語を理解し、状況に適した言葉を選びましょう

「稚拙」の対義語

対義語を知り、覚えることは類語同様に、一つの言葉から派生して、文章を豊かにできる語彙力を身につけられます。ここでは、「稚拙」の対義語とその使い方を紹介します。

「稚拙」とセットで覚え、例文も参考にさまざまな言い回しができるようにしましょう。

「上手」の意味と使い方とは

「上手(じょうず)」は「やり方が巧みで、手際がよいこと」の意味で、「下手」の対義語・反対語であることから、「稚拙」の対義語としても使われます。

「君のプレゼンはまだまだ稚拙だ。彼を見習ってみてはどうか」のように対比を使う文章の中で使うことも可能です。

「洗練」の意味と使い方とは

「洗練(せんれん)」は「より良いものにすること」「あか抜けした高尚なものにすること」という意味の言葉です。「稚拙」には未熟であか抜けないといったイメージもあるため、対義語として使えます。

「彼のふるまいは稚拙すぎる」に対して、「彼のふるまいは洗練されている」といった使い方ができます。

「熟練」の意味と使い方とは

「熟練(じゅくれん)」は「物事に慣れて、手際よく上手にできること」の意味の言葉で、「稚拙」の「未熟なこと」という意味において対義語となります。

「まだ彼の技術は稚拙で、作品を商品化することはできない」という「稚拙」の使い方に対し、「彼の技術は熟練しており、商品価値も高い」のように「熟練」を使えます。

  • 豚の貯金箱

    「稚拙」の対義語を覚え、比較文章も使ってみましょう

「稚拙」の英語表現

日本語表現で「稚拙」を使っている部分は、英訳時にどのような英単語に置き換えるのでしょうか。

ここでは、「稚拙」の英訳時に使える英単語を紹介します。「稚拙」を使っている状況に合った英単語を選び、相手に正しい意味で伝えましょう。

「poor」の意味や使い方

「poor」は「貧しい」「乏しい」「不十分な」といった意味を持つ言葉です。そのため、「稚拙な意見」を英語で表現する際には、「(one's) poor opinion」という表現が使えます。

「unskillful」の意味や使い方

「unskillful」は「下手な」とか「稚劣な」といった意味を持つ単語で、技術が足りていないことを表現するときに使えるため、「稚拙」の直訳に近い言葉です。例えば、「稚拙な絵」を英訳するときは、「an unskillful painting」と言い換えられます。

「immature」の意味や使い方

「immature」は「未熟な」「大人になっていない」などの意味を持つ単語で、「わたしの技術はまだ稚拙だ」を「I am still immature」と訳すことができます。未熟者のことを「a person who is immature」と表すため、「稚拙な作業者」を表現したいときにも使えます。

「childish」の意味や使い方

「childish」は「大人げない」とか「子供じみた」という意味の言葉で、「議論が稚拙だ」というときは、「a childish argument」と英訳できます。

  • ノートに何かを書いている子どもたち

    「稚拙」を適切な英語に訳せるようにしましょう

「稚拙」だと思われないように、日々努力や経験を重ねていこう

「稚拙」はビジネスシーンでもよく使われることが多い言葉で、幼稚で未熟なことを意味します。

誤った意味で受け取ってしまったり、誤った使い方で相手を不快にさせたりすることがないよう、きちんと意味と使い方を理解しておきましょう。

また、自分自身の言動や提出物が「稚拙」だと周囲から思われないように、努力や経験を重ね、洗練された言動ができるようにしていきましょう。