テクノロジーの力で「笑って長生き」を実現する。このビジョンを掲げ、圧倒的な低価格で家族信託を組成し、長期的な安心を提供するサービス『ファミトラ』を展開するファミトラ(旧社名:ボッサテクノロジー)の三橋克仁氏。

認知症による預金口座などの資産凍結は、他人事ではありません。そんな社会課題を解決するために生まれたファミトラは、今後、家族信託のインフラになっていくでしょう。本稿では、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、三橋氏と対談を行い、その歩みについてうかがいました。

  • 家族信託をもっと身近に! 認知症による資産凍結をファミトラが防ぐ【前編】

院生時代に起業、そしてイグジット

井上一生氏(以下、井上)――本日はありがとうございます。三橋さんは、世の中の課題をテクノロジーの力で解決すべく、社会課題に注目して連続起業されていますよね。学ぶところがたくさんあって、私も刺激を受けています。学生時代から起業されているのですよね?

三橋克仁氏(以下、三橋)――はい。院生時代にmanaboという個別指導システムで起業しました。ベネッセさんなどから出資を受け、6年半ほど経営し、15万人超の生徒、1万人以上の講師が利用する規模に成長。2018年5月に運営会社のマナボの全株式を駿台グループへ売却しました。

井上――もともと起業家になろうと思っていたのですか?

三橋――実はもともと宇宙飛行士になろうと思っていたのですが、ライブドアショックやリーマンショックを経験して、株式が与える社会へのインパクトに興味が湧いて。それで株式投資のサークルに入りました。そのサークルで自分でも起業したくなった、という感じですね。

manaboを始めた当時は、まだEdTech(教育 Education × テクノロジー Technology を掛け合わせた造語)という言葉はありませんでしたが、予備校の講師をしていて、電話だけでは教えられないのでシステムをつくったというのが起業のきっかけです。

テクノロジーの力を活かしてレバレッジをかけるのは当たり前のことだと感じていたので、個別指導システムを開発しました。今では東大で起業する起業家は増えてきましたが、当時はまだ少なかったですね。卒業して大手企業に就職する選択肢もありましたが、退路を断って起業しました。

井上――今で言うなら、教育・個別指導のDX(デジタルトランスフォーメーション)ですね。スタンフォード大学の方が、「シリコンバレーではDXは当たり前なので、DXという言葉はない」と仰っていましたが、三橋さんの中ではテクノロジーを活かすことは自然なことなのですね。退路を断って院生の頃に起業するというのも、なかなかできる決断ではないと思います。

  • (左)ファミトラ代表・三橋克仁氏、(右)SAKURA United Solution 代表・井上一生氏

理想の理想を考え再起業

井上――manaboを売却した後は、なにをされていたのですか?

三橋――1年くらいニートをしていました。かっこつけて言うと、サバティカル期間です(笑) EdTechとは別の領域で起業したかったというのもありましたが、それ以前に「何のために生きるか」を考えていたのが1年間のニート期間でした。

前の会社を売却する前に考えていたことに、ブレインコンピュータインターフェースがあります。ブレインコンピュータインターフェースというのは、考えただけでコンピュータを動かす技術のことです。

2015年に話題になった『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(著 ユヴァル・ノア・ハラリ)という本の中で、人類の命題について書かれているのですが、不老不死や人体拡張が今後の人類のテーマになるとされています。

脳とコンピュータをつなぐ技術の開発や進歩は、自分が生きているうちに黎明期が来るだろうと考えました。そこで中国の深センなどに視察に行きました。オンオフや前進後退というシンプルな操作はできるようになっていたのですが、私はもっとテレパシーみたいな操作がしたかったんです。ただ、まだ技術的に時間がかかるだろうというのが当時の印象で。

それで、じゃあどんなところに着目すれば、ブレインコンピュータインターフェースの黎明期が来たときに横展開できるかを考えました。出した結論が、シニア向けのテクノロジーであるAgetech(エイジテック)です。

井上――なるほど、とてもロジカルですね。事業を売却した後、人生のテーマを探して、ゼロベースで理想の理想を考えたと。生き方として極めて大事なことだと思います。シニア層の課題解決に注目したとき、なぜ「家族信託(※)」(民事信託)のサービスを展開しようと思ったのでしょうか?

※家族信託は、一般社団法人家族信託普及協会の商標です。三橋氏は一般社団法人家族信託普及協会のコーディネーター・協会会員資格を取得しています。

三橋――そうですね。シニア層の課題と言っても幅広いですから、10事業くらい検討しました。例えば、オレオレ詐欺撲滅や介護士版ウーバーなどの事業です。いろいろと検討した中で、認知症の問題に注目しました。

認知症は、ブレインコンピュータインターフェースとも関連する領域です。大脳辺縁系の一部である海馬(記憶や空間学習能力に関わる脳の器官)の委縮度を計算して脳年齢を推定するシステムを開発し、アルツハイマー型認知症になる確率を割り出すサービスを始めようと考えたのですが、すでに競合がいました。それで、認知症の課題から深掘りしていき、家族信託に着目しました。

井上――なるほど、それで家族信託(民事信託)に辿り着いたわけですね。家族信託と比較される制度に成年後見制度がありますが、成年後見制度の場合、物件に雨漏りがあっても直せないなど問題も多いですよね。

一方、家族信託(民事信託)の場合、お金や時間、手間がかかるのが問題です。三橋さんが展開しているファミトラは、家族信託(民事信託)をよりカジュアルにしていく可能性を秘めていますし、必要とされるサービスだと思いました。いわゆる家族信託(民事信託)のDXですよね。次回、ファミトラについて詳しく教えてください。

(次回に続く……)