特撮テレビドラマ『仮面ライダーゼロワン』の"その後"を描く映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』が、『劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』との同時上映で全国劇場にて公開されている。

『仮面ライダーゼロワン』(2019年)は、人工知能(AI)を搭載した人型ロボット・ヒューマギアの暴走を食い止めるために戦う仮面ライダーの姿を描き、2020年8月に最終回を迎えた。本作では、ヒューマギアと人間との"架け橋"になるべく奔走する主人公・飛電或人/仮面ライダーゼロワン(演:高橋文哉)を通して、"人とAIの共存"もテーマのひとつとして描かれた。

  • 砂川脩弥(すながわ・しゅうや)。1994年生まれ。沖縄県出身。2015年にGirlsAward×avex『BoysAward Audition』BoysAward賞を受賞。俳優グループ「イケ家!」に所属。『仮面ライダーゼロワン』(2019年)にてテロリスト「滅亡迅雷.net」の司令塔、滅/仮面ライダー滅役を演じ注目を集める。身長180cm。特技はバレーボール。撮影:大門徹

その可能性を象徴していたのが、或人と秘書型ヒューマギア・イズとの絆。そして、ヒューマギアのための世界を築くため、人類滅亡を画策する滅亡迅雷.netのリーダーである滅との関係性だった。テレビ最終話で描かれた或人と滅の激闘、そしてその結末は、視聴者の心を大きく揺さぶった。

本稿では、敵でありながら、屈指の人気キャラクターに成長した滅を一年間にわたって演じきった砂川脩弥にインタビューを実施。テレビ最終話での熱演、ファイナルステージ最終公演で見せた涙のワケや、映画での滅の変化について訊いた。

――テレビシリーズ最終回を迎えた瞬間はどんなお気持ちでしたか?

もともと好きだったこともあり、俳優をやり始めてから一番出たいと思ったのが、「仮面ライダー」でした。そんな風にあこがれ続けた作品に一年間参加することができてすごくうれしかったですし、勉強になることも多かったですね。

なんだったら、ずっと仮面ライダーでいたい(笑)。でも、気持ちの中で変化したのは、最初のうちは「シリーズが終わっても、ほかの仮面ライダー作品でもいいから出たい」だったのが、いまは「また出るなら『ゼロワン』がいい」と思うようになったことです。『ゼロワン』が好きになり、ずっと滅でいたいなって。なので、『ゼロワン』が終わってしまうことはすごく寂しかったですね。

――滅の結末については予想されていましたか。

オーディションに受かって、最初は「敵側です」ということを聞いていて、じゃあ下手したら最終回まで生き残れないかもしれないな、中盤くらいで爆発して退場しちゃうかもしれないなってずっと思っていたんです。それが最後まで生き残って、しかも或人に救われて生き残る。そんなラストになるなんて予想もしていませんでした。滅というキャラクターが自分の役のなかで一番大好きなので、滅が生き残っていい道に進むという台本を読んだときはうれしかったですね。

実は、放送が始まるまでは、敵なので下手したら嫌われるんじゃないかと思っていたんです。でもそんなことはなく、「滅カッコいい」という声や、滅の心情を理解してくれる声が多くて。セリフがあまりなくても、心情の苦しさを表情で表現したお芝居を視聴者の方がくみ取ってくれたということが、演者としてうれしかったんです。

――すごくいい役ですよね。

そうですね(笑)。自分で言うのも変なんですけれど、滅という役を大事にしてきたので、きっと現場の皆さんがそれを見て察してくれていたのかなって。応援してくれる視聴者の方のおかげですし、滅亡迅雷.netのメンバーにもすごく救われました。現場では、スタッフさん、キャストの力があって応援していただけるキャラクターになったと思っています。そして自分の中ではやはり、仮面ライダー滅を演じるスーツアクターの高岩成二さんの存在が本当に大きいです。

――滅は口数は多くないものの、立ち姿で語る印象がありました。そうしたことは意識されていましたか?

滅が自分の心情を口に出すことは本当に終盤までなかったんですよ。台本でも「人類は滅亡せよ」や「アークの意志のままに」というセリフがほとんど。でも、自分としてもできるだけ滅の印象を残したいので、立ち姿で語るしかなかったんです。最初のうちは、目線や指先、背筋など、そういう細かいところで表現することを意識していました。恐れ多いですけれど、高岩さんの動きで勉強させていただくことが多かったです。

――高岩さんのアドバイスで、特に印象に残っているものはありますか。

変身シーンが話題に上がった時に、「もっと滅らしいアクションにしたいんです」と相談したことがありました。滅の変身はシンプルなので、「これが滅だ!」というものがほしかったんです。それで生まれたのが、滅がプログライズキ―をフォースライザーにセットしたあとにする、中指で弾くような動作でした。高岩さんにお聞きするといろんなアイデアが出てくるなって。第44話終盤の変身で、刀を抜くところもそうですね。アドバイスもそうですけれど、高岩さんのお芝居は見て学ぶことが多くて、勉強になるなと思いながら見ていました。パートナーをやらせていただいて本当によかったなと思います。

――映画では新衣裳での登場ですね。

どちらの衣裳も大好きなんですけど、旧衣裳では、いまだに名称の決まっていない、あのバンダナ?を基準にして目線を作っていたんです。ちょうどいい位置だったので。でも新衣裳になったら急に視界が開けて、最初のうちは戸惑いと落ち着かなさがありました。アクションの面では新衣裳のほうが動きやすくて、そこはよかったですね。